あたしが苦笑いを浮かべていると、魔力波が放たれて何人かが失神し、倒れた。
そしてモーゼの海割りの如く、二列に人が割れて道を作る。
そこには、ナズナが不機嫌そうな顔をして立っていた。
やっぱりかと思いつつ、あたしは少し困った顔をしながら、ナズナの元へ歩き出す。
「殿下、あまり怒らないでくださいませ。おめでたい席ですのに…全く、しょうがないお方ですね貴方は。私の心は貴方の元にしかないのに、そんなに嫉妬なさらないで? 愛しいあなた」
あたしはそう言って、ナズナに抱きつく。
彼はあたしを抱きしめつつ、しかしな、と言葉を紡いだ。
「お前が美しすぎて、誰かに何処かへ連れ去られそうで怖いんだ。俺の目の届く範囲にいてくれないと困る」
「あら嫌だ。私がそんな柔な女だと仰るの? 私が貴方の専属護衛の時に魔王を討伐し、戦争の英雄にもなったのに誰かに連れ去られると? ふふ…可笑しい…」
ナズナの頬に手を添え、あたしは微笑む。
そして、少し背伸びをして彼にキスをした。
キャーと歓声が上がるが無視をする。
「シャル…」
「これで牽制になったでしょ、あまり嫉妬しないでよナズナ。貴方の魔力波に当てられて何人か気絶したじゃない」
小声で注意すると、すまん、と謝られた。
本当に、あたしが見えないとか離れるのが余程嫌なようだ。
この愛が、あたしには心地良い。
「好きよ、ナズナ」
「俺も、愛してるシャルロット」
壇上から校長先生が咳払いをする。
あたしとナズナは離れ、先生にすみませんと頭を下げた。
最後の一人が壇上から降り、歓談の時間になる。
あたしと同様に、ナズナにも女生徒が群がって話をしていたが、彼は仏頂面で応対していた。
少し聞き耳を立ててみたが、ナズナに本気で告白している女生徒が数人、駄目元で行なっているのが数人、側妃にしてくれと進言しているのが数人。
後はナズナとの別れを惜しんでくれている人。
あたしの所も似たようなものだが、流石に王妃になる女性に告白してくる馬鹿はいなかった。
誰だ、ナズナに告った奴。
あと側妃とかふざけんな。
あたしに喧嘩売ってんの?
なら買うわよ出てきなさい。
ニコニコ笑いながら、やってきた奴にマーカーをつける。
後で個人的に話をしようと思ったからだ。
それに気付いたナズナが、呆れた目をあたしに向けた。
人の事言えないだろう、という目だったけれど無視する。
音楽が流れてきて、ダンスの時間が開始されたようだった。
ナズナは女生徒達に何か言って、あたしの所へ来る。
あたしの所にいた生徒達もあたしから離れ、あたしとナズナを中心に輪が出来た。
「貴女と踊る栄誉を、俺に頂けないでしょうか。シャルロット・マリアライト・テスタロッサ嬢」
ナズナはあたしの前に跪き、手を取って懇願するようにあたしを見る。
そんな彼へ、あたしは微笑みかけた。
「喜んで。ナズナ・エキザカム・ブリリアント殿下」
ダンスホールへエスコートされ、あたしはナズナとワルツを踊る。
少し踊ってから、あたしはクスリと笑った。
「どうした、シャル?」
なんで笑っているのだろうと、ナズナは首を傾げる。
「いえ…貴方があたしに敬語を使うの、初めてじゃないかしら? 初めて会った時も不遜な態度だったじゃない?」
「そこまで横柄だったか? まぁ…確かにお前に敬語を使うとしたら、許しを乞う時くらいだろうが…」
少し眉を下げ、ナズナが笑う。
ふと、そういえばあの時何を言ったのだろうかと、彼に尋ねる事にした。
「ナズナ、貴方女生徒達に何を言ったのよ」
「ん? あぁ…ダンスの時間で一回は踊ってやるから、そこを退けと言っただけだ」
何でしれっと言ってんですかね、この人は。
本当、人の心の機微というか地雷を平気で踏んづけていくというか…!!
「あ、そう。なら、あたしも他の男性と踊っても平気なのね?」
ジト目で彼を見ると、目を逸らされてしまった。
「とても嫌だし苦痛ではあるんだが…すまんシャル。あぁ言わなければ、あいつら退きそうもなかったんで…」
ムッとしていると、ステップを踏み間違えてあたしは少し体勢が崩れる。
そこをすかさず、ナズナがフォローしてくれた。
「…ごめん」
「いいや、謝るのは俺の方だ。すまない、シャルロット。だが、お前が王妃になったらこういう経験はないだろう。俺としか踊らないはずだし…その…何事も経験というか……そんな目で見ないでくれ…すまなかった…」
ちょっと後悔しているようだったので、あたしは彼に言う。
「結婚したら、あたしだけしか見ないでね? 他の人を見るのは嫌よ?」
「わかってるさ、俺の
あら、嬉しい。
破ったらどうなるかなんて、聞かなくても彼は分かりきっているだろう。
だって、結婚記念日二回忘れたくらいで離婚騒動が起こるのだもの。
他の女に現を抜かした瞬間、即離婚だわ。
ナズナと二回踊り、あたしは他の男性に渡される。
渡す瞬間、彼は相手の男性を睨みつけていたが。