転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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259.卒業式です

いや、だって、経験した事ないんだもの。

でも、逃げるなんて絶対しない。

何も身につけてない状態で、逃げられるとは思っていないからだ。

 

「揺さぶるのやめて?! 気持ち悪くなるんだけど?!」

「シャル、断言しろ。絶対逃げないって」

 

あたしを揺さぶるのをやめ、ナズナが真剣な顔で問いかけてくる。

 

今逃げてやろうか?!

 

そう叫びたかったが、グッと抑えた。

 

「…逃げたらどうなるっていうのよ…」

 

あたしは彼から目を逸らしながら、逆に問う。

ナズナは少し暗い顔をして、あたしの疑問に答えた。

 

「…俺が自信を無くして、お前を抱けなくなる」

「そこまで深刻なの?!」

 

そこまでだ、と彼は頷く。

 

「お前、無自覚すぎるだろ。こんな美女に拒否されたら、俺でなくとも自信を無くすだろうさ。いや、グレゴワールあたりは拒否された所でめげんかもしれんが…」

 

そこでグレゴワールの名前を出すなんて、相当だわこれ。

あたしは彼に手を伸ばし、首に腕を巻き付けてナズナに抱きつく。

 

「初めてだから、優しくして欲しいだけ…逃げないわよ。貴方以外となんて、嫌だもの」

「シャル…俺も初めてなんだが…。無茶をさせたらすまん…」

 

彼もあたしを抱きしめ、どちらからともなくキスをする。

早く結婚したいな、なんてあたしは思った。

 

◆◆◆

 

卒業式当日。

あたしはナズナから贈られた、黒地に金の刺繍がされたドレスを着ていた。

袖の部分と、腰からの布部分に薄いレースが施されており、光に当たると少し煌めく仕様になっている。

 

「豪華ー…」

 

髪を緩く結い上げられ、金のティアラを頂く。

ナズナの目の色である大きいサファイアが、金の装飾と共にあたしの胸元を飾っていた。

ヒールは用意出来なかったと言われたので、自前の白のヒールを履いている。

 

これも、何かあれば他に売り渡す用だが、あたしはナズナから貰った指輪だけで充分だと思った。

 

「シャル、用意出来たか?」

 

扉をノックされ、ナズナが声をかけてくる。

 

「えぇ、あなた」

 

あたしは扉を開けて、ナズナを見た。

去年も見た姿だが、それでも普段とのギャップで格好良い。

 

「シャル、綺麗だ」

「ありがとう、あなた。貴方も格好良いわ、見惚れてしまうくらい」

 

彼は少し笑い、あたしの手を取って手の甲にキスを落としてくる。

その動作も格好良くて、あたしは少し頬を染めた。

 

「…シャルロット…」

「…まだ、ダメだからね。そんな熱っぽい視線で見られても…結婚するまで待って…。あと、うちのメイド達がいるから! ターニャに筒抜けだから!!」

 

そう釘を刺すと、うぐっ、と声を上げてナズナが項垂れる。

人がいなければ、卒業式なんてそっちのけで襲われてたかもしれない。

今日は、ナズナと二人きりにならないようにしなければならないだろうかと、心の中で嘆息した。

 

「…行くか」

「そうね、あなた」

 

あたしはナズナの腕に自分の腕を絡め、歩き出す。

卒業式の会場に入ると去年通り歓談してた声が一瞬で無くなり、あたしはまたかと彼を見た。

ナズナもあたしが見ている事に気付き、苦笑する。

 

「シャル、やはりお前は人を惹きつける女だな」

「…この反応見たらそうなるわよねぇ…そんな女を妻に出来る貴方は、とても幸運なのかしら?」

 

彼に微笑むと、ナズナはあたしの頬にキスをしてきた。

そして耳元で囁く。

 

「いつもそう言っているんだがな、シャルロット。俺はお前と出会えて、恋仲になれて、とても幸運だと思っていると。お前以上の女なんぞいない。お前が俺の妻になってくれるのが、俺の物になってくれるのが、今からとても楽しみだ」

「やっ…だから、耳はやめてってば…っ!」

 

あたしは頬を染め、耳を押さえながら彼に小声で注意した。

そんなあたしを見て、ナズナは笑う。

 

卒業式が始まり、一人一人壇上に行って校長と話していた。

ナズナの前にあたしの番が来たので、壇上に上がる。

 

「今日で貴女も卒業なのねぇ。寂しくなるわぁ。ナズナ様のお相手もだけれど、この国を支える立場は、時に重圧になって貴女に伸し掛かるかもしれない。それでも、ナズナ様と共に乗り越えられると、私は信じているわ」

「ありがとうございます、校長先生。ここに来てから、今までお世話になりました。着せ替えは流石に驚きましたけれど、良い経験になったと思っております」

 

あたしはカーテシーをしながら、校長に礼を言った。

良いのよ、と校長は言い、次いで頑張ってねと声をかけてくれる。

 

「はい。校長先生もお元気で」

 

あたしはそう言って、壇上を降りた。

ナズナの番が終わるのを降りた先で待っていたのだが、女子生徒男子生徒関係なく、あたしに群がってくる。

 

「お姉様、寂しいですーっ!!」

「お姉様が卒業なんて、信じたくないですわ…っ!!」

「シャルロットさん、今宵ダンスのお誘いをしてもよろしいでしょうか?」

「あ、俺も!」

「男子の皆様方だけなんてずるいですわ! 私達もお姉様とダンスがしたいのに!!」

 

わぁ…人が群がり過ぎてナズナが見えないー…。

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