転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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228.泣き虫です

一つは気配もなくあたしにタックル? してきて、あたしを階段から落とした事。

そしてもう一つは見慣れた金髪と青目だった事。

 

「わぁ! 本当に母様じゃん!! あんま変わんなーい!」

「…シャナ姉様、シンク兄様が怒りでプルプルしてる」

 

あたしに馬乗りになり、ニコニコ笑っている美人さんと、そんな彼女を呆れた目で見ているヘンリ。

ヘンリの背後には、眉を寄せ握り拳を作って肩を震わせているシンク。

カナデ君の姿は見えないが、多分ヘンリと同じ表情をしている事だろう。

 

「シャナ!! お前なぁっ?!」

「何よぅ。グンジョウもシンクも、母様が来てるって何で教えてくんなかったかなぁ。あたしだって、母様に会いたいに決まってるのに」

 

ぷぅ、と頬を膨らませ、シャナと呼ばれた女性はシンクに抗議の目を向ける。

だけど、あたしはそれに構っている余裕がなかった。

 

「ナズナ…」

 

ナズナと同じ、金の髪。

目の色。

シンクがシャナに気安い事から、彼女はあたしの娘なのだろうか。

 

ブワッと、涙腺が崩壊した。

ここまで気丈に振る舞っては来たが、やはり一人という寂しさと、知ってはいるけど知らない土地に放り出されたストレス、それらがない混ぜになってしまい涙が溢れる。

 

ナズナ、ナズナ…っ!

今、貴方に会いたい…っ!!

帰りたいよぉ…っ!!

 

顔を手で覆い、泣き始めてしまったあたしに周りは慌てた。

シンクだけはこの事態になる事が分かっていたようで、ため息をついている。

 

「シャナ、退け。この母様はまだ17だ。精神的にも脆い。ユタカ悪い、着いてきてくれ。ヘンリ、ケーネとカヅキおばさんに連絡しておけ」

「ご、ごめん、シンク。泣かないで母様…」

 

シャナが心配そうにあたしを気遣ってくれるが、あたしはそれに返答出来ない。

寂しいと、心が叫んでいたから。

 

「ちょっと失礼しますよ」

 

シンクはそう言い、あたしをお姫様抱っこして何処かに運び出した。

持ち上げた瞬間、うわ軽っ、と小声で呟いたのが聞こえたが。

 

◆◆◆

 

「母様、落ち着いた?」

「…ごめんなさい。取り乱して…」

 

あたしに宛てがわれた客室のベッドに降ろしてもらい、泣き止むまでシンクとユタカちゃんは傍にいてくれた。

ユタカちゃんが差し出してくれた紅茶を受け取って、あたしは一息つく。

 

「いや、取り乱すなって方が無理でしょうよ。うちの姉がすんませんね。ヘンリに、シャナへ口止めしとくの忘れてた俺の落ち度です」

 

シンクはあたしの目の前に椅子を持ってきて座り、ユタカちゃんはあたしの隣に座って頭を撫でてくれていた。

小さい子扱い…いや、実際あたしは彼らよりかなり下、孫と言っても過言ではない年なのだから、当たり前なんだけど。

 

「…ごめんなさい。あの子、あたしの娘なのよね? 悪い事したわ…」

「いやいや、母様が気に病む必要ないって。シャナが俺に確認取らずに、急に来たのが悪いんだってば。シャナー…お前さぁ…」

 

シンクは扉に向かって彼女の名前を呼ぶ。

少し扉が開いて、申し訳なさそうな表情をしたシャナが顔を出した。

 

「あの、母様…」

「ごめんね、シャナ。えーと…一応、過去の母です、って言えば良いのかしら…?」

 

少し疑問を覚えてしまい、自分で言ってて首を傾げる。

そんなあたしを見て、シャナは笑った。

 

「母様…やっぱり、あたし達の母親だね。ね、シンク」

「…いや、まぁ…昔の母様って天然ボケ酷かったのか…」

 

少し聞き捨てならない言葉が聞こえ、あたしはムスッとなり、シンクを軽く睨む。

 

「天然ボケって…悪かったわね」

「そこも可愛らしいって父様なら言いますよ、母様」

 

ニヘラと笑うシンクに、ナズナの面影を見出してしまい、あたしは苦笑いをした。

 

「…シンク、ナズナとやっぱり似てる。今もモテるんじゃない?」

「そりゃ息子ですもん。似てないの髪の色だけじゃないですかね。あと、それについてはノーコメントで」

 

自分の髪を一房摘んで、シンクは苦笑する。

その顔もナズナにそっくりで、あたしはまた涙ぐむ。

 

「ナッちゃん、泣かないで? 多分、ケーネとママが何とかしてくれるって」

「そうだよ、母様。あ」

 

シャナが何かに気付いたのか、背後を振り返った。

そのまま、大きく扉を開ける。

 

「そうそう。私様が来たぞ、ナツキ」

 

扉の先、懐かしい声が聞こえた。

あたしはその方向を見、思わず彼女に駆け寄って抱きつく。

 

「カヅキ…カヅキぃぃぃ…っ!!」

「よしよし。寂しかったな、ナツキ。私の平たい胸で良ければ、思う存分泣くと良い」

 

車椅子に乗って現れたカヅキは、抱きついて泣き始めたあたしの背を撫でてくれた。

あたしの背後で、シンクとユタカちゃんがホッとしているのを感じる。

 

自分達より、カヅキの方があたしの扱いがわかっているから、とか思っていそうだな。

その通りなんだけど。

 

「ナツキ、泣き止んだら教えて欲しいんだが…お前、何処の時空から来た?」

 

あたしは袖で目を擦りながらカヅキから離れ、彼女の質問に答える。

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