「はぁ…どいつもこいつも…。ターニャ、
「は。命に変えましても。我が身の不手際、誠に申し訳なく…」
ターニャが跪き、
「
魔力障壁を張った辺りから、ナズナの手があたしを掴んで離してくれない。
心配なのはわかるんだけど、貴方より強いのだから、そんなに不安そうにしないでほしいのだが。
「シャル…」
「大丈夫。それに、元々部下だった彼女の不手際は、あたしの責任でもあるの。今は魔力暴走を起こしてるだけだから、落ち着かせればそれも収まる。後の修復は彼女にやらせるから、問題なし。傷一つ付かずに帰ってくるから。もしかすり傷でも負うような事があったら…そうね。貴方の言う事、何でも一つ聞いてあげる」
そう言って、優しくナズナの手を離す。
魔力障壁はそのままに、あたしはカヅキの方へ歩みを進めた。
ドレスだから少し動きにくいけど、このくらいのハンデはハンデでも何でもない。
雛桔梗を展開させ、魔力波を防御しながら蹲ってしまったカヅキに近付く。
「カヅキ、カヅキ。落ち着いて。何があったというの。いつも落ち着いている貴女らしくもないわよ」
「ナツキ…ナツキが…。宮塚…テメェだけは許さねぇ…八つ裂きなんて生温い方法で、殺してなんかやるものか…。ナツキに、世界に、侘びながら、魂まで滅ぼしてやる…っ! 二度と輪廻転生出来なくしてやるからなっ!!」
宮塚への怨嗟の声を上げながら、カヅキは尚も魔力を出し続ける。
これ以上は彼女の体よりも、城の方が保たないだろう。
ええい、仕方ない。
後でナズナに怒られるのを覚悟しなければ。
あと、何要求されるんだろう…。
「雛桔梗、展開解除」
【しかし、我が主の体が】
雛桔梗が警告してくる。
だが、それは承知の上だ。
「死なないわよ。カヅキが無意識に手加減してくれる事を祈るわ。まぁ、死にかけたら
【…御意】
雛桔梗が展開を解除する。
瞬間、カヅキの魔力波であたしの体に切り傷が入った。
「カヅキ、落ち着いて。
「ナツ、キ…」
カヅキを抱きしめ、囁くように話しかける。
彼女の頬に、自分の顔をくっ付けて頬擦りした。
大好きだよって、伝える為に。
「ごめん、守れなくて、ごめん…。お前を置いて行って、ごめんな…っ!」
「良いよ。許すよ。私も、貴女を守りきれなかった。主人として情けない限りです。だから、泣かないで」
あたしをかき抱き、カヅキは静かに涙を零していた。
周りに見られたくないだろうな、と思い、自分の肩に押し付ける。
魔力波が徐々に収まり、なくなった瞬間、痛みが全身を駆け巡った。
「いっ…!!」
創造魔法で痛覚遮断を作り出し、自分に施す。
雛桔梗が急いで再生魔法をかけてくれた。
「ナツキ…すまん…」
あたしの腕の中で、カヅキが謝罪してくる。
耳まで真っ赤になっているところを見ると、物凄く恥ずかしがっているのだろうな、と推察出来た。
あと、雛桔梗が再生魔法をかけたという事は、あたしもしかして死にかけた…?
カヅキの魔力量、あたしの倍以上あるんじゃないの?
よくあたし生きてられたなぁ?!
「お嬢様っ!!
傷が再生していく中、後ろから衝撃が来る。
振り向くと、ターニャがあたし達へ覆い被さるように抱きしめてくれていた。
その目には涙が浮かんでいる。
「師匠…名前…」
「貴女だって、
「ターニャ…」
カヅキが呆然とターニャを見た。
多分、名前で呼ばれた事が数回しかなかったせいだろうと推測する。
「息子って…貴女、結婚してなかったじゃないですか…」
「あなた方2人とも亡くした後、結婚して孫までいましたとも!」
それ初耳。
長谷川はあの後幸せになってくれたのか…良かった。
「シャル、お前…」
魔力波の影響が無くなったので、ナズナもこちらへ来たのだが、あたしの惨状を見て顔を顰めている。
それもそうだろう。
ドレスは魔力波を受けてズタボロ、再生魔法をかけているとはいえ、肌が露出しているところは切り傷だらけ。
見るに耐えないだろう。
「えーと、あはは…」
「約束、守ってもらうからな」