転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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261.お酒を飲みます

「シャ、シャルロットさんと踊れるなんて、光栄です…っ!」

 

お名前は存じ上げないけど、誠実そうな男性だなと感じる。

あたしは社交向けの笑顔を浮かべた。

 

「そんなに畏まらなくても、私の方が年下なわけですし。あまり緊張なさると、動きがぎこちなくなりましてよ?」

「そ、そうですね」

 

声をかけてみるが、彼の緊張は解れないようだ。

まぁ、ステップを踏み間違えたり、足を踏まれないだけ良いか、と思う事にする。

 

次の男性は結構遊んでそうで、あたしは微笑みを絶やさず内心で舌を出した。

早く終わらないかな、このダンスの時間。

 

「シャルロットさん、どうです? ナズナ殿下に隠れてお付き合いしていただいても、宜しいんですよ?」

「遠慮しておきますわ。私もですけど、ナズナ殿下も案外嫉妬深いんですの。それに、お互いの事を深く愛し合ってますので」

 

残念、とその男性は言う。

本当に残念と思ってなさそうで、足でも踏んづけてやろうかしらと一瞬考えた。

ナズナの評判が落ちそうだからやめたけれど。

 

何人か代わる代わる踊ったけれど、やっぱりナズナと踊るのが一番楽しいなと感じてしまう。

チラリとナズナの方を見ると、女生徒をリードして踊っていた。

顔はやっぱり仏頂面だったけど。

 

にこやかに笑っていたら、それはそれで嫌なので良しとする。

 

〈シャル、あまり笑うな。周りの男共がお前に魅了されるだろう。今お前と離れて、歯痒いんだ。やめてくれ〉

 

ナズナからのそんな念話に、あたしはギョッとした。

相手役として踊ってくれていた男子生徒が、どうしましたと問いかけてくる。

何でもありません、とにこやかに笑いかけて、あたしはナズナに応えた。

 

〈やめろって言われたって、このダンスの時間が終わらない限り無理でしょう? 何、次の相手貴方がしてくれるわけ?〉

〈したいのは山々なんだが…キリがない〉

 

なら文句言うな、とあたしは念話を切る。

次に踊った男性が、踊りっぱなしで疲れたので少し休みませんかとあたしに提案してきたので、それに乗った。

 

壁際に連れられ、一息つく。

先程踊った男性がカクテルグラスに入ったお酒を持ってきてくれた。

あまりお酒に詳しくはないが、チョコレートの香りがするもので、へーと物珍しさから受け取る。

 

「このカクテル、何て名前ですの?」

「アレキサンダーというものらしいですよ。あちらにバースペースがありまして、そこで注文したら作ってくれたんですよ」

 

またも、へー、と思いながらそのカクテルを飲み干した。

甘い口当たりで、飲みやすい。

そう思った瞬間少し眩暈がして、あたしはその男性に寄りかかってしまった。

 

「あ…ごめんなさい…」

「お加減がよろしくないようですね? 休憩スペースに参りましょうか?」

 

男性があたしの肩を抱き、手を取って会場から連れ出そうとする。

 

あ、これマズい奴だ。

頭がクラクラしてきた。

マズいマズいマズい。

早く中和しないと。

 

あたしは目を瞑り、スキルを作り出そうと集中した時。

 

「俺の婚約者だ。具合が悪いなら俺が寮の部屋へ連れて行く」

 

相手のダンスを中断し、ナズナが男性の肩を掴んだようで、間近から声がする。

あたしは目を開け、ナズナを見た。

 

「殿、下…」

「すまないな、シャル。少し我慢してくれ」

 

彼はそう言い、あたしをお姫様抱っこで抱え上げる。

そして、男性へナズナはにこやかに笑いかけた。

 

「俺の妻が迷惑をかけたな。だが、お前が介抱する必要はない。それは俺がするからな。あぁ、そう言えば…お前の婚約者があちらでお前の事を睨んでいるぞ。早く行って誤解を解いてきたらどうだ、ニコライ・マウリッツ」

 

あー、この人ニコライさんっていうのか。

流石ナズナ。

国民全員の名前と顔、全て覚えているだけある。

 

頭がクラクラしているのから、ふわふわになってきたあたしは楽しくなり、ナズナの首に腕を巻き付けて抱きついた。

 

ニコライさんは慌ててあたし達から離れたけど、多分誤解を解きに行ったのだろうなと思う。

 

「シャル、帰るぞ」

「はぁい、あなた」

 

うふふ、と笑いながらあたしはナズナに甘える。

そんなあたしを見て、彼はため息をついたのだった。

 

◆◆◆

 

寮の部屋に着き、ナズナはあたしをベッドに降ろす。

だけどあたしは彼と離れ難く、首に絡めてる腕の力を強めた。

 

「シャル、離してくれ。首絞まってるから」

「やだ。何処かに行かないで、ナズナ。あたしの傍にいてよ」

 

お酒の力が入ってるからか、思ってる事が口から出てしまう。

彼は少し困ったようで、腕を軽く叩いてきた。

 

「シャル。着替えてくるだけだ。すぐ戻るから」

「嫌。あたしの視界から消えちゃ嫌。消えるならあたし、テスタロッサに帰る」

 

うーん、とナズナは唸り、仕方ないと諦めたようであたしを抱きしめてくる。

 

「シャル、お前何飲んだんだ? ワインでもそうはなっていなかっただろ?」

「んー? 何だっけ…あー、そうそう。アレキサンダーっていうチョコレート味のカクテル貰って、飲んだのよ。そしたらこう、頭がクラクラしてきてねー。今は楽しいわよー? ナズナと一緒なんだもの。んふふ」

 

あたしは彼の首から頭の方を抱きしめ、クスクス笑った。

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