「きぃぃぃぃっ!! その減らず口、聞けなくしてやりますわ!!」
太めの鞭をしならせ、アンコールはブンブンと振り回し始めた。
適当に振り回しているかと思いきや、その質量で叩き付けられた地面が抉れ始める。
その攻撃があたしの方にも飛んできて、刀で軽く弾き返した。
「おーほほほほほ!!
高笑いをするアンコールをガン無視し、あたしは彼女を観察する。
鞭を振り回しながら、歩く事は可能ではありそう。
後方もカバーしているようだから、背後に回っての奇襲は無理。
上方も然り。
ただ筋力的に、彼女に歩行は難しそうだな。
あの細腕で振り回しているし、足は地面に若干めり込んでいる。
いくら魔武器とはいえ、自分の魔力で作ったものとはいえ、この質量だ。
歩く事さえ困難かも。
元の位置から一歩も動いていないのがその証拠だ。
それに鞭を掴んだ所で、雷魔法で電流を流されたら感電するだろう。
安易に掴む事は出来ない。
今は刀で弾くだけで様子を見るか。
「手も足も出ませんわね? ナズナ殿下、私こそが婚約者に相応しくありません事?」
「シャルの観察力を舐めてかかると、痛い目に合うぞ」
いつの間にか結界が張られていて、周りの観客に被害が行かないようになっている。
ユキヤ君もいる事から、この結界を張ったのは彼だろう。
優秀なんだよなぁ、城に帰ったらオリヴィエさんと離れようとしない所を除けば。
鞭の攻撃が些か早くなってきて、刀で捌ききることが多少難しくなってくる。
所々刃毀れを起こして来ているところから、使用限界が近いのだと推測できた。
「雛桔梗」
【はい、我が主】
若干疲れてきたので、雛桔梗に防御を任せる。
「あら、シャルロットさん。もうへばりまして? 体力無さすぎではありませんこと? そんなのでよくナズナ殿下の専属護衛が出来てますわね!」
「よく廻るお口ですこと。そんなに自分を大きくお見せになって、お可愛らしい事ですわね、トワネット嬢。それに、
煽り文句に煽りで返す。
というか、もうそろそろ鬱陶しくなってきたので対策を考えるとしますか。
きぃぃぃっ! と金切り声をあげている彼女を更に無視して、あたしは考える。
真正面も、背後からの攻撃もダメ。
多分上からミサイルを降らせた所で、彼女にダメージは通り辛い。
爆風で吹き飛ばすのはありだが、それもあの鞭の風圧で掻き消えてしまうだろう。
なら、どうするか。
質量で押し潰せばいい。
外国には、バンカーバスターという、地中貫通型爆弾というものがある。
創造魔法で作った刀は、通常の玉鋼で作ったものと同等。
それが刃こぼれしたという事は、あの鞭の硬さはコンクリート以上硬岩以下。
なら、それをぶつければあのご令嬢は吹っ飛ぶだろう。
「シャル、殺すのは無しだぞ」
ナズナから注意がきた。
あたしの表情が、明らかにアレだったんだろう。
「…ちっ」
思わず舌打ちする。
平和的に解決、できれば無傷でというご注文らしい。
敵には容赦しなくていいと思うのだけど、別にここは戦場じゃないから手加減しろって事なのだろう。
「仕方ない」
あたしはバズーカを創造し、何砲か地面に突き刺した。
発射のタイミングは全て雛桔梗に任せる。
「あら、もう降参ですの? 早かったですわね」
「誰が降参するって言った、金髪馬鹿令嬢。あたしはね、貴女みたいな女嫌いなのよ。自分が偉いと勘違いして、周りに迷惑をかけても問題ないと思ってる勘違い女は。批判されたら、自分ではなく周りが悪いと親に泣きつくクソガキはね。だから、ここで叩き潰す!」
あたしはアンコールに手を向けた。
「地中潜航爆弾、発射!!」
【発射します】
地中を潜って、爆弾がアンコールに迫る。
しかし、彼女はその場から動けない。
動こうとするなら、その鞭の動きを止めなければならず、止めた瞬間爆弾を避けてもあたしから追撃が来る。
八方塞がりとは、この事ね。
「え、ちょ…きゃぁぁぁぁぁあっ!!」
爆弾が接触し爆発を起こす。
アンコールは悲鳴を上げて、その場に倒れ伏した。
ちなみに、爆弾の殺傷能力はゼロに設定してある。
だから爆風をもろに受けて、あのお嬢様は気絶したわけだ。
「さて、シャルが勝ったわけだが…お前達、彼女に何か不満があるか? 不満があるなら名乗り出ろ」
ナズナのその問いかけに、観衆は全員首を横に振った。
◆◆◆
「散々な一日だった…」
寮に帰ってきて、キッチンで夕ご飯用の料理を作りながら、あたしはため息をついた。
ちなみに今日のメニューは、ポトフと白身魚のムニエル、サラダとオーブンで焼いたパンだ。
「そうか? 俺はなかなか充実した一日だったと思うが」
「貴方はそうでしょうよ」
あたしみたいに戦闘があったわけではないのだから。