問われた男性も若干慌て出しているじゃないか。
そういうつもりじゃ、と彼はあたしに対して弁明している。
「シャナ、ツルギいじめんなよ」
「え? いじめてるつもり全くなかったんだけど…? ごめんね、ツルギ君…」
しょんぼりしてしまったシャナは、ツルギ君に謝った。
この子あれだ、あんま考えなく喋るんだ。
シンクは少し申し訳なさそうに、彼女を紹介してくれる。
「シャナは母様の第一子です。グンジョウと俺の姉ですよ」
「…シャナ、なんかごめんね」
なんで謝るの、なんてシャナは驚くが、多分貴女のそれナズナの遺伝だと思う。
あと、あんまり考えていないのはあたしの遺伝かしら。
「あとこいつはツルギ。シャナの夫で、日本で死んでこっちに転生してきた転生者ですよ」
「御巫剣です。お会い出来て光栄です…えっと…義母上?」
若い時のあたしだし、シャナをまだ産んでないからそう言っていいのか、ツルギ君も困惑しているようだ。
あたしも絶対同じ反応するから、気にはしないけれど。
「こんにちは、ツルギ君。シャナが迷惑かけてないかしら?」
「……ノーコメントで…」
かけてないって言ってよ、とシャナはツルギ君を掴んで揺さぶり始める。
さっきのリーゼのとこより、かなり夫婦仲は良いようだ。
というか今更だけど、なんか夫婦仲の参観になっていないかしらこれ。
「シャナ、ツルギが困ってるぞ」
「だって! あたし迷惑かけてるつもり全くないんだよ?! ツールーギーくーんー!!」
ツルギ君の頭がガクンガクンと揺れている。
というか膂力凄いな、この子。
ツルギ君、見るからにガタイ良いのに。
「わかったから、揺さぶらないでくれシャナ」
「わかってないー!!」
これも夫婦喧嘩に入るのかしら。
なら、あたししょっちゅうナズナとこれやってる事になるんだけど…いや、あれはあいつが悪い。
うーん、と悩み始めたあたしを見かねたのか、シンクが仲裁に入った。
「シャナ、いい加減にしろ。母様も困ってるだろうが」
「うぐ…」
シンクにそう言われ、シャナはツルギ君を揺さぶるのを止める。
別にあたしは困っていないんだけど。
あぁ言わないと、ずっとツルギ君を揺さぶったままだからなんだろうが、あたしを引き合いに出さないでくれないかしら。
チラリ、とあたしはシンクを見る。
彼もそれはわかっているようで、ごめん、とジェスチャーで謝られた。
「母さん、またおばあちゃん困らせてるの?」
「またかよ、いい加減にしろよ。父さんもちゃんと母さん叱った方がいいぞ」
後ろの扉からそんな声がかかり、あたしは背後を振り向く。
黒髪黒目の男女が、シャナを呆れた目で見ていた。
「…シンク?」
「シャナの子供の、カタナとサヤです。お前らこの時間、まだ騎士団にいるんじゃないのか? なんで家にいる?」
どちら様、と聞こうとしてシンクの名前を呼ぶと、彼は二人を紹介してくれる。
どうやら二人とも、騎士団に所属しているようだ。
「双子って本当に嫌だよね、サヤ」
「本当それ。なんで同じ日に怪我して、休職しなくちゃいけないのか…父さん、ニート三人養わせてごめんね」
誰がニートか、とシャナが怒るが、仕事してるのかしらこの子。
あたしはまたチラリとシンクを見る。
「ツルギ、シャナ仕事してんのか?」
「…なんで、させる必要が? 仕事するとしても、陛下の姉として公務に行くくらいで…この屋敷も、陛下の温情で頂いて…使用人も…」
グンジョウ、姉に甘すぎでは?
それ、姉にお小遣い渡してるんじゃ?
ユエちゃんそれでいいのか?
「まぁ、公務行った時にグンちゃんから給料っていう名のお小遣いもらってるし…忙しいのに面倒な顔合わせとかは、ユエと一緒に行ってるらしいから…」
これ覚えていられないのちょっとヤバくない?
未来のあたしの教育方針どうなってるのよ。
思わず頭を抱えそうになったあたしの両肩に、サヤちゃんとカタナ君が手を置いてくる。
「グンジョウおじさんが、母さんに甘いのはいつもの事だから」
「シスコンだからね、おじさん。母さんもブラコンだし。姉弟仲が良いんだよ。薄い本ならもがが…」
それ以上言わせないように、シンクがカタナ君の口を塞いだ。
あたしは彼の言葉に首を傾げる。
薄い本って何かしら?
帰ったらカヅキに…そうだ、記憶封鎖されるから覚えていられないんだ。
なら、今聞いてしまおう。
「シンク、薄い本って何?」
「母様の目に触れさせたら、俺がカヅキおばさんに殺される書物の事です」
そんなに?
禁書なのかしら、薄い本。
シャナやツルギ君もなんだろう、と首を傾げているあたり、やはり禁書の類なのだろう。
未来のあたしなら閲覧可能かしら?
「カタナ、余計な事おばあちゃんに言わない。立花老にぶっ飛ばされるよ? もしくはグンジョウおじさん」
「グンジョウおじさん過労死寸前までいって、ユエおばさんとケーネ先生からしこたま怒られたって、この間母さん言ってたじゃん。ぶっ飛ばす気力なんてないって」
シャナ、口軽すぎ。
身内の恥を言うんじゃありません…。