「要の部屋にあった日記帳達です。遺品整理をしていたら出てきたと。中身を見てお嬢様に持っていただくべきだ、とお伺いしています」
表紙を捲る。
魔法陣がどうのとか、隠されし力とか。
しかし、日記帳の数冊目あたりから私の事が書いてあった。
幼い頃の私の様子だとか、小さい手ながらにナイフとフォークを使いこなそうと頑張っているとか。
貴方は私の父親か何かなのかしら、と読み進めていると、今度は中学校の入学式の話になった。
そこには、
他の男が近付くのは気に食わない。
好きだ。
愛している。
そこまで読んで、私は大粒の涙を流した。
「お嬢様…」
ずっと、黙って見守ってくれていた長谷川が声をかけてくる。
私は嗚咽を漏らしながら思った。
なんて、なんて愚かなの、私は。
貴方がいなくなってから、この気持ちに気付くなんて。
「私、わたし、
日記帳を抱きしめながら嘆く。
そんな私を、長谷川は抱き締めてくれた。
学校での彼の友達や親族がいる中、私は雨が降る外でその様子を眺めていた。
彼の遺体を見たら、もう彼が戻ってこない事を自覚しそうで。
頭ではわかっているのに、心がわかってくれない。
これでは、次期総帥失格である。
「お嬢様、風邪を引いてしまいます」
ずぶ濡れの私に、傘が差された。
横を見ると、長谷川ではなく宮塚が立っている。
長谷川は確か、要の手伝いに行ってて。
彼女の目を盗んで、私は外に佇んでいたのだ。
「結構よ、宮塚。私は、こうしているのが好きなだけ」
この雨が、私の悲しみも流していってくれたらいいのにと、そう思っているのだから。
「やっと邪魔者がいなくなったのに、お嬢様の心はあいつのものなんですね」
宮塚が何かを呟く。
しかし雨の音で、私の耳にまでその言葉は届かなかった。
「何か言ったかしら?」
「いいえ。お嬢様、長谷川さんがもうそろそろお戻りになるかと思います。中に入って、お召し物を変えましょう」
宮塚の方を見ると、私に傘を差している彼の方がずぶ濡れになっている。
「宮塚はおかしいわね。私に対して風邪をひくと言っているのに、あなたもずぶ濡れじゃない」
「お嬢様が濡れずに済むのなら、いくらでもこの身を濡らしましょう」
献身的な態度だけれど、今の私には届かない。
「ありがとう、宮塚」
礼を言って、私は建物に戻る。
だから、気付かなかった。
彼の顔に浮かぶ、歪な笑顔に。
私は息苦しさに目を覚ました。
外はもう雪の気配があって、夜半にかけて
「………っ!」
息を吸おうとして、困難な事に気付く。
私の上に誰か乗っていて、首には暖かな感触。
誰…?
天蓋のカーテンに、月明かりが差し込む。
その明かりは、私の上に乗っている誰かを照らし出した。
「みや、づか…?」
そんな彼が、どうして?
「お嬢様、なぜ私を選んで下さらなかったのですか? 貴女のお父上に、次の婚約者は私が良いと仰って頂ければ、私もこんな事をせずに済みましたのに」
彼が何を言っているのかわからない。
そもそも、婚約者がいたという
「なに、いっ…」
「だから、あいつも殺したというのに。こんなにお嬢様の事を想っているのに。あいつよりもあいつよりもあいつよりも!!!」
宮塚の手に力が入り、私の呼吸が浅くなっていく。
「み…や…」
「雑踏に紛れて、子供を車道に押し出したんですよ。あいつの目の前で。驚いた顔をしてましたが、直後大型トラックに轢かれましてね。私を睨みながら、あいつは息を引き取りました。いやぁ、笑いが込み上げそうになるのを必死に我慢しましたとも!」
宮塚の話に、私は驚愕の表情を浮かべていただろう。
なんで、どうして?
そこまで
「どう…して…」
「どうして? あいつがお嬢様の周りを
ここで1話冒頭の前書き部分回収できましたー
よかったー