転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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242.グンジョウが泣きました

「どうしたの、ヘンリ?」

「…あのね、母様。ぼくベルゼビュートの転生体じゃない? 結構特殊みたいでね、波長が合う人合わない人がいるみたいなんだ。母様達にはぼくの表情、ちゃんと見えてるよね?」

 

眉を下げ、困ったようにあたし達を見るヘンリ。

あたしもナズナも、うん、と頷く。

 

「合う人には、ぼくの声も表情も分かるんだけど…合わない人には、機械音声で無表情に見えるらしいんだ。もっと酷いと、声すら聞こえない。この二人は酷いパターン。ぼくの声が届かない人達」

 

それには、あたしもナズナも驚いてしまう。

 

ヘンリにとって、とても辛い環境なのではないだろうか、と。

 

母親であるあたしは、多分何とかしようとはしたんだろう。

それこそカヅキに頼んででも。

でも、出来なかったんだろうな。

 

ヘンリには大変申し訳ないと思ってしまう。

 

「母様、気にしないで。こういう時に限って現れる人がいるからね」

 

現れる?

 

と、二人して首を傾げていると、廊下の向こうから茶髪の女の子…カヅキの娘のユーカちゃんが走ってくるのが見えた。

 

「ヘンリ呼んだかしら?!」

「呼んではないけど…ナイスタイミング。あの二人説得してよ。じゃなきゃ、父様が中に入れないから」

 

ヘンリからの依頼を嬉々として実行するユーカちゃんだったが、門番二人へ煽り散らすように扉を開けるように言うものだから、二人の眉は吊り上がるわヘンリが頭痛そうにするわで、あたしとナズナは顔を見合わせてしまう。

 

「彼女、何者だ?」

「カヅキの娘で、ユーカちゃんっていうらしいの。ヘンリの護衛役みたいなんだけど…ヘンリが大好きな子みたいね」

 

これで男の子だったら、ヘンリのお婿さんになれただろうになぁ、なんて考えしまい、ヘンリとユーカちゃんが同時にあたしを見た。

 

「母様、余計な事考えないで…っ!!」

「おばさまグッドアイデアですわ!! ヘンリ、私頑張るから!!」

 

頭を押さえ頭痛がし始めただろうヘンリが、恨めしげな目を向ける。

 

「母様…?」

「で、でも、ほら! ユーカちゃんは常人でしょうし、ヘンリより先にお亡くなりに……ごめん、ヘンリ」

 

まさか心を読まれるとは思ってなかったので、なんとはなしに考えてしまった事だったのだが…本当にごめんなさい、ヘンリ…。

 

中から入室の許可が降りたので、あたし達は執務室にお邪魔する。

ユーカちゃんはまた、ヘンリが何処かへ飛ばしてしまった。

今日も今日とて、ユエちゃんと一緒に仕事をしていたグンジョウだったが、ナズナの姿を見た瞬間顔を覆って俯く。

 

「…俺は何かしたんだろうか?」

「…さぁ?」

 

ユエちゃんが立ち上がり、グンジョウの肩に手を置く。

よく見たら、彼の肩が震えていた。

 

「アオ」

「……ごめん。父様が死んでから6年経ってはいるんだけど…父様に会えるの、僕が死んだ時か…父様が転生した時だけだと思っていたから…嬉しくて…ごめん、ユエ」

 

それを聞いて、ナズナは彼の傍に寄り頭を優しく撫でる。

驚いて顔を上げたグンジョウに、ナズナは微笑んだ。

 

「まだ俺は王の地位にもついてはいないが、その重圧は理解しているつもりだ。俺から託されたものを、ここまで維持出来ているお前はとても優秀なのだな。誇りに思うぞグンジョウ」

 

ナズナの言葉に、グンジョウが本格的に泣き始める。

眼鏡を外し、腕で涙を拭いながらうんうん頷いていた。

その様子にユエちゃんは、仕方ないなと微笑を浮かべていて、あたしは彼女の傍に寄り尋ねる。

 

「グンジョウって、泣き虫なの?」

「んー…感極まったらって感じ。いつもは凛々しく部下に指示を出しているよ。執務をしている時の横顔も格好いいし。でも、お義母様があぁなってしまって、尊敬するお義父様もいなくなってしまって…私も、アオを支えてはいるけど…そういう寂しさは埋めてあげられないのかもね」

 

寂しそうに、ユエちゃんは笑う。

あたしは思わず彼女の頭を撫でた。

少し驚いていたユエちゃんだったが、あたしの意図が理解出来たのか微笑む。

 

「大丈夫だよ、お義母様。私は、アオと一生涯添い遂げるって誓ってるから。申し訳ないって思わないでね」

「ユエちゃん…息子の事お願いね」

 

任せて、と彼女は言ってくれた。

 

◆◆◆

 

グンジョウの政務の邪魔をしては申し訳ないという事で、泣き止んだ彼に別れを告げ、あたし達は次の目的地、リーゼの家に行く事にする。

 

場所がテスタロッサで、ナズナはあたしがここに初めてきた時と同じ反応をした。

 

「……なんで未来の俺は、娘との結婚を許可したんだ?」

「それはリーゼ本人に聞いて頂戴」

 

応接室にいるという事なので、あたし達はヘンリの誘導で、部屋に入る。

そこにはニコニコ笑っているリーゼと、冷や汗を流しまくっているルージェが立っていた。

ソファーに座って待っていれば良かったのに、ルージェに合わせたのだろうか?

 

未来の話ではあるが、こいつが娘の婿かという顔をナズナがする。

なので、あたしは彼の脇を膝でつついた。

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