転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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249.幻術を使います

いくらあたしを溺愛しているからと、そこまではやり過ぎな気もするのだが。

それに、1から人間関係を築こうと思えば出来るんだけれど。

王妃の業務も熟すのに、知らない人ばかりでは心細いだろう、という配慮なのだろうが、本当あたしの旦那様になる人は心配性過ぎるのではないだろうか?

 

言い換えれば、あたしに甘すぎるという事だけど。

 

あたしのスケジュール管理もメイドの一人であるルーティがやってくれているので、彼女に言えばあたしとの時間なんていくらでも作ってもらえる。

 

だがそれは同時に、あたしの耳にも入っているのを彼は忘れているようで、彼女が伝えてくれた時、呆れて自分の頭を抱えてしまったくらいなのだ。

 

溺愛も過ぎれば、真綿で締められているような窮屈さを感じもするのに。

 

「…それでクロエ。陛下からの依頼と言っていたけれど…ナズナもさっき言った通り、結婚式を控えているあたしにその依頼を流してきたって事は…裏も勿論あるんでしょう?」

 

お茶を飲みながら、あたしはクロエをチラリと見る。

彼は微笑みを浮かべたまま冷や汗を流し始めた。

それはもう滝のような汗で、蛇に睨まれたカエルのようだと、あたしはそんな感想を抱く。

 

「副ギルドマスターの貴方が、依頼者の裏事情を知らない、なんて事はないわよね? ちゃんとそこは調べてあるのでしょう? そうでなければ、真っ当を掲げているギルドマスターへの裏切りになるものね? 守秘義務があるのはわかるのだけど、受けるからにはあたしも知る権利があるはずよ? まぁ、大方予想はつくけれど…」

 

はぁ、とあたしはまたため息を吐いた。

そんなあたしの様子に、ナズナは訝しんで思考を回したのだろう。

徐々に、その眉が寄っていった。

 

「シャル、まさか…」

「憶測で物を言いたくはないけれど、多分その通りだと思う。また陛下に、何処ぞの貴族が何かを言ってきたんでしょう。でしょ、クロエ?」

 

彼に問いかけるが、何も言わず冷や汗を流し続けている。

クロエの性格上、違うのならヘラヘラ笑って話を流してしまうか、お開きにするかだろうけど、自分の前方には王太子で次期王のナズナ、横には戦争の英雄と名高く、次期王妃になるあたしが彼を威圧しているのだ。

それで逃げられるほど甘くはないと、クロエは理解しているようだった。

 

「あー…えーと…」

「シャルが仕事でミスをするとは思えんが、あのクソ親父…シャルを亡き者にしようとしているのか…? 確かに、シャルが死ねば婚約者の座は白紙になるからな。また一年喪に服する事にはなるが、その間に自分の息のかかった有力貴族の娘でも妻に宛てがおう、というのだろう…だとしたら度し難いほどの無知無能だぞ。それで俺が傀儡になるとでも思ったのか、あの馬鹿者め。次期王になるのが決定している俺の花嫁が、そう簡単に死ぬわけがないだろう」

 

あら、そこは信頼してくれているのね貴方。

前なら、死んでしまうからやめろと、錯乱するくらい心配していたのに。

王になるからと、そこの精神性も成長したのかしら。

 

「僕の口からは何も言えないので、この書類だけ置いていきます。見終わったら燃やしてください。じゃあ、僕の用件はそれだけなので…失礼しまーす!」

 

お茶ご馳走様です、とクロエは立ち上がりそそくさと帰っていった。

机の上に広げられた書類を手に取る。

依頼書には、ある貴族の屋敷に潜入して、内部捜査をしてきて欲しいと書いてあった。

 

「シャル」

 

ナズナが難しい顔をしてあたしを見つめる。

それに肩を竦めながら言った。

 

「わかってる。危ないと思ったらすぐに脱出するわ。それに、このままじゃあたしだってすぐにバレるから、幻術使って見た目変えないとね」

 

あたしは指を鳴らして、生前の姿になる。

これなら、テスタロッサの娘だとバレる事もないだろう。

触感も幻術で見たままになっているはずなので、あたしはナズナに頼んで確認してもらった。

 

「…シャルの身長は、俺の首元辺りのはずなのに…身体弄ったか?」

 

ナズナの鳩尾あたりまで背が縮んだあたしの頭を撫でながら、彼は怪訝そうな顔をする。

本当、この創造ってスキル凄いわ。

幻術でここまでハイスペックなものが出来るとか。

普通は出来ないのだろうけど。

 

「弄るわけないでしょ。弄ったなら、戻すのだって大変になるはずだし…貴方ね、あたし別にスライムじゃないのよ? なって欲しいなら、してあげても良いけど」

「やめろ。嫁がスライムとか冗談じゃない。いや…シャルに溶かされるなら本望、か?」

 

何馬鹿な事言ってるのかしら、この人。

溶かされてあたしと一体になれたら、なんて考えているのだろうけど。

それは嫌だって、前も言ったはずなのに。

 

ふと思いついたあたしは、意地悪な質問を彼にする。

 

「ねぇ、ナズナ。シャルロットとナツキ、貴方的にはどちらが好み?」

 

そう問われたナズナは、腕を組み眉を寄せて悩み始めた。

そして、ポツリと

 

「どちらも好みだな」

 

と言った。

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