転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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262.ミラの祠です

だけどナズナは、腕の力だけであたしの抱擁から抜け出し慌て始める。

 

「お前それ、レディーキラーって呼ばれてる酒の一種だろ?! 大丈夫か、気分悪くなってないか?!」

「レディーキラーが何かは分からないけど、今は少し不愉快よ。離れないでって言ったのに。テスタロッサ帰る」

 

ぷくー、と頬を膨らませ、あたしはナズナに抗議した。

その言葉に、ナズナは違う意味で慌て出す。

 

「違、お前の体調を心配して…離れたわけじゃない! あぁ、シャル! 魔力練るな!! 頼む、何処かに行かないでくれ!!」

「知らない」

 

プイッ、と顔を背け、起き上がったあたしは転移した。

ナズナの制止も振り切って。

ただ、飛んだ先はテスタロッサではなかった。

 

「…あれぇ?」

 

そこはミラの祠の中で。

ヒンヤリしたそこはとても心地良くて、あたしは地面に寝そべった。

 

〈シャル、どうした? ここに来るとは珍しい〉

 

薄暗い祠の中、体を発光させながらミラが現れる。

 

「こんばんわぁ、ミラぁ。んー…ナズナと少し喧嘩しただけぇ。酔いが覚めたら帰るから…ちょっとここに居させて…」

 

眠くなってきたあたしは、瞼を擦りながら彼女に言う。

構わんが風邪引くぞ、とミラがそう言うので、あたしは笑った。

 

「転生者のあたしが、風邪なんて引くわけないじゃない。んー…眠いぃ…おやすみ、ミラ…」

 

あたしは意識を飛ばし、次に目を開けた時頭痛が酷くて蹲る。

ドレスがグシャグシャになってしまったが、それに構う暇などないくらい頭が痛い。

 

〈起きたか、シャル。起き上がれそうか?〉

「無理…痛い…頭割れそう…ズキズキするぅ…」

 

痛覚遮断をやって、やっと起き上がれたが、昨夜の事を思い出してあたしはまた蹲った。

 

〈シャル、どうした?〉

「…帰るに帰れない…もうやだ…お酒の力怖い…ナズナに嫌われた…」

 

おいおい泣くあたしの頭を、ミラが撫でてくれる。

次いで、ウンディーネが水が入った桶を持ってきてくれ、それで顔を洗った。

指を鳴らして服を着替え、装飾品も指を鳴らして保管庫に移動させる。

 

ナズナから貰ったドレス皺だらけになっちゃった…。

顔合わせられない…。

 

顔を洗って化粧とかを全て落としたのだが、それでも涙が溢れてきてあたしは地面に突っ伏して泣く。

ミラはそんなあたしの様子に、苦笑した。

 

〈シャル、何なら精霊にでもなるか? 人の子だから、煩わしい事が起きるのだと思うのだが〉

「それも良いかも…」

 

彼女の提案に頷きかけると、祠の入り口から走ってくる足音がして、叫ぶ声が聞こえる。

 

「元素の精霊!! シャルを誘惑しないでくれ!! 俺の女が精霊になったら、俺は自死するぞ?!」

「…ナズナ…」

 

彼の声に身を起こした。

 

驚いた。

ミラの祠まで来れるとは…いや、それよりも迷いの森を一人で突破してきたのだろうか、彼は?

それに、あたしがここにいるってよく分かったな?

 

疑問が渦を巻くが、ナズナはあたしに近寄り抱きしめてくる。

 

「シャル…無事で良かった…」

 

安堵のため息を吐き、彼はあたしの頭に頬擦りしてきた。

戸惑ったあたしは、彼に問う。

 

「あ、あの…ナズナ…怒ってない、の?」

 

なんで怒る必要がある、と彼は体を少し離し微笑んだ。

 

「酒は抜けてるな? 記憶は…その様子だとあるな。全く…あまり心配させないでくれ…お前の魔力を追ったらここだったものでな…一晩かかった」

「え…先に王宮に戻ってくれても良かったのに…」

 

確か今日は寮を引き上げる日だったはず。

大きい荷物とかはもう王宮に送っていて、あとは自分達の荷物とか卒業式で着た物とかを持って出るだけ、だったのだが。

 

「お前…あの状態で放置したら、元素の精霊の提案に乗っていただろう? お前の性格は、この二年共にいて理解している。あと、荷物は申し訳ないがレヴィとルティに頼んで、持って出てもらう事になった。あぁ…本当に無事で良かった…シャル…」

「ナズナ…」

 

キツく、ナズナはあたしを抱きしめる。

彼はワイシャツと式典用のズボンだけで、上着だけ脱いでここまで来たのだと察した。

馬車でも結構な距離なはずなので、シルフィードを纏って飛んできたのだろうか。

 

〈シルフに入口まで送ってもらうか? シャル〉

 

あたし達の様子を眺めていたミラが、そう尋ねてくる。

うん、と頷くと彼女はシルフを呼んでくれた。

彼はあたし達に風を纏わせ、迷いの森の入り口まで飛ばしてくれる。

移動が少し荒っぽかったので、ナズナが途中で酔ってしまったが。

 

「ありがとう、シルフ。騒がしくしてごめんなさいね」

〈元素の精霊が頼んできたから、仕方なくだからな! 僕はそんなに甘くないんだぞ!〉

 

そう言い、シルフは消える。

本当に子供だなぁ、と思いつつ、ダウンしてしまったナズナの頭を膝に乗せ、撫でた。

 

「………」

 

寝息を立て始めてしまったナズナに、本当に一晩迷いの森を歩いて…もしくは、走ってあの祠まで来たのだと理解する。

 

「好きよ、ナズナ。愛してる。貴方が迎えに来てくれてなかったら、あたし本当に精霊になっていたわ」

 

なっても良かったけれど、彼に自死すると言われてしまった。

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