転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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35.過去と決別します

「お嬢様、私と踊っていただかないと困ります。他の男に現を抜かしている場合ではございません」

「奴が魔王か」

 

ナズナが腰に下げていた剣を抜こうとする。

しかしあたしは、彼の腕を掴んで止めた。

 

「シャル?」

「全部思い出したの。後で話すけれど、あたしはあいつに殺された。だから、あいつに手を下すのはあたしでなくちゃいけないの。これは譲れない、わかってナズナ」

 

あたしの真剣な目に、ナズナは驚いた顔をした後表情を和らげ、頭を撫でてきた。

 

「無事に戻れ、シャル。これは命令だ」

「仰せのままに、あたしの殿下」

 

あたし達の様子に、宮塚は我慢がならなかったようだ。

突如激昂し、ナズナに斬りかかってくる。

 

「親しげに、お嬢様に触れるんじゃない!! お嬢様に触れていいのは、私だけだ!!」

「誰もお前に触れさせる事を許可した覚えはない。分を弁えろ、宮塚麻人。お前の前にいるのは、篠原財閥次期総帥である、篠原夏月だ。頭が高いんだよ馬鹿野郎!!」

 

左からの攻撃へ、レヴィが対応してその剣先を止めた。

動きが一瞬止まった所へ、あたしは宮塚へと唐竹割を見舞う。

それだけでは飽き足らず、粉微塵になるまで攻撃の手を緩める事はなかった。

 

「お嬢様…おじょうさま…おじ…う…ま」

 

宮塚は何度もあたしを呼ぶが、あたしが応えてやる謂われはなかったので、黙っていた。

むしろ嫌悪感が増すだけなので、早く黙って欲しい。

 

「あい…して…」

「お前の事など、永劫思い出す事はない。虫唾が走る。疾く消え失せろ、塵にも満たない獣めが」

 

あたしがそう言うと、宮塚の魔力が霧散した。

雛桔梗に宮塚のパラメーターを見ててもらっていたが、生存反応が消えた事で、ようやく戦いが終わった事を悟る。

 

宮塚、思い出させてくれてありがとうと言うべきかしら。

でも、あなたは生涯許さない。

もう二度と貴方との記憶は思い出さないから。

 

ふっと体の力が抜けた。

魔力も気力も全て使って相対していたから、当然と言えば当然である。

倒れる寸前、ナズナが抱き止めてくれた。

 

「ごめ、ありがとう…」

「シャル、よくやった」

 

後ろから抱き締められ、あたしは彼の頭を撫でる。

癖一つない、絹糸のような髪に羨ましいと思うと同時に、今あたしもこの髪質かと思い直った。

 

前のあたしは癖っ毛で、髪の先がすぐ跳ねるから長谷川達のお手入れが欠かせなかったのだ。

今はそんなお手入れしなくても、髪はサラサラだし、直毛だから跳ねるのを心配する必要はない。

 

「ナズナ、ごめん…意識飛びそう…」

「あぁ。安心して眠るといい」

 

頭頂部にキスを落とされ、何やってんのこの人と思った瞬間、意識が暗転した。

 

◆◆◆

 

再び目を開けると、見慣れた天井が広がっていた。

 

「…帰ってきたんだ」

「そうだぞ、我が主」

 

横に顔を向けると、気難しそうな顔でレヴィがあたしを見ている。

 

「ありがとう、レヴィ。貴女がいてくれたおかげで、あいつに勝てたわ」

「ふん。あんな小童、妾一人でも対応出来たわ。我が主が出る幕でもなかったと言うのに…」

 

どうやら、倒れて心配をかけてしまったらしい。

あたしは起き上がり、レヴィの頭を撫でた。

 

「何をする」

「心配かけてごめんね」

 

あたしが謝ると彼女は、ふんっ、といって顔を背ける。

 

「別に心配などしておらぬわ。魔力の供給源がなくなるのは、妾にとっても困るでな」

【おはようございます、我が主。三日三晩眠っておられました。その間、レヴィが付きっきりで看病していたのですよ】

「言うでない、ヒナ!」

 

いつの間に仲良くなったのか、レヴィは雛桔梗の事を愛称で呼んでいる。

きっとあたしが寝込んでいる間だな、うん。

 

「あたしが寝ている間、誰か来た?」

【ナズナ様とユキヤ様、カナリア様と親衛隊の方々のみです】

 

取り敢えず、あの陛下は来てなくて良かったと思った。

今思えば、宮塚よりもあの人はまだまともだと言えるだろう。

寝込みを襲ってこないだけ、だが。

 

コンコン、と扉がノックされる。

レヴィが扉の前まで行き、大きく開けた。

 

「レヴィ、せめて誰が来たか確認してから…」

「シャル!」

 

レヴィの横を駆け抜け、大きな体躯があたしを抱き締める。

力強さに少し息苦しさを感じるが、それもあたしを心配しての事だと思い、あたしは彼の背中を撫でた。

 

「ごめんね、ナズナ。おはよう」

「全く…あまり、心配させるなシャル」

 

あたしの髪に顔を埋めてくるナズナに、あたしは微笑む。

 

本当に、雇われているだけの平民に、とても優しい人だ。

こんな人が王様になってくれたら、この国はもっと素晴らしいものになるだろう。

 

「ナズナ、話さなければいけない事があるの。この体勢だと話し辛いわ」

 

あたしがそう言うと、ナズナは体を離してくれた。

いつの間にかレヴィが椅子を持ってきてくれていたようで、彼はそれへ座る。

 

「魔王の前で言っていたな。全て思い出したと。話してくれるか?」

「えぇ。でも、その前に」

 

あたしはベッドの縁に腰掛け、ナズナに頭を下げた。




お休みいただいて
その間ほぼずっと書いていたら
とんでもない話数になってしまい
スクロールするのが大変になってしまったんですが
どれくらい公開したら
皆さん喜ぶんですかね…
そして長文過ぎて
改行してみてますが
見やすいですかね…
金曜日からまほよコラボらしいので
その間書かなくなるんですけどね笑
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