「俺が選んだ女性だ、彼女以上の存在などいない。それにロドリゲス。貴様の家や他の家は確か、我が母であるリン姫の輿入れの時も、反対していたそうだな? 自分達が甘い汁を吸う為だけに、娘を輿入れさせて王家を操ろうと目論むか? はっ! 立派な反逆罪だぞ、それは」
「へ、陛下!! そんな滅相もない事を!! 私はただ、国の為を思って言っているのでございます!!」
何処がよ。
見え透いた嘘なんて、ナズナに通じるものですか。
あたしはチラリと、ロドリゲスのご令嬢を見る。
結婚式だから白いドレスを着て来ているのだが、全く似合っていない。
むしろ、白い布を巻きつけただけと思わせるような出立ちに、ドン引きする。
「陛下がロドリゲスと婚姻するなら、シャルロットさんはフリーに…」
なんて呟きが聞こえ、ナズナはそちらに鋭い眼光を向けた。
呟いたのはグレゴワールだったけど、すぐさま隣にいた自分の父親に拳骨を落とされたようで、それ以上言葉が紡がれる事はなかった。
「なんでこんなに邪魔が入るのかしら…」
感動の涙も引っ込んじゃったじゃない。
この落とし前、どうしてくれるのかしら。
「全くだ…ロドリゲス、退場しろ。抗議は後程、書面で受け付けてやる」
陛下!! とロドリゲスの当主は叫ぶ。
二人を退場させようと親衛隊の皆が動くが、ご令嬢が暴れまくり近づけないでいるようだ。
あたしもナズナ同様長いため息を吐く。
「……不愉快だわ。陛下、御許可を。あいつらを一掃しなければ、気が済みません」
「待てシャル。やるなら俺もやる。ハリトン、すまん。修繕費等は、王宮に請求してくれ」
ジルベルト卿も、仕方ないと頷いてくれた。
あんな不届者が暴れまくって教会を破壊するよりは、支払い元がちゃんとしている所に損害請求する方が、ジルベルト卿としても安心するだろう。
ナズナはあたしと手を繋ぎ、それをロドリゲスの二人へ向けた。
「星々が踊り狂う様を目撃せよ。無限の時空を横断し、過去と未来を照らせ」
彼とあたしの周囲に、魔力風が吹き荒れる。
あたしとナズナの魔力回路が、カチリと繋がった。
「無限の輝きを具現化し、我が手に集結せよ。宇宙の至宝を解き放て」
ナズナの詠唱に続いて、あたしも唱える。
彼だけの魔力だけでは出来ない所業だが、あたしの魔力も込みなら、何だって可能だ。
ブワッと、招待客達が影で覆われる。
懐かしい魔力に、あたしは微笑んだ。
来てたんだ。
呼んだのはターニャかな?
何にしても、そこまで気が回らなかったから有難い。
本当、あたしの親友は気がきく。
大好きだよ、カヅキ。
「「星屑の羽音が響き渡り、彼らの輝きは流星の如く降り注ぐ!! 集結せよ!! メテオスウォーム!!」」
魔力風から隕石が現れ、ロドリゲスの二人に降り注いだ。
隕石にぶつかり、二人は式場の外へと吹っ飛ばされる。
発動を止めると魔力風も無くなり、親衛隊の皆は式場の外へと急行していった。
二人を捕らえて、他にも仲間がいないか尋問するつもりなのだろう。
隕石に当たり教会内部がかなり抉れてしまっていたが、それも影が包み込み、引いたと同時に修復されていた。
あたしはその魔力の元へ、念話を飛ばす。
〈ありがとうカヅキ。来てくれているなんて思っていなかったわ〉
〈ふん…祝儀代わりだ。師匠が来いって煩かったもんでな。だから来ただけだ。それと……幸せになれよ、ナツキ。ナズナに泣かされたらすぐに言え。ぶっ殺してお前を私の世界に連れ帰る〉
相変わらず物騒だな、あたしの親友は。
あたしが苦笑いを浮かべると、ナズナは怪訝な顔でこちらを見てきた。
「どうした、シャル?」
「カヅキが来てるの。貴方にあたしが泣かされたら、貴方を殺して自分の世界に連れて帰るって」
それを聞いたナズナは引き攣り笑いをする。
一回、完璧に泣かせる事件が起こるからだろうけど。
忘れなきゃ良いだけなのに。
ジルベルト卿が一つ咳払いをした。
それだけで、あたし達は居住いを正す。
「それでは、指輪の交換を行います」
リングピローを持って現れたのはエルで、彼女は微笑みながらあたし達に声をかけてくれた。
「陛下、シャルさん。ご結婚おめでとうございます。ささやかですが、リューネ国聖女として言祝がせて頂きますね。どうか、お幸せにお過ごし下さいますよう」
そう言い、彼女はリングピローをあたし達の前に掲げる。
「感謝する、エレオノール」
「ありがとう、エル。貴女にも幸福が訪れる事、祈っているわ」
あたしが言葉をかけると、エルはフワリと微笑んだ。
とても嬉しそうに笑ってくれて、あたしも嬉しくなる。
ナズナがピローから指輪を取り、あたしの左の薬指に嵌めようとしてきた。
そのデザインを見て、あたしはある事に気が付く。
「これ…」
銀の、何の変哲もないシンプルな指輪なのに、光に当てると金に光ったり、青や紫といった色に変化した。
その色がとても気になり、あたしはナズナを見る。
「気付いたか。俺の髪と瞳の色、お前の髪と瞳の色が出るように配合したものだ。少し苦労したが、上手くいって良かったよ」
あたしの指に指輪を通し、ナズナは笑った。