転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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32.過去の記憶です

「は? どこがだよこのくそば…いだだだだっ!!」

 

夏月(かづき)の軽口に、長谷川が関節技をきめ始める。

 

「お嬢様の御前(ごぜん)で、その口の聞き方はなんです」

「もう。(じゃ)れてないで行こう?」

 

私は二人を伴って、屋敷の食堂へ赴く。

道中、妹の真子(まこ)出会(でくわ)した。

 

「お姉様、おはようございます。今日もいい天気ですわね」

「午後から雨になるそうよ。雨に濡れてはいけないから、傘を持って行ったらいかがかしら? 真子」

 

ニコリと笑むのだが、真子の顔がみるみる険しくなっていく。

 

「お姉様って、いつもそうですわね。嫌味ばかりおっしゃって。夏月(かづき)さん、お姉様がお嫌になったらいつでも私の所に来ていただいて良いんですのよ?」

 

世間話をしただけなのに、どうしてこうも我が妹は姉を毛嫌いするのだろうか。

私の方は、別に貴女を嫌ったり等していないのに。

まぁ、夏月(かづき)にご執心なのだから仕方ないといえば仕方ないのだろうけど。

 

姉妹喧嘩なので、長谷川は口を出してはこない。

矛先を向けられた夏月(かづき)は、ないない、と手でジェスチャーする。

 

「朝ご飯に遅れてしまうわ。お父様とお母様をだいぶ待たせてしまっているかもしれないし、行きましょう?」

「ふん!」

 

真子は私の方を見ずに、そのまま歩いて行ってしまった。

歩き方が粗暴で、傍付きのメイドがチラチラと長谷川の方を見ている。

長谷川はこの篠原家のメイド長であり、教育係でもあるのだ。

真子のあの歩き方は、篠原家の人間にとってはよくない。

その事を分かっているから、メイドは恐怖を顔に張り付けながら真子の後を追う。

 

「後で躾直さなければなりませんね」

「それはメイドの方ですか、お嬢様の方ですか?」

 

夏月(かづき)がまた、余計な事を長谷川に聞いた。

彼女はニコリと微笑み、彼に問い返す。

 

「どちらかなど、愚問でしょう?」

「…さーせん」

 

冷や汗を流しながら、夏月(かづき)は目を逸らした。

長谷川のあの顔がトラウマになるくらい怖いのなら、余計な事は聞かない方が身のためだというのに。

そこは身につかないのかしら、と歩を進めながら思った。

 

食堂に着くと、奥の上座に父と母が座っている。

恰幅のいい父と、いつも着物を身につけている綺麗な母。

それとお父様の護衛役であり、夏月(かづき)の父親の要龍久(かなめたつひさ)と、もう一人。

私達と同い年か、少しくらい下の年齢かと思われる男の子がいた。

真子はもう席に座っていて、私の方を睨みつけている。

 

私は入り口でスカートの裾を摘み、カーテシーをした。

 

「おはようございます、お父様、お母様」

「うむ、おはよう夏月(なつき)

「おはよう夏月(なつき)。今日も所作が美しいですね。それに比べて、真子。貴女は姉を敵視する前に、自分の所作を見直しなさい。みっともないったら」

 

どんな感じで食堂へ足を踏み入れたのかしら、あの子…。

お母様に怒られているところを見ると、相当乱暴に入ってきたのかしら…。

 

「お父様、質問してもよろしいでしょうか? 要の隣にいらっしゃる方は、どなたでしょう?」

「おぉ、紹介するのが遅れたな。うちの子会社である、宮塚製薬の一人息子でな。名を麻人という。うちで修行して、立派な社長になりたいと言ってきてな。私はそれを快く引き受けたのだ」

 

食事の席だというのに、お父様は葉巻を嗜んでいる。

煙たいったらありゃしないのに、誰も文句は言わない。

篠原家財閥の総帥であり、絶対君主な父に誰も逆らえないのだ。

 

私はニコリと微笑み、わかりましたと一言だけ言うと席へ進む。

夏月(かづき)が席を引いてくれ、私は食卓へとつく。

 

「今日から執事見習いで我が家に住む事になる。夏月(なつき)、目をかけてやれ」

「承知しました、お父様」

 

父の言葉に、私は頷く。

 

多分、この頃から私の死へのカウントダウンが始まっていたのだろうと思う。

 

 

七月。

私は長谷川の言葉に呆然としていた。

 

夏月(かづき)が…亡くなった、ですって…?」

「はい、お嬢様」

 

宿題を片手間に、家の経営状況を見ている最中での報告だった。

次期総帥である私は、この頃から経営の教育を受けている最中で、この時も推移を見ていたのだ。

そこにこの報告である。

まさに青天の霹靂とはこの事だと思った。

 

夏休みに入り、家にいる事が多くなった私に代わり、夏月(かづき)は外へ行く事が多くなった。

まぁ、私に付き従っているから趣味の時間も自由時間もなかったはずだし、良い事だと思っていたのに。

 

「なんで…」

「子供を庇って、トラックに轢かれたそうだと…」

 

夏月(かづき)らしい、と思ってしまう。

子供に関して、彼は優しい人だった。

流石に躾のなっていない子供は嫌いだ、とは言っていた気がするが。

 

「そう…」

「要の母親から、お嬢様にと」

 

黒い皮造りの日記帳が渡される。

とても良い材質で、私は長谷川に尋ねた。

 

「これは?」

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