シャナの方を見ると、てへ、と年相応に見えない顔で笑っていた。
笑い事ではないと思うのだけれど…。
少しの歓談の後、あたし達はシャナ達のお家を辞したのだった。
◆◆◆
「明日はサンテブルク教会に行きましょうか、母様」
シンクのお家に帰ってきて早々、彼はそう言う。
別に構わないけど、一体どうしたというのか。
何故と首を傾げるあたしに、シンクは苦笑いした。
「俺、星読みの能力あるんですよ。まぁ、母様の劣化版ではありますが。ヘンリ、明日10時に教会集合な」
「えー…待ち合わせするの? ぼくこのまま母様とお泊まりしたかったんだけどなぁ」
お前を賄えるほどの食料はうちにはない、とシンクは断言する。
まぁベルゼビュートの転生体だから、ヘンリ自体大食いなんだろう。
それについてヘンリは反論出来ず、少しムッとした後あたしに抱きついてきた。
「じゃあ、また明日母様。多分明後日には帰れるだろうって、最高神が言ってるよ」
「…明日ぶん殴ってやるって伝えておいて」
了解、と言いつつヘンリはあたしから離れる。
最高神で思い出した事があったのだ。
あれはシンク達が来た時の事。
なんとはなしに、未来に行ってみたい、とあたしは言ったのだ。
言ってしまったのだ。
多分それが、今回の出来事に繋がっている気がする。
やっぱり最高神に聞かれてたんじゃない…!!
迂闊だった…っ!!
ナズナ、寂しがっていないかしら…。
というか、戻れるのってどのくらいの時期になるの?
もしかして、あたし留年の危機ない?
三学年の二月って自由登校だったかしら?
それも明日問い詰めなければならない、と思いつつ、ヘンリをその場で見送ったあたしは、宛てがわれた部屋に案内される。
「雛桔梗。こっちの雛桔梗に渡されたデータの中で、あたしが狂ったものはある?」
夕飯の時間までベッドに横たわりつつ、あたしは彼女に尋ねた。
あります、と返答は返ってきたが、その映像は見せられる事はなく。
見せて、とお願いしたが、無理ですと言われてしまった。
その映像はあたしにとってショッキングな物なのだろう。
雛桔梗がここまで拒否を示すとは珍しい。
「雛桔梗、見せて」
それでも、あたしは見なければならないと思った。
彼女があたしの身を案じているのはわかっていたが。
【音声だけでしたら…】
渋々と言った感じで雛桔梗は部分展開し、あたしの手にイヤホンを渡してくる。
それを両耳につけると、しばらくして音声が流れ始めた。
静寂からの爆発音。
そして、嘆き悲しむ『
『ナズナ…っ! ナズナぁ…っ!! なんで…?! どうしてあたしを置いて逝くの…っ?!
どうして…どうして…っ?!
なんでよ、ナズナぁっ!! 置いて逝かないで…連れて逝ってよ…っ!! 貴方と離れるなんて、あたしには耐えられない…っ!! ナズナ…っ!!』
シャルさん、とケーネ先生の声が聞こえたが、
『
音声はそこで途切れ、次に再生されたのは会った時の『
『ねぇ、ヒナ。ナズナは何処に行ったのかしら? 姿が見えないの』
『ナズナ様は長期出張に行ってらっしゃいますよ、我が主』
女の子の声が聞こえる。
ヒナ、と呼ばれあたしを我が主と呼んでいる事から、雛桔梗は将来何かしらで体を手に入れるのかもしれない。
『そう。いつ帰ってくるのかしら?』
『伝言を受け取ったケーネ様によると、出張先で結構面倒事が多いらしく、帰ってくるのは当分先になる、と。我が主には大変申し訳ないと仰っていたそうですよ』
先程の爆発音は、多分『
それをケーネ先生含め、周りが何かしらの方法でナズナが死んだ事を、『
あたしはイヤホンを耳から外し、ため息をついた。
「あたしは、歳を経る毎に弱くなっていったのね。体だけではなく、心も。あぁ…本当に無様だわ、シャルロット。それでよく王妃が務まったものね…」
自分で自分を嘲る。
これを忘れるなんて、自戒にもならないじゃないか。
更にため息をついていると、テレジアのメイドさんが夕飯だと呼びに来た。
食堂に行き、シンク達と他愛ない話をする。
それでも、あたしの頭の片隅には『
◆◆◆
次の日。
サンテブルク教会前に、ユタカちゃんと一緒に降りた。
カヅキが来た事で技術革新が起きているようで、あたしの時代とはまるっきり様変わりしている。
空には航空艦が飛び、地上は車やらが走り、リューネの王都の外観を残しつつビルなどが立ちまくっていた。
「…一体何年後にこんなのになるのかしら」
「うーん…私が12歳の時に世界がくっついたから…ナッちゃんが30過ぎくらいだと思うよ?」
待ってユタカちゃん。
世界がくっつく?
カヅキが家族連れてこっちに移住してきただけじゃないの?
え?