転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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265.陛下とのお時間です

その目線に、あたしは居住いを正した。

 

「お前は、俺と共に戦ってくれるか?」

「…勿論です、陛下。先にも宣言した通り、あたしは国に脅威が訪れる時、それが難敵であろうとも貴方様の為に排除致します。貴方様がこれから作るこの国は、もっとより良いものになります。その為ならばこの命、貴方様の為に捧げても惜しくはありません」

 

あたしは自分の胸に手を当て、彼に微笑む。

ナズナも、あたしに微笑みかけてくれた。

 

「俺の妃は、本当に素晴らしい女性だな」

「貴方に見初められた事、とても誇りに思います。こんなあたしを、妻にしてくれる事…感謝しかありません。有難うございます、陛下」

 

あたしは深々と、ナズナへ頭を下げる。

ふっ、と彼は笑い、あたしの手を取った。

 

「こちらこそだ、シャルロット。俺の妻になる事を了承してくれて、感謝する。お前のような女性を迎えられて、俺は幸せ者だ」

「陛下…」

 

そう言われて嬉しくなり、あたしは涙ぐむ。

そんなあたしの様子に、彼は見ろと言わんばかりにカーテンを開けた。

 

顔を上げ窓の外を見る。

あたしの姿が見えた瞬間、民衆から歓声が上がった。

なんで、と驚くと、ナズナは何故そうなのか教えてくれる。

 

「ここにいる男性達は、あの戦争の時徴兵され、戦場にいたんだ。皆にも家庭があり、家族がいる。だがな、シャル。お前のおかげで、皆無事に家族の元に帰れたんだ。民達は皆、お前に感謝しているんだよ」

「そんな…」

 

あの時は必死で、ナズナに近付けさせてなるものか、みんなを守らなければと、その思いだけで戦っていた。

それが感謝されるなんて、微塵にも思っていなかったのに。

 

歓声の中から、感謝の声が上がっている事に気付く。

あたしはみんなに手を振った。

更に歓声が上がり、あたしは涙が溢れる。

 

「泣くな、シャル。笑っていろ。次期王妃だ、表情は取り繕えるだろう?」

「…もう…人が感動して泣いているのに…酷い人だわ、貴方」

 

あたしは涙を拭い、みんなに手を振りながら笑いかけた。

 

◆◆◆

 

戴冠式のパレードからまた数日後。

あたしは何故か、陛下になったナズナのお膝の上に座って、読書していた。

 

「あの、陛下。仕事の邪魔になってませんかね、あたし」

「全くなっていない。むしろ捗るから降りようとするな、シャル」

 

それは命令なのかしら。

それともお願い?

何にせよ、家臣の人達が来る度にこちらに目線を投げかけてくるから、居た堪れないのだけれど。

 

今城の中は、前陛下であるライラント様が奥方様達を連れて、どちらかへ引っ越しをする準備で慌ただしい。

後宮もナズナの宣言通り同時期に解体を進めているらしく、ライラント様についていかないと決めた奥方様達は、実家へ帰るらしいと聞いた。

 

「なんか、静かになりそうよね…」

「こんなものだろう。それに、お前との子供が出来れば騒がしくなるさ」

 

あたしの肩に顎を乗せ、ナズナはそう言う。

会話しながら、書類を書く手を止めないのは流石だとしか言いようがないけれど、絶対これ邪魔になってるはずよね?

 

ナズナの身長は確か181センチ、あたしの身長はこの間測ってもらったら170センチらしく、頭一個分だけしか彼と違わない。

いくらあたしが華奢だとナズナが言った所で、作業の邪魔になっているのなら退きたいのだが。

 

「陛下…」

「却下だ。くどい。大人しくしていろ」

 

そう言われたら大人しくせざるを得ない。

あたしは少しため息をついて、彼に寄りかかる。

 

「あたし、貴方の婚約者だけれど…まだ臣下なんですよー。分かってますか、陛下ー?」

「分かってる……シャル、少し触れ合いの時間くらい持たせてくれ。結婚してないからと、寝室を離された俺の気持ちも理解して欲しいのだが…」

 

今までがおかしかっただけでしょ、とあたしは彼に言う。

通常、結婚してない男女が寝食を共にするものではない、がこの世界の常識だと思っていたのだけれど。

護衛除く。

 

「シャルー…」

「そんな情けない声上げないでください、陛下」

 

敬語はやめろと、ナズナはあたしの首筋に噛み付いてきた。

そんな彼の頭を軽く叩く。

 

「…痛いぞ、シャル」

「結婚するまでそういう事はお預けです。貴方様のお仕事が終わるまでここにいますから、離して下さいませ」

 

ナズナはムッとしながらも、あたしから手を離した。

そこは素直なのよね、この人。

王の命令だとか言って、あたしを拘束するなりすれば良いのに。

 

あたしは応接用の椅子に座り、ルティを呼び出す。

彼に、あたしとナズナ用のお茶を用意するよう告げた。

御意、と返してくれた数分後に、ティーセットを持って、ルティはお茶を入れてくれる。

 

ナズナが仕事をしルティがお茶を注いでいる、そんな光景を見て、あたしは笑った。

 

「どうした、シャル?」

「…ふふ、いいえ。あたし達って、場所を変えた所で全く変わらないのね、と思ったら少し可笑しくて。寮のあの部屋から、ここになったとしても」

 

それはそうだろう、とナズナも笑いながら言う。

穏やかな時間が、流れていった。

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