「いっ…!!」
「…何やってるんだ、シャル…」
あたしの上からシーツを被せ、ナズナは眠そうに瞼を擦りながら起き上がる。
大きな欠伸をしつつ、彼はあたしを見た。
「お、おはよう…」
「おはよう。で、なんで床に落ちてるんだお前」
シーツを頭から被って、あたしは床に座り込みながらナズナを見上げる。
逞しい胸板を見てまた昨夜の事を思い出し、顔を真っ赤に染めたあたしは、シーツに包まって蹲った。
その様子に、ナズナはクックッと笑い出す。
「お前…昨日あんなに啼きまくってたくせに…」
「うっさい!! 言うな!! このデリカシー皆無馬鹿!! 絶倫!!」
何回しても満足しない貴方に付き合わされた、あたしの身にもなれ!!
まだクックッと笑っていたナズナだが、ベッドから降りたようで、次いで衣擦れの音が聞こえた。
「…ナズナ、何処いくの」
妻を置いて、何処に行くのかしらこの人。
シーツから顔を覗かせると、ナズナはもう上の服も着ていて、あたしに苦笑した。
「仕事だ。お前はまだ体が辛いだろう? 今日はゆっくり休め。夕方には戻ってくるから」
あたしの傍に来て屈みつつ、彼は頭を撫でてくる。
いや、確かに腰も足も痛いですけど。
「一日、傍にいてくれないの?」
「すまんな、シャルロット。俺の愛しい君。だが、王の仕事は一日でも休めないんだ。もし回復したら、執務室に来ると良い。お前ならいつでも歓迎だからな」
そう言ってナズナはあたしを抱き上げ、ベッドに座らせてくれる。
頭にキスをした後、彼は寝室を出て行った。
「………」
なんだっけ、なんとかトークってやつ。
あれすらないの?
え?
ナズナに言われたのか、メイド達が入ってきてあたしを立たせ、お風呂やら何やらをやってくれる。
その間、あたしはボーッとしてしまっていたが。
お部屋に帰ってきて、朝ご飯を食べている最中に思わず叫んでしまった。
「いや、何でよ?! 一応新婚なんですけど?! 一日くらい甘く過ごしたって、バチ当たんないんじゃないの?! ナズナって仕事馬鹿だっけ?! あれか?! 釣った魚に餌やらないってやつ?! はぁ?!」
「王妃様、落ち着いて下さい…」
ルーティはそう言うが、ちょっと腹の虫が治らない。
少し抗議してくると、朝ご飯を食べ終わった後にブリジットさん達を伴い、あたしはナズナの執務室へ行く。
「陛下、ちょっとお話が」
「ん? どうした、シャル?」
ナズナは書類を睨んでいたようだが、あたしが来た事でその眼光が緩くなった。
ブリジットさん、及びナズナの護衛役として部屋の中にいたニーナ隊長達は、空気を読んで退室する。
「貴方、事後なのにそっけないのではなくて? 仕事云々は言いたく無いけれど、あの有名なセリフを言うわ…あたしと仕事、どっちが大事だって言うのよ貴方は?! 新婚なんですけど?! もう少し甘い時間というものを作ろうとは思わないの?!」
「え…仕事とお前なら、お前だが…」
じゃあ、ちょっとは甘やかしなさいよ、とあたしは彼の頭を殴った。
ただ、雛桔梗が完全にリミッターをかけてくれているおかげか、ナズナの頭がへこんだりはしなかったが。
「いっ…! あー…すまなかった、シャルロット。これを片付けたら、お前との時間を作ろう。そうだな…新婚なんだもんな、俺達。うん、妻を寂しがらせるのは、夫としては最低だった。許してほしい」
「全くよ。あんまり放置するなら、あたし実家に帰りますからね!」
それは困る、とナズナは言い、さっさと片付ける為に書類に向き直り始めた。
あたしは応接用のソファーに腰掛け、ため息をつく。
そんなあたしを見てか、ナズナが問いかけてきた。
「シャル、体辛くないか?」
「あたし転生者よ? あれくらいすぐに回復するに、決まって…」
あたし今、物凄い失言しなかったかしら。
恐る恐るナズナの方を見ると、彼は書類に走らせていたペンを止め、こちらをニヤリと笑って見ていた。
「ほう? すぐ回復する、なぁ…」
「いや、ちょっと待って?! だからって流石に毎晩はちょっと…!!」
俺は何も言っていない、とナズナから返され、ムッとなる。
絶対そう思っていただろうに、あたしだけがそう考えているとか思われるのは癪だ。
「あ、そう? なら、あたしの気分が乗った時にだけ貴方の相手をするわ。お仕事の邪魔をして申し訳ありませんでした、陛下。あたしはこれで失礼しますね?」
ニコリと笑い、あたしは立ち上がる。
そんなあたしを見て、ナズナは慌て出した。
「ちょ、待ってくれシャルロット!! 俺が悪かった!! お前が大丈夫なら毎晩抱きたい!!」
「大声で言うな馬鹿!!」
あたしはナズナの頭をまた叩く。
彼は自分の頭を押さえ、涙目になりながらあたしを見上げた。
「シャ、シャル…」
「そんな情けない声出さないでよ、ナズナ…もう…貴方ちゃんと王様出来る?」
お前がいてくれたらと、ナズナは言う。
全くこの人は仕方がない人だ。
あたしを愛して溺れて…あたしも同じだけれど。
そんな彼と共に歩む。
未来は不確定だけれど、あたしはナズナと共に進めるのなら、何も怖くはないと思った。
『転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!』
これにて完結でございます。
後は番外編を書いて
終わりたいと思います。
次回作、と言っても
この作品と同じくらい話数が出ている
彼女の息子のお話も
宜しければご覧ください。
そこにもなっちゃんは出てますしね。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。