「それに、人の心など移ろいやすいものですもの。私、彼が死ぬまで本当に私を一途に愛してくれていた、なんて言うつもりはありませんよ?」
…仲、良好なんだよね?
なんでそんなに疑り深いの、この子?
というか、闇深くない?
え、あたし教育ちゃんとしてた?
え?
「リーゼ、それ聞いたらルージェ泣くぞ…」
「いやですね、お兄様。そんな感情を露わに…する人でした。お義母様からそんなスキルも教えていただいていたようです。今から帰ると念話が来ました。まったく…盗み聞きなんて趣味が悪いですよ、ルージェ」
呆れた目を、あたしの背後にリーゼは向けた。
あたしに向けてではなかったので、あたしは恐る恐る後ろを振り返る。
そこにはターニャと同じ銀髪の男性が、眉を下げて情けない顔をして立っていた。
「リーゼぇぇ…」
「はいはい、お母様の前なので泣きそうにならないでくださいルージェ…抱き付かないでください、暑苦しいです。私がこうなのは、貴方もご存知のはずでは?」
あたし達の横を通り過ぎ、ルージェはリーゼに抱きついていく。
そんな彼の背中を軽く叩いて、リーゼは苦笑していた。
「リーゼ…少しルージェに優しくしたら…?」
「ダメですよ、お母様。彼を調子に乗らせたらとんでもない事をしでかすので。大体、幼い頃からヤンチャばかりで…ルージェ、覚えてます? 貴方、虫籠持って私を追いかけ回しましたよね? やめてって言っても聞いてくれなくて…最終的に母親であるお祖母様と、お母様からお説教されてましたよね?」
うぐ、と呻き声をあげ、ルージェはそのまま
そして土下座の形になり、リーゼに謝り出した。
「本当にその節は申し訳ございませんでした! それでも俺の奥さんになってくれたリーゼには感謝しかありません!! 本当にありがとうリーゼ!! 俺マジでお前の事愛してるから!!」
「口ではなんとでも言えるんですよ、ルージェ? 跡取りの為に、何人か子供作りましたけど…あれの恨み、まだ忘れてませんからね?」
…ここはあたしの遺伝だな…。
ルージェ、貴方それ以外にもリーゼに何かやったんでしょ…。
あたしはチラリと、シンクを見る。
彼は見られている事に気がつき、肩を竦めた。
ユタカちゃんもその隣で、苦笑いをしているし。
本当に何やったんだ、ルージェ。
「ヘンリは何やらかしたか知ってる?」
「んー…ぼくも又聞きだから、そんな詳しく知ってるわけじゃないけど…悪ガキだったルージェ義兄様が、リーゼ姉様に嫌がらせしまくって、嫌われてるのがわかってるくせにリーゼ姉様に猛アタックして、仕方なしに折れた姉様に絶対服従してるって事くらい? 夫婦生活で何かやったら即離婚、って離婚届チラつかせてるとか…嫌がらせせず、ちゃんとリーゼ姉様と仲良くしてたらこうはならなかったのに、ガキだったねルージェ義兄様」
その通りです、とルージェから声が上がる。
この姿ターニャが見たら、嘆かわしいとか言ってルージェを蹴りそうだな、なんて思ってしまった。
「まぁ、私も好きな事させてもらえてるので…ATM、頑張ってくださいねルージェ?」
「はい、頑張ります!!」
いや、それはダメでしょ流石に。
唖然としてリーゼを見ていたあたしだったが、彼女はニコリと微笑む。
「お母様。彼、私が出産するって時に、痛みで苦しんでいた私の横で爆睡していたんですよ? 立ち会いするって言ったにも関わらず。しかも初子で。許せます?」
「うん、許せないわね。反省しなさいルージェ」
はい、とルージェの声に涙が混じり始めた。
本当に反省しているようだが聞いた話、出産の時の恨みは一生物らしい。
リーゼがそんな態度になるのも頷けるわ。
むしろ離婚した方が良かったんじゃないだろうか。
王妃になった後のあたしなら、子供連れて帰ってきなさいとか言いそうだし。
「リーゼぇ…」
「私が子供を連れて帰らなかったのは、ひとえにお祖母様…貴方のお母様が、出産の時に傍にいて励ましてくれたからです。じゃなかったら、とっくの昔に別居してます」
完璧に尻に敷かれている未来の義弟を見て、情けないやら何とも言えない気持ちになってしまう。
これ、天国のターニャも嘆いているのではないだろうか。
「じゃあ、母様。次行きましょうか。あんまり夫婦喧嘩見るのも、ねぇ…?」
「お目汚し失礼致しました。今度はこれがいない時間帯に遊びに来てくださいね、お母様」
これって、ってルージェが悲嘆に暮れ始める。
リーゼ…夫は大切にしよう?
本当に嫌なら子供何人も作らないでしょ、多分貴女の性格なら。
仕返しは程々にね、と彼女に告げて、あたし達は転位門を潜った。
◆◆◆
次に来たのは、狭くもなく広くもない、お屋敷の中。
あたしはシンクの先導で、ある一室の中に入る。
「シャナ、連れてきたぞー」
「お疲れシンク。母様、さっきぶり」
どうやらシャナの家だったようだ。
彼女の隣には、黒髪の男性が立っている。
「お久しぶり…ではないのか…?」
「違うって説明したじゃん、ツルギ君。こっちの母様はまだ17歳だよ。それとも、老けて見えるの?」
なんと失礼な質問してるんだこの子は。
番外編でリーゼとルージェの話書きたいなぁ
相方から妙な設定つけるなって
怒られちゃったけど
こいつらが勝手に喋るから
私には御せないのですわ