転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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247.日常です

でも、とても楽しかったという気持ちだけは残っていた。

 

「…わかんない。でも、多分酷い目にはあってはいないわ。楽しかったし、嬉しかったという気持ちは残っているのだから。それがどうしてなのかは、思い出せないけれど」

「そうですか。ご無事で何よりです、お嬢様。カヅキ、その愚鈍は置いておきなさい。お嬢様が無事にお戻りになったのです。功労者である貴女を労わなければなりません。来なさい」

 

ターニャは立ち上がりつつ、カヅキにそう言う。

 

って、ちょっと待って。

自国の王子に愚鈍って…不敬罪でしょっ引かれるわよ、貴女…。

ナズナだから、笑って許してくれるようなものなのに。

 

「迷惑をかけてすまない。ターニャ、カヅキ」

「全くです。お嬢様の為でなかったら、貴方如き誰が探すものですか」

「本当、その通りだからなナズナ!! こっちだって忙しいんだよクソボケ!!」

 

口が悪いわよ、カヅキ…。

 

前に会った時とあまり相違なさそうだったから、多分ユエちゃんとユタカちゃんを産んだ後のカヅキだろう。

忙しいというのも本当の事だろう。

手を煩わせてしまい、大変申し訳なく思った。

 

「シャル、学校の寮まで飛べるか? もう始業式は終わって、三学期が始まっているんだ。荷物は送ってはあるんだが…」

 

ナズナがあたしにそう言ってくる。

あたしが次元の狭間に落ちた時、まだ一週間くらいは猶予があったはずなのに。

 

「え?! それ早く言いなさいよ貴方!! ターニャ、カヅキ! ごめんなさい、あたし達学校に行かなきゃ…!!」

 

あたしが二人に手を合わせて頭を下げると、仕方ないと笑ってくれた。

あたしが信頼を置く人達は、とても優しいと感じる。

 

まぁ、今回二人の手を煩わせたのはあたしもだが、ナズナがやった事に比べたら微々たるものなのだろう。

怒りの矛先が、完璧に彼へ向いているのを感じたのだから。

 

「じゃあ、二人ともまた!!」

 

あたしはナズナの腕を掴み、学校の寮に転移する。

見慣れた光景に目の前が切り替わり、あたしは安堵のため息よりもまず先に、ナズナへ掴み掛かった。

 

「あたし留年する?!」

「しない。しばらく休養すると先生には伝えてある。まぁ、追試くらいはあるだろうが…シャル、無事で良かった…」

 

彼はあたしを抱きしめ、頭に頬擦りしてくる。

くすぐったくて、少し笑ってしまった。

 

「貴方もね。あたしが心配だからって、飛び込まないでちょうだいよ。あたしだけここへ戻ってきたら、途方に暮れるところだったわ」

「…すまない。カヅキに、お前がいる次元かもしれんと言われた瞬間、何も考えず飛び込んでしまった…」

 

お馬鹿。

あたしはそう言い、彼の額を弾く。

 

「いっ……たいぞ、シャル…」

 

額を押さえ、ナズナは少し涙目になった。

 

「痛くしたのよ、馬鹿。貴方、次期王なのだから自分の身は大切にしなさいよ。あたしなら何とか出来るとか思わなかったわけ?」

 

あたしの言葉に、彼がムッとする。

ナズナはあたしを抱き上げると、そのまま寝室に行きあたしをベッドに投げた。

 

「きゃっ?!」

 

何するのと抗議しようとしたのだが、彼が覆い被さってくる。

腕も上に一纏めにされ、至近距離にまで顔を近づけられてしまった。

 

「な、な…っ?!」

「お前の心配をして何が悪いんだ、シャルロット。なぁ、俺の妃。お前を失う事態になったら、俺は自害する覚悟もあるんだぞ。それでも、お前の心配をするなと…お前はそう言うのか?」

 

耳元で、とても低い声で囁くように言われ、あたしは体が跳ねてしまう。

顔に熱が集まっている気がして、あたしはナズナの声から逃げるように彼の声とは反対側に顔を背けた。

 

「や…だって、あたし…っ!」

「人外とか言うんだったら、仕置きするぞシャル」

 

仕置きってなんだ!!

 

あたしは涙目になりながら、ナズナを睨みつける。

だが、彼は面白そうにあたしを見つめていた。

嗜虐的なその表情へ、少しの恐怖を抱く。

 

「や、やだ…嫌…ごめ、ごめんなさい…っ! ごめんなさいっ!!」

 

ポロポロと涙を溢し始めたあたしに、ナズナは苦笑した。

腕を掴んでた手を離し、あたしの涙を拭う。

 

「…怖いと思うなら、俺の心配を受け入れてくれシャルロット。怖がらせてすまなかったな。だが、お前は無敵ではないんだ。そうやって恐怖を抱く事もある。な? お前が俺を心配するように、俺だってお前の事が心配なんだよ、シャルロット」

「ナズナ…」

 

力強く、ナズナはあたしを抱きしめてくる。

あたしは、彼の背に手を伸ばし、抱き返した。

 

「ん…心配かけて、ごめんなさい。あと、ただいま…ナズナ」

「分かってくれれば良い。お帰り、シャルロット」

 

暫く抱き合い、口付けを交わす。

唇を離し、あたし達は笑い合った。

 

日常が戻って来たのだと、そう思ったから。

 

後日談として。

カーン先生から、休んでた間の授業の免除の代わりに追試を受ける事になり、やっぱりそこでもナズナに負けて、あたしは悔しい思いをした。

 

彼の頭は本当に、どういう仕組みになっているのだろうか。




やっと終わった長かった!!
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