ナズナの手を取ると引っ張られ、そのまま抱き上げられた。
「ナズナ? どうしたの?」
「いや? こうしたくなっただけだ。シャル。俺の
彼の目が、あたしをとても愛おしいと告げていて、微笑みを返す。
「大丈夫よ、あなた。あたしは何処へも行かないからね」
「あぁ、ずっと傍にいてくれよシャルロット」
親衛隊もメイドも、招待客も。
誰もいなくなった披露宴会場で、あたし達はキスをした。
◆◆◆
ナズナと二人きりで食事をし、一旦別れる。
これから初夜だと思うと緊張してしまい、あたしはメイド達に念入りと言えるほど体を磨かれてしまった。
「あの…この下着大丈夫かしら…」
「大丈夫ですよ、王妃様。自信を持ってください」
セクシーといえる感じの下着を身に付けさせられ、おろし立てのネグリジェを着せられる。
恥ずかしくて、絶対ナズナの顔見れないんだけど。
ターニャからは、男性に任せれば良いのです、なんて言われたけれど。
パニックになってナズナに手を上げないか心配になって来た…。
「雛桔梗…」
【了解致しました、我が主。完全にリミッターをかけさせて頂きます。それと、次に呼びかけられる時までシャットダウンしておりますので、どうぞご存分にお楽しみ頂きますよう】
雛桔梗?!
ガチリと頭の中で鍵がかかる感覚がして、少し怠さを覚える。
ちょっと待てと叫んだけど、雛桔梗は宣言通りうんともすんとも言わなくなった。
そうこうしている内にナズナの寝室前まで着いてしまって、あたしは緊張で扉をノックする事も出来なくなってしまう。
まぁ、代わりにルーティが叩いたわけなのだが。
そして、あたしの代わりに扉を開けて中にあたしを押し込める。
「ちょっと、ルーティ?!」
「ご武運を、お嬢様。奥様に早く孫の顔、見せてあげてくださいね」
そう言って、彼女は扉を閉めてしまった。
アワアワして扉を見つめているあたしに、中にいたナズナがクックッと笑い始める。
「シャル、お前…そんなに慌てる事ないじゃないか…くっ…ぶふ…っ!!」
「あまり笑わないでもらえないかしら、あなた…」
別に、寝室を共にするのは初めてじゃない。
寮の部屋では、一緒に眠っていたのだから。
でも、今あたし達は夫婦なわけで。
今、初夜を迎えているわけで。
思い出して顔を真っ赤に染め、あたしは扉にしがみつくようにして、目を閉じた。
ナズナはそんなあたしを見て一通り爆笑した後、座っていたベッドから立ち上がる。
カチリ、と音がして部屋が暗くなった。
「シャル…」
ナズナがあたしを後ろから抱きしめてくる。
緊張して体を硬くしているあたしに、彼は苦笑したようだった。
「シャル。初めて会った時から、お前が好きだった。お前に告白して、想いに応えてもらえて嬉しかった。そして今、夫婦になれた……シャルロット。怖いなら、お前が大丈夫と思うまで手は出さない。制限は無くなったが、お前に恐怖を与えてまで抱きたいとは思わないんだ。今日はただ眠るだけにしよう? な?」
あたしは目を開け、暗闇の中ナズナを見る。
彼は優しげに微笑み、頭を撫でてきた。
スッ、とあたしから手を離したナズナに追い縋るように、彼の服を掴んでしまう。
「シャル?」
「ちょっと…ちょっと、怖いだけなの。貴方に抱かれるの、嫌なわけじゃなくて…っ!!」
分かってるよ、とナズナはあたしが握っている手に自分の手を重ねて、少し困ったように笑っていた。
優しい人を困らせていると、感じる。
あたしは口を引き結び、羽織っていた上着を脱いだ。
困らせるなら、とことん困らせてやる。
それが、夫婦になったという事だから。
「シャル、無理はしなくて良いと…」
「無理はしてない。何が怖いだ篠原夏月。次期総帥の女が、何を怖がる事がある…っ!!」
パンっ、とあたしは自分の両頬を叩いた。
それに対して、ナズナは本当に困ったような顔をする。
「お前、もうナツキじゃないだろ…」
「良いの!! 気合い入れるためだから!!
……はぁ……ごめん、ナズナ……こんな女だけど…抱ける?」
あたしは彼を見つめた。
無言であたしを抱き上げ、ナズナはベッドに寝かせてくる。
「…無理だ、嫌だって言われたって…止まらないからな」
「…はい、あなた…その…優しくしてね? あたしを、貴方の女にして…?」
暗闇の中で、あたし達は一つになった。
カーテンから差し込む月光を見て、あたしはナズナに言う。
「ねぇ、あなた……月が、綺麗よ……」
「あぁ、シャルロット…お前の為なら、死んでも構わない…!」
吾妻ノ国で交わした会話を、覚えてくれていたらしい。
あたしは幸せで涙を流しながら、彼に溺れていった。
◆◆◆
次に目を覚ました時には陽が高くなっていて、あたしは今何時だとサイドテーブルに手を伸ばす。
そこにあるはずの時計がなくて、あれ? と薄目を開けた。
「ここ、何処…」
声が掠れていて、更に疑問を覚えた所で背後から抱きしめられる。
素肌の感触に、昨夜の事を思い出したあたしは慌てた途端床に落ちた。