転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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37.変なお嬢様に突っかかられました

ノーム3の月。

日本の六月に相当する、少し夏の気配がしていた朝。

 

あたしは、後ろからナズナに抱きつかれながら、魔法を使って朝ご飯の調理を進めていた。

 

別に魔力は無限だから疲れる事はないのだけど、宮塚を殺してから、ナズナが過保護になった気がする。

 

普通逆だと思うんだけど。

貴方、自分が護衛対象だって自覚あるの?

 

「ナズナ、朝ご飯できたから離れて」

「わかった」

 

聞き分けは良いので、素直にあたしから離れて食卓につく。

魔法で皿とかを浮かしながら、テーブルに料理を並べていった。

すごく簡単なもので悪いのだが、食材とかを買いに行く時間がなかったのだ。

ナズナが、ユキヤ君が引くほどあたしにベッタリになってしまったから。

 

流石に僕でも、と引き気味に言ったのはつい最近の事だ。

 

「あのね、ナズナ。流石に、今日はちゃんとお買い物行きたいのだけど」

「問題ない。荷物は持とう」

 

持ってくれるのはありがたいけど、その際手を繋ぐ必要はあるのだろうか?

片手が塞がってしまっては、襲撃があった際守れないじゃないの。

 

そんな事を言ったところで、ナズナは譲ってくれないので、あたしは今日も諦める他なかった。

 

婚約者ができた時、困るのは貴方なのに。

 

そう思いつつ、学校に着いた途端。

 

「シャルロットさん! (わたくし)と勝負してくださいまし!!」

 

教室の前で、そんな事を言われた。

多分隣のクラスだろう金髪の女生徒が、あたしに向かって手袋を投げてくる。

彼女の取り巻きが、あたしを見てクスクスと笑っていた。

 

馬鹿にされてるんだろうな、とはわかる。

手袋を投げるのは、決闘の証なのもわかる。

でもそれを、王族であるナズナの前で行う度胸は、すごいというか逆に馬鹿なのか、とは思うが。

 

「アンコール、何をやっている」

「ご機嫌よう、ナズナ殿下。私はただ、殿下に身の程知らずな想いを寄せているシャルロットさんに、現実を教えて差し上げようとしているだけですわ」

 

ほほほ、と扇子を仰いでアンコールと呼ばれた女子生徒は笑う。

あと、身の程知らずな想いとはなんだ。

あたしがナズナに懸想した事は、一度もないはずだが。

この人がナズナの表情の変化に気づかないのは、いささか問題がある気がすると思うのだけど。

 

あたしはナズナの方をチラリと見る。

 

眉が若干寄ってる。

すーごい不機嫌だ、これ。

 

「殿下、どなたですかこのご令嬢は」

「アンコール・トワネット。下流貴族の出の令嬢だ。お前の噂は、こいつの領地に、まだ、届いていなかったらしい」

 

まだ、の部分を強調してナズナは言う。

 

あたしの質問に答えてくれるのはいいのだが、言葉に険が含まれて来てて、もうそろそろ彼がキレそうだと思った瞬間、予鈴が鳴った。

 

助かった…。

 

「また来ますわ! その時は勝負いたしますわよ!」

「あ、手袋…」

 

アンコールさんが、手袋をそのままに教室へ帰ろうとしていた。

ついつい拾ってしまってから、あ、と思った瞬間。

 

「拾いましたわね! 放課後勝負しますわよ! まぁ、勝つのは私ですけれど!!」

 

高笑いをしながら、彼女は教室へと去っていった。

どうしよう、と途方に暮れていると、隣から盛大なため息が聞こえる。

 

「シャル…」

「ごめん…ついうっかり…」

 

落とし物を拾うのは、日本人の癖だと思う。

しかも落とし主がわかっていて、目の前で去って行こうとしてるのだから、届けようとするのも無理はない。

習慣に近いものがある。

 

「それがシャルの優しさだとはわかるが、お前、変なのに目をつけられるな」

「それは貴方にも言えるでしょう?」

 

変な女ばっかり付き纏われるとか、王太子という身分は本当に大変だ。

早く婚約者を決めればいいのに。

そうすれば、こんな騒動起こらなくなるんだけど。

 

「授業始めるんで、中に入ってもらっていいですか?」

 

数学の先生が、おずおずとあたし達に話しかけてくる。

すみませんと謝って、あたしたちは教室の中へと入った。

 

◆◆◆

 

日中は何事もなくお昼になったが、あのご令嬢がいらっしゃる気配が全くない。

何かしら突っかかられると思っていたのだけど。

 

「放課後の事を考えると、全く休まらないのは何でなのかしらね…」

「シャルが何も考えず、手袋を拾うからだろう」

 

あたし手製のサンドイッチを頬張り、彼はそう言った。

食材が少ないながらに、彩豊かに仕上げたあたしへ感謝してほしいものだ。

 

「まぁ、お前なら負けないだろう。なんせ、魔王を一人で倒した女だからな」

「…それ、褒め言葉になってないから」

 

明らかに、ナズナに敵対心を持っていた王族の面々が学校に通っている間、あたしが近くにいる事で彼に近寄らなくなったのが良い証拠だ。

あんなにやっかみの手紙や、学校にいる人達はつっかかって来てたというのに。

それこそ、あたしが魔王か何かだと思われている節もある。

 

「そうか?」

「そうよ。女がそれで得意げになるなんて、思わない事ね。それこそ、女心がわかってないって思われて終わりだわ。未来の婚約者様が可哀想」

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