自分で作った、サーモンとクリームチーズのサンドイッチを頬張る。
ちなみに鮮度は、創造魔法で作った[時魔法]で止めていたから、作った時のまま瑞々しい。
「今はまだ喪が明けていないからな。婚約者の話は一年後くらいになるだろう。まぁ、婚約者候補に名乗り出てくる家は多数いるだろうが」
それはそう。
王太子に婚約者がいないなど、体裁が悪い。
そこら辺を気にする陛下なら、そう思っていて間違いないだろう。
「ナズナが好みそうな女性か…。まずは驕り高ぶらない、散財はしない、可愛らしいは前提だと思うのよね。あとは…」
「芯が通ってて、自分の意見を持っている女だな。背は高い方がいい。後可愛い系より美人系の方が好きだ」
そんな条件の女性、リューネ国内探しても一握りしかいないんじゃないの?
雛桔梗のデータベースを充実させる為に、方々へ偵察用ドローンを放って情報を集めたりしていた。
一応検索をかけるが、条件に当てはまりそうな人はやはり一握りしかおらず。
本来ならナズナと婚約できる立場じゃない人…平民の人達の方が、そういう系統が多い気がした。
働き者の方が好きな感じだものね、この人は。
王太子ではなく、順位も低ければ市井に下ったのかしら、ナズナは。
なんて妄想に耽る。
一応あたしもそれには当てはまるけど、彼の専属護衛という立場だ。
夏休みに入ったらあたしはテスタロッサ家の養女になる。
ナズナの立場と近くはなるけれど、婚約者に名乗り出ようとは思わなかった。
それに、あたしは彼に会いたかった。
その為に、この髪色と眼の色にしてもらったのだから。
まずはリューネ国内を探してみて、いなかったら隣の国かな。
最終的に全国を探して、いなかったら諦めよう。
領地経営がどんなものかはわからないが、そこは学べばいいだろうし。
ナズナには、休みの度に長期休暇をもらって…カナリアに後任せればいいかな。
「ご馳走様でした。放課後、決闘が終わったら買い物に付き合ってね?」
「わかってるさ」
あたしの頭を撫でてくるナズナの手が心地良かった。
◆◆◆
「逃げずによく来ましたわね、シャルロットさん!!」
アンコールさんは、結構太めの鞭を持って訓練場であたしを待っていた。
そういえば決闘するとか何とか言っていたけど、場所は聞いていなかったので、昼休みが終わった後聞きに行ったのだ。
そこで指定されたのが、ここというわけ。
「まぁ、お約束したわけですし…」
あたしは面倒くさそうに答える。
後方では腕を組み、微笑を湛えているうちの雇い主。
触れ回ったわけではないのに、見物の生徒の多い事。
一体どういう状況なのだろうか、これ。
見せ物ではないのだけど。
「貴女の身の程知らずな想いは、
後半に本音がダダ漏れなんですけど、このご令嬢。
要するに、ナズナをかけて勝負しろと言いたいわけだ。
あたしは盛大なため息をついた。
「な、何ですの?」
「殿下、不敬を承知でお尋ねしますけど。この人に暴言吐いて、あたし素っ首叩き切られます?」
ご令嬢を指差し、あたしはナズナに聞く。
指を指すなんて、とアンコールさんは怒ってはいたが今はどうでもいい。
彼は即、首を横に振った。
「首を刎ねるなんて、出来るわけがないだろう。むしろ、アンコールがその立場になる。お前達、よく聞くがいい! ここにいるシャルロットは、魔王討伐を成し遂げた女だ! この夏、テスタロッサ家に迎え入れられることになっている!」
ナズナは大声で、周りにいた生徒にあたしの事を周知しやがった。
そんなの、夏休み明けでもいいだろうに。
「は、はぁ?! テスタロッサ家ですって?!」
21貴族の家門の一つだから、そういう驚き方をするのも無理はない。
ナズナは、アンコールさんに向かって問うた。
「それでもまだ勝負をするというのか、アンコール?」
「勿論ですわ! それに、今はまだ平民の位でしょう? ナズナ殿下に懸想しているのも、気に食わないのですわ!」
その言葉に、あたしは若干イラっとした。
「トワネット嬢、暴言失礼します。 …だーれが、ナズナに懸想しているって言うんだ、この妄想垂れ流し金髪馬鹿令嬢! 大体、そんな性格でナズナに気に入られようとか、気に入ってもらえるとか思ってる時点で、烏滸がましいんだよ!! 周りのお前らもだ! ナズナに媚び諂う暇があるなら、自分の国にどうやって貢献できるか考えろ!! 家の事を考えるのも大事だけど、豊かな国をもっと豊かにするための努力を怠る輩は、あたしがこの場で叩き斬る! あたしが気に食わない奴、前に出ろ! 全て叩き伏せてくれる!!」
片手に雛桔梗を展開させ、あたしは刀を収納魔法から取り出し、抜いてアンコールに向ける。