転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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232.『あたし』に会いました

それなぁに、なんて聞いた日には、ヘンリにそこへ連れていかれそうだし。

 

食堂に連れて行かれ、席に座ったあたしの前に食事が出される。

それを鑑定で見て、毒が入っていない事を確認した。

娘である彼女には悪いが、ナズナの専属護衛をやっている時からの癖なので、勘弁願いたい。

 

実際、何回かナズナとの食事に毒が混入されていた時があったのだ。

警戒するのも当然とは言えるだろう。

 

まぁ、当たり前で毒など入っておらず、あたしは食事を始める。

 

「若い時から、お母様の所作はお綺麗だったのですね。流石ですわ、お母様」

「…ありがとうございます? これで何故褒められるのか、あたしにはさっぱりわからないのですが…」

 

アンナに褒められて、あたしは首を傾げた。

こんなの、普通に出来なければどうするというのか。

その答えすらも、アンナには満足のいくものだったようで、彼女はうんうん頷きヘンリを見る。

 

「貴女も見習いなさい、ヘンリエッタ」

「なんで矛先がこちらに向くのかな、アンナ姉様。別にぼくの食事、汚いってわけじゃないだろう? 見苦しくないよう、母様やカヅキおばさんが教えてくれたんだから」

 

確かにヘンリの食事の所作は綺麗だ。

ぱっと見、普通に食事しているだけなのだが。

それがアンナには気に食わないのだろう。

あたしレベルになれ、までは言わないもののもっと洗練されるべき、なんて思っていそうだなと考えてしまう。

多分、その考えは当たっているのだろうけど。

 

「ヘンリエッタ…!」

「まぁまぁ、アンナ。食事時にそう怒るものじゃないと思うよ。それに、お義母さんが来てるんだから落ち着こう? ね?」

 

茶髪の男性がアンナを宥めている。

彼がスイカなのだろう。

それにあの髪色はユーリさんの色だから、彼は二人の息子なんだろうと思い至る。

 

スイカさんに宥められ、アンナはおとなしくなった。

彼女を御せるの、スイカさんだけなんだろうな。

 

「…そうね。見苦しい所をお見せしました、お母様」

「あぁ、いえ。別に気にしてはいないのですが…その。何故皆様方、あたしを母親だと言ってくれるのでしょうか? もしかしたら、あなた方の母親の異次元同位体とはお考えになりませんか?」

 

あたしの問いに、皆がキョトンとする。

それに思い至らないはずがないのに、なぜと疑問を口にしたあたしに、シンクが言う。

 

「いや、母様は母様ですし。それに、そんな覇気纏ってるのに母様じゃないなんて言えます?」

「異次元同位体だとしても、私達のお母様です。それは、お義母様でさえ同じ事を言うでしょう。気になさらなくてよろしい事かと」

 

…なんか励まされた気がする。

あたしの子供、本当に優しい子ばかりだ。

アンナは性格キツいけど。

 

これ、あれだ。

ターニャそっくりなんだ、アンナ。

言葉足らないやつ。

そのせいで周りから誤解されちゃうんだ。

 

「ありがとうございます。そう言っていただけると、気が楽になる気がします」

「そういえばアンナ姉様。子供達は? 仕事?」

 

ヘンリがスープを飲みながら、彼女にそう尋ねる。

その所作にアンナの眉が吊り上がるが、一つため息をつき、えぇそうよ、と返した。

 

「サクラとアヤメは、監査局で昼食を摂ると。リンドウは大学院でやる事があるからと、先程連絡がありました。まったく…」

「そこはアンナに似たねぇ」

 

ケラケラ笑うスイカさんをアンナは睨みつける。

夫婦喧嘩になりそうな雰囲気を感じたか、夫婦間の事なのであたしが口を出すべきではないと思い、黙って食事する事にした。

その瞬間。

 

「アンナ。喧嘩をするなら、食事の後になさい。

あたし(ナツキ)』が困るのだから。それは貴女も望む事ではないでしょう?」

 

あたしの背後からかかった声に、一同固まる。

かく言うあたしも、その声と存在に皆と同様固まった。

 

「…あら、貴女は別にカヅキより気にしないとは思っていたのだけれど…まぁ、若いのだし仕方ないのかしらね」

「…あたしより魔力が強い人が背後に立ったら…それもいきなり現れたら、驚くと思いません? そんなサプライズ好きになったの、『あたし(シャルロット)』」

 

椅子から立ち上がり、背後を睨むように見る。

あたしと同じ蒼髪、紫目。

歳はあたしよりだいぶ上だけど、それでも幼さの残る顔。

 

「こんにちは、『あたし(ナツキ)』」

「こんにちは…なんで貴女がここにいるの」

 

ご挨拶ね、と彼女は肩を竦めたがそれもヘンリが抱きつくまでだった。

 

「母様! 転移してきちゃダメじゃないか! 体が…!」

「心配しなくてもいいわよ、あたしの可愛いヘンリエッタ。ここまでレヴィに送ってもらったから。帰りも彼女に連れて行ってもらうから、安心してね。それと『あたし(ナツキ)』。はい、これ」

 

彼女が差し出し手のひらに、雛桔梗が乗っている。

あたしはそれを恐る恐る手に取った。

 

「いやね、取って食べたりはしないわよ」

「…悪かったわね、わざわざ届けに来てくれて。感謝するわ、『あたし(シャルロット)』」

 

あたしの五十年後の姿なのに、威圧感というか…何を考えているか分からない。

これが王妃になった後のあたしなのか。

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