転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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4.拾われました

「えと、あたし…ちょっと記憶がないと言いますか…」

「まぁ! 記憶喪失なの? それは大変! うちにいらっしゃいな? 大丈夫、悪いようにはしないから」

 

そう言っただけなのに、ハルトくんの母親もとい王妃様が事情を理解してくれる。

息子共々腕を引っ張られ、あたしは諦めた。

 

これは…うん、お言葉に甘えよう。

人の好意は、無碍にしないよう言われていた気がする。

それに、断ったら断ったでハルトくんが泣いてしまうだろうしね。

 

◆◆◆

 

屋敷の一室に案内され、あたしは部屋を見て回ることにした。

この世界は上下水道がちゃんとしているようで、室内にお風呂とトイレがある。

しかも別で。

物を書く用の机、天蓋付きのベッドがあり、そこそこな広さ。

服が何着入るだろうと言うクローゼットもあり、これで客室だというのだから流石王族の別荘だと言わざるを得ない。

 

「…汚れが目立つなぁ…」

 

自分の姿を姿見で確認する。

所々、砂や倒した魔獣の返り血とかで汚れていた。

森の中を歩いてきたのだから、それは当たり前なのだが。

 

「雛桔梗、何か汚れを取る魔法とかないかしら?」

【創造魔法がございます、我が主】

 

そういえばそうだった。

この剣もホルダーも、それで作ったのだった。

 

自分が綺麗になるイメージをしながら魔法を発動する。

足元に魔法陣が展開され、それが頭上まで昇っていった。

魔法陣が消えた後、あたしの服の汚れは一切合切消えていた。

 

「おー…便利」

【流石我が主です】

 

雛桔梗が褒めてくれるけど、神から貰ったスキルであたしの力じゃないし。

あたし自身何もしていない気がする。

やったのは王子様を助けて此処まで連れてきたことくらいだ。

 

「失礼します」

 

ノックの後、メイドさん達が押し入ってくる。

何事と振り向くと、薄紫のドレスを手に携えた人、メイク道具を持った人、装飾品を持った人が目についた。

 

「これから晩餐会です。着替えを手伝わせていただきます」

「あぁ、はい…」

 

まぁ、王族の目の前に行くわけだから当然といえば当然だ。

見窄らしい平民が、そのままの格好で行けば不敬だろう。

 

されるがままになっているけど、所々悪意というものだろうか?

渋々やっている、という感じのメイドが数人いた。

それでも仕事はちゃんとするのだから、プロ根性とは素晴らしいものだ。

 

すみませんね、こんな奴のメイクやら着付けやらやらせて。

 

不審者を着飾ってどうするんだ、って思ってるんだろうけど王妃様の命令だろうなとは思った。

 

支度ができた後、案内役のメイドに連れられ晩餐会の会場に到着する。

ダンスホールか、くらいの広さの部屋に何人座れるだろうという長机。

その上には様々な料理が置かれ、上座には王妃様と年配の男性。

その横にはハルトくんと彼の兄姉だろう、年若い男女が座っていた。

年配の男性は多分王様だろう。

この距離だとステータスが見えないから、確認のしようがない。

 

あたしはドレスの裾を摘んで、カーテシーをする。

 

「君がハルトを助けてくれた女性か…ふむ」

 

王様は、あたしを値踏みするかのように見た。

その視線に悪寒めいたものを感じる。

 

何…?

舐め回すように見てる…?

 

「あなた? もう妾の増員は許しませんからね? それに、ハルトの命の恩人に対してその態度なんて…私、怒っちゃいますよ?」

 

王妃様が王様に釘を刺した。

成程、あたしの顔が美人だから手篭めにしようとしたのかこのおっさん。

 

怖い…。

 

「何を言っておるのだ、ベアトリーチェ。ささ、席に座ると良い」

 

王様に言われ、あたしは席に着いた。

すぐにあたしの目の前に料理が運ばれてくる。

湯気をたてて、とても美味しそうだ。

 

でも、とあたしは思う。

友好的なのは王妃様だけで、他は違うのではないだろうか?

王子を助けたのは有難いが、自分たちの別荘に来た不審者。

何処かの間者かもしれない、なんて考えない奴がいるだろうか?

 

『雛桔梗、鑑定スキルって創造出来るかしら? 相手方に魔法が発動したとバレないように』

【我が主が望めば、いくらでも】

 

スキルの欄に、鑑定の文字が浮き上がる。

 

自分自身でも疑り深いとは思うけど、死にたくないので仕方ない。

なんでこんなに死にたくないのか、自分でもよくわからない。

 

鑑定を使うと、ジャガイモのポタージュ毒なしと表記が出る。

他も、パンやメインのステーキ、デザート類や果物にも毒なしと出てきて、あたしは安心して食べた。

 

「ハルトを助けていただき、感謝する。私はライラントという。君の名を聞かせてはもらえないだろうか?」

「とんでもございません。むしろ、こちらこそご馳走になり恐縮でございます。名の方は…生憎と、記憶がなくなっておりまして…好きにお呼びいただければと思います」

 

これは本当の事だから、誤魔化しようもない。

 

「記憶がない…ね」

 

王様の隣にいた金髪の男の子、多分年はあたしと同じくらいか少し上くらいが、そうポツリと呟いた。

 

疑われるのは分かりきってはいるけど、事実なんだもの。

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