「隊支給の服ですけど…」
結構ラフで気に入っている。
伸縮性も抜群で、冬暖かく夏涼しいという魔生物の毛を使った代物だ。
色もシンプルな藍色で、普段着と戦闘訓練用で数着持っている。
「ノンノンノン! あんなだっさいの着てちゃ、シャルロットちゃんの魅力なんて半減、いいえ! マイナスに極振りよ! こんなに素材が良いのに、殿下は何をやっているのかしら! 貴女達、殿下にうんと請求してやるから、シャルロットちゃんに似合う可愛いお洋服、格好いいお洋服、何着でも見繕ってちょうだい!!」
「「「あいさー」」」
「いや、それくらい自分で支払いますし! というかあたしの意見も聞いてもらえませんかね?!」
言った所であたしの意見なんて全て却下され、着せ替え人形よろしく夕方まで付き合わされたのだった。
◆◆◆
「……………」
ナズナがいるであろう部屋に辿り着くなり、あたしはその場に座り込んでしまう。
両手には抱え切れないほどの紙袋を携えながら。
「シャル、遅かったね…って、何があったのそれ」
ユキヤ君と一緒に待っててくれたカナリアが、あたしの惨状を見て驚く。
「……………」
答える気力もなくて、あたしは項垂れたまま頭をゆっくり横に振った。
「ナイジェルの着せ替え人形になったな、シャル。ご苦労だった」
ナズナの言葉に、あたしは頭を縦に振った。
てか知ってたなら、忠告くらいして欲しかったのだが。
「めっちゃ疲労困憊してるね、シャル。何か不用意なこと言ったんじゃないの?」
「そう言えば、シャルロットの私服って隊服ばかりだった気がしますね」
紅茶を飲みながら、ユキヤ君が思い出したように呟く。
カナリアも、そういえば、と納得がいったようだった。
「それ言っちゃったんでしょ、シャル」
コクリ、とあたしは頷く。
それにカナリアは苦笑したようだった。
「これは使えないな。シャル、もう休め。掃除はカナリアがしたから、後で感謝しておけ」
「いえいえ。あんまり汚れてなかったんで、殿下の使い方が良かっただけだと思いますよ」
休めと言われても、ナズナが休まないのならば仕事をしなければならない。
しかし、体が思うように動かないのも事実。
さて、どうしようかと思案していると体がふわりと浮いた。
見ると、ナズナがあたしを横抱きで抱えていた。
所謂、お姫様抱っこというやつで。
「……? ……!!」
「シャル役得だねー。おやすみー」
カナリアがニコニコと手を振りながら言う。
あたしはそれへ頭を横に振ることで返事する。
あたしが休んだら、ナズナの身の安全はどうなるんだってば。
「心配なら、使い魔なりを置いておけ。それに、お前に負けず劣らずだが俺の実力はわかっているだろう。安心して休め」
「…ごめん。雛桔梗、レヴィ、あとお願い」
ナズナの言葉に、あたしは少し安堵した。
してはいけなかったのだろうけど。
【了承致しました。お休みなさいませ、我が主】
『…仕方なし』
二人の返事が聞こえあたしは意識を手放し、気付いたら朝だったのは流石に驚いた。
え、そんな事ある?
「起きたか、我が主」
青髪赤目が特徴的な美女、レヴィがあたしの顔を覗き込んで聞いてくる。
「ごめん、寝過ごした。今何時?」
「朝の刻六と言ったところか」
ならば今は、朝の6時なのだろう。
「ナズナは?」
「
それならば、昨日は何事もなかったという事か。
あたしは少し安堵する。
「ちなみに、あの
カナリア…ありがとう!!
気遣いがすごい嬉しい…!
あたしはそろりと、部屋の扉を開けた。
昨日は疲労困憊で部屋の内装を見る余裕もなかったが、結構な広さの2LDKっぽい。
玄関の横に扉が二つあって、多分どちらかがお風呂かトイレなのだろう。
そのまま進めば右側にキッチンがあり、リビングが見渡せるような作りになっている。
リビングにはダイニングテーブルが一つ。
椅子は二つ備え付けられている。
あたしの部屋の反対側に扉がある事から、あそこがナズナの寝室なのだろう。
「よし、汚名返上と行こうじゃないの」
あたしはキッチンに向かおうとして、自分の格好を見る。
可愛いネグリジェ姿だ。
オフショルダーのところを除けばだが。
「これ、誰が着せたの?」
「あの女子だが」
カナリアならまだセーフ。
レヴィがこれをあたしに着せられるとは思わないし、ナズナなんて以ての外だ。
お付き合いしてる男性なわけでもない、むしろ上司に着替えをさせたとならば、あたしは自死を選んだ事だろう。
「確かに、首周りがきついのは嫌だって言ったけどもさぁ…」
だからって、肩が開いてるのは如何なものか。
持たせられた紙袋の中からストールを発見し、羽織る。
今度こそと扉を開けたら、ちょうどナズナも起きてきたようで、バッタリ会ってしまった。
「…おはよう」
「おはよう、昨日はごめんなさい」