転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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233.娘のリーゼです

上に立つ者の気迫というものを感じる。

 

「別に。雛桔梗がいなければ帰れないでしょう? あぁ、ナズナに会ったらよろしく言っておいてちょうだい。あいつ、長期出張に行って全く帰ってこないのよ。この間の結婚記念日もすっぽかして。せめて、何か送ってくればいいのに…!」

 

目の前の『あたし(シャルロット)』は、少し眉を寄せ怒りからか肩を震わせていた。

それに違和感を覚える。

 

「ナズナは…」

「母様、しー」

 

あたし(シャルロット)』に抱きついているヘンリが、自分の口元に人差し指を当て、そう言ってきた。

黙ってろ、という事なのだろうが、『あたし(シャルロット)』なのに?

この違和感、どうして目の前の『あたし(シャルロット)』は気付かないの?

 

後で雛桔梗に聞いてみようかしら。

多分、記録も同期してあるはずだから。

どうせカヅキに記憶封鎖されるのだから、見ても問題ないだろう。

 

「ヘンリ、どうしたの?」

「何でもないよ、母様。頭撫でて」

 

仕方ない子ね、と言いつつ『あたし(シャルロット)』はヘンリの頭を撫でる。

そんな時、アンナが咳払いをした。

 

「お母様、お食事は摂られたので?」

「ヒナが作ってくれた昼食を頂いてから来たわ。ごめんなさいね、アンナ。気を遣わせてしまったわ」

 

あたし(シャルロット)』はクスクス笑いながら、ヘンリを自分から離している。

どうやら帰ろうとしているらしい。

威圧が凄いので、出来れば早く帰っていただきたいのだが。

 

「そんなに邪険にしないでちょうだい、『あたし(ナツキ)』」

「…読心術が使えるようで何より。あまり使いすぎると嫌われるわよ、『あたし(シャルロット)』」

 

そんなに使っていないわ、と『あたし(シャルロット)』は言い、片手を横へ上げる。

その手を取るように、レヴィが現れた。

 

「我が主、帰るぞ。すまぬな、もう一人の我が主。こちらの我が主は日に日に弱っていく一方で…」

「レヴィ、余計な事言わないの。だから、貴女達と暮らしているんじゃない。まったく…ナズナも、あたしが死ぬ時には戻って来てくれると良いのだけどね」

 

フッと寂しそうに笑った『あたし(シャルロット)』は、レヴィに連れられ転移していく。

後に残されたあたし達は、少しの気まずさを覚える。

 

「あの、彼女のあの状態って…」

「お父様が亡くなってからです。お父様の国葬を終えてから、気を張り詰めていたお母様は魔力暴走を起こし…治った後はもうあのように」

 

アンナが少し申し訳なさそうにあたしを見た。

彼女にとって、『あたし(シャルロット)』が来たのは予想外だったのだろう。

 

…将来あたしも、あぁなるんだろうな。

彼女のようにはならない、なんて言えない。

ナズナが亡くなった事を忘れた…それは裏返せば、彼を深く愛していたという事と同じだから。

 

ナズナ、何してるんだろう…。

 

沈黙が場を支配する食卓で、あたしは食事を終えた。

 

◆◆◆

 

次にやって来たのは、テスタロッサの屋敷だった。

一体何故、とあたしはシンクを見る。

 

「あー…妹…リーゼが嫁いだのがここでして…」

 

どういう事だ?

あたしの娘がテスタロッサに嫁いでる?

いや、血の繋がりがないから別に嫁いでても問題はないのだけれど。

 

少し考えて、もしかしてとシンクに尋ねてみた。

 

「ねぇ、シンク…もしかしてなんだけど…あたしの娘、ターニャの孫かひ孫に嫁いだのかしら?」

「いや、息子です」

 

予想が外れ、あたしは少し眉を寄せる。

 

…それは、また…遅くに出来たのね、ターニャ。

それかあたしが早く産んだ?

どっちだろう?

 

「シンクお兄様、お久しぶりです。連絡を頂いていたのですが、仕事が忙しくて…」

「いや、こっちがデバック頼んでたんだ。逆にすまねぇな、リーゼ」

 

蒼色の髪にスカイブルーの瞳の美女が、シンクに対してにこやかに応対している。

結構可愛い系なのね、と彼女を見ていると、リーゼと呼ばれたその人はあたしに微笑みかけた。

 

「こんにちは、お母様。リーゼ・クレマチス・テスタロッサです」

「こんにちは、リーゼ。過去の母親です…で良いのよね、多分?」

 

自分をなんと表現したらいいのか分からず、やはり首を傾げてしまう。

 

ナズナがここにいればなぁ…。

適当な表現を思いついてくれるかもしれないのに。

 

なんて、無い物ねだりしても仕方ない。

そんなあたしの様子を見て、リーゼは苦笑する。

 

「この頃から、お母様方の仲は良かったのですね」

「え? えぇ、まぁ…じゃなかったら、彼と結婚なんて考えなくない? あたしまだ17よ?」

 

あたしの返答に、彼女はクスクス笑い出した。

一体なんだと見ていたら、シンクが耳打ちしてくる。

 

「リーゼの場合、相手…母様の義弟のルージェから猛アタックされてたんですよ。それをのらりくらりと躱し、婚約していたにも関わらず20歳まで心変わりしなかったルージェと、その時ようやく籍入れたんですわ、うちの妹は」

「あら、いやですわお兄様。人の恋路をお母様にお話しするなんて」

 

まだ笑っている彼女はシンクを嗜めていたが、別段嫌がってはいなさそうだった。

仲は良好なのだろう。

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