転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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33.悪夢のような現実です

「要の部屋にあった日記帳達です。遺品整理をしていたら出てきたと。中身を見てお嬢様に持っていただくべきだ、とお伺いしています」

 

表紙を捲る。

夏月(かづき)の丁寧な字が、1ページ1ページ書かれている。最初の方は何を書いているかわからなかった。

魔法陣がどうのとか、隠されし力とか。

しかし、日記帳の数冊目あたりから私の事が書いてあった。

幼い頃の私の様子だとか、小さい手ながらにナイフとフォークを使いこなそうと頑張っているとか。

貴方は私の父親か何かなのかしら、と読み進めていると、今度は中学校の入学式の話になった。

 

そこには、夏月(なつき)は可愛くなった、と書かれている。

 

夏月(かづき)の気持ちが、つらつらと書かれていたのだ。

 

夏月(なつき)を見ていると、可愛くて仕方ないと思う。

他の男が近付くのは気に食わない。

夏月(なつき)を俺だけのものにしたい。

好きだ。

愛している。

 

そこまで読んで、私は大粒の涙を流した。

 

「お嬢様…」

 

ずっと、黙って見守ってくれていた長谷川が声をかけてくる。

私は嗚咽を漏らしながら思った。

 

なんて、なんて愚かなの、私は。

貴方がいなくなってから、この気持ちに気付くなんて。

 

「私、わたし、夏月(かづき)の事、好きだった…! 愛してた!! なんで、気付くのが遅かったの……っ?! ぅわぁぁぁぁぁ…っ!!」

 

日記帳を抱きしめながら嘆く。

そんな私を、長谷川は抱き締めてくれた。

 

 

夏月(かづき)のお葬式。

学校での彼の友達や親族がいる中、私は雨が降る外でその様子を眺めていた。

彼の遺体を見たら、もう彼が戻ってこない事を自覚しそうで。

頭ではわかっているのに、心がわかってくれない。

これでは、次期総帥失格である。

 

「お嬢様、風邪を引いてしまいます」

 

ずぶ濡れの私に、傘が差された。

横を見ると、長谷川ではなく宮塚が立っている。

長谷川は確か、要の手伝いに行ってて。

彼女の目を盗んで、私は外に佇んでいたのだ。

 

「結構よ、宮塚。私は、こうしているのが好きなだけ」

 

この雨が、私の悲しみも流していってくれたらいいのにと、そう思っているのだから。

 

「やっと邪魔者がいなくなったのに、お嬢様の心はあいつのものなんですね」

 

宮塚が何かを呟く。

しかし雨の音で、私の耳にまでその言葉は届かなかった。

 

「何か言ったかしら?」

「いいえ。お嬢様、長谷川さんがもうそろそろお戻りになるかと思います。中に入って、お召し物を変えましょう」

 

宮塚の方を見ると、私に傘を差している彼の方がずぶ濡れになっている。

 

「宮塚はおかしいわね。私に対して風邪をひくと言っているのに、あなたもずぶ濡れじゃない」

「お嬢様が濡れずに済むのなら、いくらでもこの身を濡らしましょう」

 

献身的な態度だけれど、今の私には届かない。

 

「ありがとう、宮塚」

 

礼を言って、私は建物に戻る。

だから、気付かなかった。

彼の顔に浮かぶ、歪な笑顔に。

 

 

夏月(かづき)がいなくなって、数ヶ月。

私は息苦しさに目を覚ました。

外はもう雪の気配があって、夜半にかけて(みぞれ)になると天気予報で言っていた。

 

「………っ!」

 

息を吸おうとして、困難な事に気付く。

私の上に誰か乗っていて、首には暖かな感触。

 

誰…?

 

天蓋のカーテンに、月明かりが差し込む。

その明かりは、私の上に乗っている誰かを照らし出した。

 

「みや、づか…?」

 

夏月(かづき)が亡くなってから、何かと私を気にかけてくれていた彼。

そんな彼が、どうして?

 

「お嬢様、なぜ私を選んで下さらなかったのですか? 貴女のお父上に、次の婚約者は私が良いと仰って頂ければ、私もこんな事をせずに済みましたのに」

 

彼が何を言っているのかわからない。

そもそも、婚約者がいたという事柄(ことがら)さえ、話には聞かされていたが当の本人に会った事すらない。

 

「なに、いっ…」

「だから、あいつも殺したというのに。こんなにお嬢様の事を想っているのに。あいつよりもあいつよりもあいつよりも!!!」

 

宮塚の手に力が入り、私の呼吸が浅くなっていく。

 

「み…や…」

「雑踏に紛れて、子供を車道に押し出したんですよ。あいつの目の前で。驚いた顔をしてましたが、直後大型トラックに轢かれましてね。私を睨みながら、あいつは息を引き取りました。いやぁ、笑いが込み上げそうになるのを必死に我慢しましたとも!」

 

宮塚の話に、私は驚愕の表情を浮かべていただろう。

 

夏月(かづき)が亡くなったのは、この人のせい…?

なんで、どうして?

そこまで夏月(かづき)が、貴方は憎かったというの?

 

「どう…して…」

「どうして? あいつがお嬢様の周りを彷徨(うろつ)いていたからですよ。だから、私はお嬢様に愛を囁きに行けなかった! 私の方が、お嬢様の事を愛しているのです。この世の誰よりも! あいつよりも! だからお嬢様、私と共にいきましょう? 何も問題はありません。私、口は上手いのです。貴女のお父様も、私が説き伏せましょう。貴女がイエスと言ってくだされば直ぐにでも!」




ここで1話冒頭の前書き部分回収できましたー
よかったー
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