「お嬢様、魔武器である彼女の使用を、許可願えませんでしょうか?」
「逆探知するの?」
あたしの言葉に、ターニャは頷く。
機械関連が疎いあたしに対して、彼女は滅法強い。
篠原家で壊れた機械が出てきたら、彼女が真っ先に直していた位だ。
「雛桔梗、良いかしら?」
【はい、我が主。コントロールパネル、開きます】
部屋の中に雛桔梗の鎧が展開され、ディスプレイとキーボードが出現する。
ターニャは早速、キーボードに何かを打ち込みまくっていた。
あたしはお茶を飲みながら、それをのんびり眺める。
「いいのか、我が主。ヒナを勝手に扱わせて」
「ターニャは信用における人物だから。別に触らせても壊しはしないわよ」
あたしの目の前でレヴィが顕現し、椅子に座ってお菓子を頬張った。
しかし彼女の言葉に、あたしは緩く首を横に振る。
というか、壊れても直しそうだし。
「……ロストしました」
はぁ、とターニャは深いため息を吐く。
キーボードを打つ手が止まったから、多分そうではないかと思っていたが。
「お疲れ様、ターニャ。相手はわかった?」
「いいえ。しかし、あの手口は覚えがあります。近々、お嬢様の元に現れるやもしれません。その時は張り倒してやります」
なんか息巻いているのだけど、一体何があったのか。
まぁ、機械関連の話をされてもあたしにはちんぷんかんぷんなので、詳しくは聞かない事にした。
◆◆◆
夕食の時間になったのでレヴィには還ってもらい、お義父様と食事を摂った。
また所作が綺麗だと言われたので、会った時に言った言葉を繰り返し言ったら、またもやターニャが涙ぐんでしまい、多少困る。
貴女の教え子は、ちゃんと習った通りに出来ているので、一々感動しないでほしいのだけれど。
ターニャからすれば、死んでしまったあたしが目の前で動いて食事をし、褒められているのだから感無量なのだろう。
わかるけど泣かないで、本当に、お願いだから。
食事が終わったので部屋に下がらせてもらい、湯浴みの準備を、普通なら自分でする所なのだけど。
「お嬢様の御身を磨くのが我々の使命です。どうぞ、ごゆるりとお寛ぎください」
数人のメイドさん達にお風呂場に連れて行かれ、全身磨かれてしまった。
猫足のバスタブに浸かり、メイドさんにヘッドスパをして貰いながら、顔にはパックを施して貰う。
香りが良い入浴剤も入れてくれたようで、リラックスしたあたしは、ゆったり寛いでしまった。
わぁ、至れり尽くせり…。
これもターニャの指示なのかしら。
「貴女達。ぽっと湧いて出た平民が、今日からここのお嬢様になるって、どう思っているの? あぁ、取り繕わなくても良いわ。正直に話して欲しいの」
色々して貰いながらだが、あたしはメイドさん達に質問する。
我ながら嫌な質問だとは思うけど、彼女らの本音が聞きたかった。
今後、付き合っていかなきゃいけないのだから。
あたしに対して悪感情を抱いていたとしても、彼女らが罪を犯さない限りは生活を保障しなければならない。
それが、雇用主としての義務だからだ。
「
「…どういう事?」
理解が出来ず、あたしは発言したメイドに聞く。
「私共は、元は孤児でございました。戦争で親を亡くした者が多数です。それを、今の領主様とメイド長が拾って育てて下さったのです。メイド長は、私共の親代わりなのです。メイド長は度々仰っていました。『
…ターニャは、預言者か何かだったのかしら。
そこまであたしの行動を予測できるとは、日頃あたしをよく観察している証拠ね。
「メイド長は仰いました。『お嬢様に不利益な事を申しても、お嬢様は貴女達を許し、愛しむ事でしょう。貴女達がお嬢様を疎んで虐めたとしても、あの方はそれすらも許し、優美に微笑んでみせるでしょう』。本日いらっしゃった貴女様は、メイド長が仰っていたお嬢様だと、私共は確信しております。所作も礼儀も、メイド長に教えていただいた私共だからこそ分かるのです。お嬢様は、メイド長が仰っていた、尊敬する方なのだと。なればこそ、私共がお嬢様を嫌だと感じる理由はございません」
「…ありがとう。後で貴女達の名前を教えてくれるかしら」
勿論です、と返されてあたしは微笑む。
とても良い家に入る事が出来て、あたしは幸せだと。
◆◆◆
テスタロッサの家に来て数日。
ナズナからの書状が届けられた。
曰く、あたしが数日テスタロッサ領にいて護衛する者がいないから、トリスタン領の別荘まで来てほしい、と。
「不躾では無いですか? ナズナ殿下」