それ、庶子が産まれたら大変な事になるのではないか?
あたしの表情を汲んで、ターニャは一つ頷く。
「見目が麗しいだけで、教養は全くありません。陛下に一回お手つきになったぐらいで、お子様はお生まれになっていないようです。次に21貴族以下は、貴族または平民と婚姻が可能です。ただ、権力思考が強いせいで、平民と婚姻を結ぼうとする貴族は少ないと言えるでしょう。旦那様が特殊なので、見習わないように」
自分の雇い主を見習うなって、結構失礼な事言ってないかしら?
まぁ、無礼だと思っていたら彼女は最初から雇われてはいないし、あたしも再会は出来ていないだろうから、そこはお義父様に感謝しないと。
「王城には後宮があるって聞いた事があるのだけど」
「はい。前王時代からあるものですね。今は21貴族のご婦人方と、平民の妾が住んでいると聞いた事があります」
…21貴族のご婦人方?
あの陛下、上流貴族の家々から妻を娶ったという事?
うわ、引くわ…。
「というか、ターニャ。貴女何でそんなに城の内部状況について詳しいの? 前、城勤めだったからとか?」
「いいえ。
…絶対嘘。
ターニャこと、長谷川は篠原家のメイド長をしていたが、メイドになる前は要の家の仕事をしていた。
要家は代々篠原家に仕える一族で、護衛が専門ではあるが、裏の家業も兼任していると聞いた事がある。
所謂、暗殺と諜報、拷問である。
カヅキの父親、要龍久の一番弟子でもあった彼女は、恐らく全ての技術を叩き込まれたはずだ。
「お義父様について城に行った時に諜報活動したわね、ターニャ。反逆罪に問われてもおかしくないわよ」
「ナズナ殿下には許可を得られていますので、問題ないかと」
ナズナとも顔見知りだったの、貴女?
少し驚いて、彼女を見つめてしまう。
あたしの様子に、ターニャは苦笑して言葉を続けた。
「魔王討伐の際、テスタロッサ領から援軍が来たと、ナズナ殿下からお伺いになっていませんか?」
「え、えぇ。見た事がない武具を纏っていたって…」
あたしはあの後気を失って、三日三晩眠り続けていたので、結局はテスタロッサの武具がなんだったのか知る由もなかったのだ。
「あれを率いていたのは、私でございます。オートメーション化された、対物ライフルヘカートIIを使用し、反動は魔法で軽減。人の手でも持ち運びできるよう、ライフル自体に紋を刻み軽量化。弾は12.7mmの徹甲弾を使用しました。魔物に向けると、自動的に弾が発射され補充も自動で為されます。こちらの発射機構は、人の手でオンオフ可能でございます。防具の方は防弾チョッキに、こちらも紋を刻み込んで、魔物に噛まれても歯が通りづらくなっております。更にダメージ軽減を施してありますので、衝撃にも強い仕様となっております」
「色々な物がここにあったの、貴女の仕業だったのね長谷川?!」
彼女の話を聞いて、あたしは頭を抱える。
ここに来た時に見た、自動販売機も。
上下水道が完備されている事も。
学校の寮にあった冷蔵庫も、電子レンジも。
しかも電子レンジ、オーブン機能付きだったし。
全て彼女の知識が招いた事だったのだ。
「おかしいと思っていたのよ。街並みとかは中世ヨーロッパ風なのに、何でここだけ現代風なのかって」
「あの神に、お嬢様がいらっしゃる前に転生させろと脅した甲斐がありました」
誇らしげに言う彼女に、あたしは開いた口が塞がらなくなる。
脅した?
あの神を?
いくらボケで馬鹿で仕事が出来ないあの神を脅したですって?
「貴女、神殺しも出来そうね…」
「お嬢様がこの世でまた不幸な目に合われるなら、私は神殺しでも何でも致しましょう」
やめてほしい。
そこまでして貰えるほど、あたしは尊い人間ではないのだから。
「本当にお願い…自分の事を大事にして、長谷川…」
「ターニャですよ、シャルお嬢様」
彼女が苦笑する。
あたしの事をナツキと呼ぶなと言ったのだから、彼女のこともターニャと呼ばなければ。
「ごめん、ターニャ」
【我が主。所属不明機体からIFF要求がありました。応答しますか?】
ターニャに謝罪した瞬間、雛桔梗からそんなテキストメッセージが飛んでくる。
「へ? あいえふえふ?」
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
あたしの呟きに、ターニャが首を傾げた。
テキストメッセージは、あたしにしか見えていないため、その反応になったのだろう。
「雛桔梗、ターニャにもそのメッセージ見せて」
【了解致しました】
ターニャの前に、テキストメッセージが表示される。
それを見た彼女が解説してくれた。
「IFFとは、敵味方識別装置の頭文字をとったものでございます。戦時中、航空機同士が索敵範囲内の機体が、味方かどうか判別するために用いたものですね。複雑な暗号を組み、応答がなかった場合撃墜するよう、命令が降っていたはずです」
何でそんなのが、雛桔梗に接触してくるの?
色々な軍事機体とかは、ウィキから引っ張ってきて書いてはいるんですが、間違ってたらごめんなさい…。
知識が乏しいなりに書いてるんです…すみませんすみません…。
指摘されたんで少し書き直しました。
これで良いんか、相方…(銃の知識豊富な人)