ナズナの所から帰ってきて、また数日経ったある日。
あたしは時魔法を駆使して、ここの家の捜索をしていた。
人に触れるとその人の時間が動き出してしまうのは、ナズナとマーサで実証済みだったので、時を止めたとてここの主人の体に触れて物を探すという事が出来ず、仕方なく資料やら何やらを探していたのだが。
「んー…まったく収穫ないわねぇ…」
執務室の本棚を一通り漁った後、あたしはポツリと呟いた。
用心深すぎでしょ、ここの主人。
後、探していない所といえば、ここの主人が持っている鍵でしか開けられない部屋くらいか。
「光姫、やっぱりあそこしかないと思いますよ」
「だよねぇ…。マーサが主人の体に触れて、鍵探すっていうのはどうかしら?」
術者本人が触れるのがダメなら、別の人が触れればいけるのではないだろうか。
しかし、あたしの提案にマーサは首を横に振った。
「そう思って無機物で試してみたんですよ。普通に時計動きましたよ、光姫」
「ダメかぁ…。よし、なら力ずくにしましょうか…」
もう少しスマートにやりたかったのだけれど、無理だというのなら仕方ない。
執務室から離れた所にある開かずの扉の前へ行き、思い切り蹴り破る。
大きな音が立ったが、時が止まっている以上警備兵が現れる事も無く、あたし達は中に入った。
「わぉ…」
あまりの光景に、あたしは思わず声を上げる。
そこは武器の類がずらりと並んでおり、何処ぞの国と戦争でもするのかというくらい、武器の種類が豊富だった。
マーサが近くにあった書類とかを見始め、あたしに向かって、ありましたと告げる。
「謀反の証拠です、光姫! 後はこれをマスターに届ければ…」
彼女がそう言った瞬間、時を止める魔法が解けた。
タイマーをセットしていたのだが、リミットが来たらしい。
あたしは慌てて、マーサをギルド本部に飛ばした。
自分もと思った瞬間、いつの間に控えていたのか後ろから警備兵が雪崩れ込んできて、冒頭に至るわけだ。
「女の子、しかも幼女に見えるからか、暴行はされなかったわけか…幼女趣味の人がいなくて良かったわ、本当に」
同じ体勢でいたからか、体を少し動かすとポキポキと身体中から鳴る。
マーサが持っていった証拠は、すぐギルドマスターの元へ行くだろう。
それを陛下なり、ナズナなりに見せてガルシア家を包囲するのも時間の問題。
「人質にされたらたまったもんじゃないから、脱出しますか」
あたしは自分の姿を元に戻し、檻を破壊しようと手にかける。
しかしうんともすんとも言わなくて、あたしは首を傾げた。
「雛桔梗。あたし、何か状態異常にでもかかってるのかしら?」
【いいえ、我が主。この牢全体に、魔法を妨害する結界が張ってあるようです】
なるほど、だから力任せにやろうとしても無駄だと。
身体強化をして牢を破壊しようとしたのに出来ないのはそのためか。
あたしはため息をつき、自分の体を弄って爪を伸ばし、それを硬化させる。
あんまりやるとナズナから怒られるのだが、今はそうも言っていられないだろう。
無事に脱出するためなので、彼も見逃してくれると信じよう、うん。
硬化した爪で、牢の鉄格子を切り裂く。
カランカランと音を立てて、鉄格子だったものが地面に落ちて音を立てた。
「さて、雛桔梗。妨害はこれだけ?」
【はい、我が主。牢屋の中だけのようです】
ならばと、あたしは牢から出てナズナに念話を送る。
〈ハロー、ナズナ? 聞こえているかしら?〉
〈シャル?! 無事なのか?! …良かった…今、アルテミシアが謀反の証拠を持ってきたのだが、お前が捕まってしまったと報告を受けていた所だ。あと、親父は無関係だったぞ。まぁ、俺に側妃を宛てがうのを諦めてはいなかったから、そこは釘を刺しておいたが…〉
それは何より。
あと二ヶ月大人しくしていてくれないかしら、陛下は。
無能なのだから。
と、あたしはそんな事より彼に聞いた。
〈主犯格のここの当主、捕まえた方がいいかしら?〉
〈出来るならそうして貰えたら有難いが…良いか、シャル? お前の身の安全が第一だからな? 今から兵を編成してそちらに向かう。死なないからと暴れるんじゃないぞ?〉
釘を刺されてしまい、あたしは軽く舌を出す。
あたしの性格を知っていて、そう言うんだから。
〈ちょっとそれは聞けない相談かしらね。襲われたら反撃せず、男どもの手篭めになっていろとでもいうのかしら、貴方は?〉
〈そんな事言ってないだろう?! お前の全ては俺のものだ、他の男になど触らせるか!! あぁ、もう…わかった…相手が死なないよう手加減しながら、昏倒させろ。それくらい出来るだろう?〉
勿論、とあたしは返事をし、指を鳴らす。
不死の結界を張り、メイド服から動きやすい服に変えた。
〈出来るだけ早く来てね、ナズナ。早く貴方に会いたいわ〉
〈可愛い事を言ってくれるな、シャル。ただ…本当に殺すなよ?〉
釘を刺しすぎだわ、貴方。
あたしはそう言い、念話を切る。
髪を括っていると、牢屋に警備兵が来た。