転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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255.追いかけっこです

来るのが早い気がしたが、あたしは彼を見上げた。

 

「シャル、遅くなった。すまない」

「…ナズナ…あたし…」

 

あたしの顔を見た彼が、少し眉を下げながら苦笑する。

 

「これが終わったら、失踪しようとか考えないでくれよ? お前を見つけ出すのは苦労しそうだ。なんて言ったって、お前はこの世界最強の女だ。隠れるのも得意だろう。俺は嫌だぞ。花嫁のいない結婚式など。俺の妻はお前だけなんだ。お前が消えるというなら、俺は生涯をかけてでもお前を探すからな。それこそ、王の責務なんぞ放り出してでもだ」

「それは…無責任過ぎるわ、あなた…」

 

ナズナはあたしを抱きしめ、耳元で囁くように言った。

 

「それだけお前を愛しているという事だ、シャルロット。俺は万能ではないからな。お前が本気で隠れたら、見つけられる自信がないわけだが…それでも、ずっと探し続ける。死ぬその時まで、お前を求め続ける自信しかない。なぁ、シャル。俺から離れないでくれ。俺は、お前になら何をされてもいいと思っている。それこそ、殺されても喜んで受け入れるよ」

「…そこは抵抗してよ…」

 

涙が出てきて、あたしはナズナの服を握りしめる。

そんなあたしの頭を、彼は撫でてくれた。

警備兵が出て来ないのは、城の兵が制圧しているからだろうか?

 

「シャル。後もう少し、仕事が残っているんだが…目を離した隙に、いなくなったりとかするなよ?」

「……しない」

 

その間はなんだ、とナズナはあたしの額を軽く叩いてくる。

少し痛くて、あたしは彼を睨んだ。

そう言えば先輩が静かだなと、あたしはそちらを見る。

あたし達を呆然と見つめながら、彼女は絶命していた。

 

「…シャル、言いたくはないが…やり過ぎなのではないだろうか?」

「不死の結界が張ってあるんだから、死んでないわよ」

 

指を鳴らし、あたしは結界を解く。

一瞬で先輩の体が元に戻り、それを見たナズナが先輩からあたしに顔を向け、苦笑いをした。

 

「流石だとしか言いようがないな、シャル。用意周到だ。それでこそ、王妃の器たる資格を持つ女だ」

「あの、なんでそんなに褒められているのかわからないのだけれど…。あと、離してくれないかしら…逃げたり消えたりしないから」

 

嫌だ、とナズナは言い、少しムッとする。

あたしを抱きしめる腕に、彼は力を込めた。

 

「お前と離れて、何日経ったと思っている? 半月だ。また半月も、お前と離れていたんだぞ? 何度、証拠をでっち上げてここに突入しようと思ったか分からん」

「…それ、ルルさんとブリジットさんに止められたでしょ」

 

二人が慌ててナズナを止めている光景が目に浮かぶ。

まぁな、なんて言った彼から、あたしは力ずくで離れた。

 

「シャル…」

「そんな恨めしげな顔をしないで頂戴。その…あの時以来だから、あたしも嬉しいん、だけど…ほら! お仕事優先でしょう? イチャつくのは、お仕事終わった後にでも…」

 

そう言った瞬間、ナズナが素早くあたしにキスをする。

あまりにも早すぎてあたしは言葉を無くし、唖然として彼を見つめた。

 

「まったく…俺の妃は可愛い事を言う…初夜は絶対寝かせないからな。気絶しても抱き続けてやるから、覚悟しておけ」

「あ、貴方ねぇ?! ここを何処だと思っているのよ?! 本当に馬鹿!! この馬鹿!! そんな経験もないくせに、想像だけで言わないでくれないかしら?! 誰が聞いているかわからない場所でそんな事言わないで頂戴よ?!」

 

あ? とナズナの眉が吊り上がっていったが、そういう事してないって前に言ったじゃないの貴方。

そういう知識の本に、そう書いてあっただけなんでしょうけど。

 

これ以上口論すると逆上したナズナに襲われそうだったので、あたしは踵を返して、とりあえず彼から離れようと走り出した。

 

「あっ!! ちょっと待て、シャル!! …逃がすかっ!!」

 

逃がしてほしいのだけど。

取り敢えず痴話喧嘩で逃げてるだけなので、本気でナズナの元から姿を消そうとは思っていない。

のに、ナズナはあたしに追いつこうと必死で追ってくる。

 

「…おー、嬢ちゃん久しぶり…」

「ダーカンさん!! 助けてぇぇえっ!!!」

 

ユキヤ君と一緒に、ここの制圧に来ていたダーカン第一騎士団長があたしを見かけて声をかけてきたが、あたしは渡りに船とばかりに彼へ助けを求めた。

後ろのナズナを見て、あちゃー、という顔をダーカンさんはするが。

 

「シャルロット…何があったんですか?」

「貞操の危機!! まだ結婚してないのに襲われる!!」

 

あたしはユキヤ君の後ろに隠れて、ナズナを見る。

彼はダーカンさんに引き止められたようで、宥められながら何やら話をしているようだ。

あたしはホッとしながらも、ため息をついた。

 

「兄さんのあの状態…貴女が原因だと思いますけど」

「そうなのだけれど、それでも襲われて婚約破棄になるなんて御免なのよ。あぁ、それとお久しぶり。お子さんと奥さんはお元気?」

 

お久しぶりです、とユキヤ君は返してくれる。

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