転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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56.勝負するようです

笑顔なのに、全く目が笑ってなくて怖いんですけど。

本当にごめんなさい…。

 

◆◆◆

 

親衛隊の隊舎の更衣室に転移し、ボロボロのドレスから隊服に着替えて戻ってくると、城のひび割れなどをカヅキが一瞬で直してしまっていた所だった。

 

「こんなの、時戻しすればいいだけだろ。あと、中の状況も時を戻しておいたから、騒ぎにはなってないはずだぜ」

 

無事だった椅子へ座り、用意されたお茶を優雅に飲んで、何でもない事のように言う彼女に、あたしは複雑な心境へ陥ってしまう。

 

確かに、カヅキは別の所から来たのだから、あたしより強いのはわかるんだけど。

それでも世界最強って感じでお願いしたはずなんだよな、あの神に。

やっぱり、仕事が出来ないんだな。

何であんなの雇ってんのよ、他の神は。

 

「カヅキといったな。俺と手合わせしてもらえないだろうか」

 

ナズナのその言葉に、あたしはティーカップを落としてしまう。

すんでの所でターニャが受け止めてくれていなければ、破片があたしの頬を切っていたところだった。

 

「…ナツキ、こいつ自殺願望あるの? 馬鹿なの?」

「馬鹿とは口が悪いですよ、要。仮にもお嬢様の婚約者となる方です。敬えとは言いませんが、少しは口を慎みなさい」

 

ティーカップをあたしの前まで戻し、ターニャは自分の分のお茶を飲む。

その際、カヅキの口の悪さに苦言を呈した。

 

「えー? 師匠、名前で呼んでくれないんですかー?」

「名前で呼んでもいいですが、その際悶絶するのは(わたくし)ではなく、貴女ですよカヅキ」

 

ニヤニヤとターニャを揶揄(からか)おうとしたカヅキだったが、彼女からそう返され、黙ってしまう。

産んで育ててくれたお母様はいるけど、ターニャは第二の母のような存在だ。

あたしもカヅキも、生涯頭が上がらないのだろう。

 

「で、手合わせしてくれないのか?」

「してもいいけど、お前死ぬよ? それでも良いわけ?」

「死なないように手加減なさい。お嬢様に嫌われますよ」

 

ジトーっと、ターニャを横目でカヅキは見る。

一々五月蝿いなぁ、とでも思っている事だろう。

 

「わーったよ。ナツキ、障壁張れや。ちょっとやそっとじゃ砕けないやつ」

「その後、あたしとも組み手してくれる? 貴女とやるの、久々だし」

 

ウキウキで尋ねると、辟易した顔をされてしまった。

何でそんな顔するのよ。

 

「お嬢様は、守られてなんぼだと思いますがね」

「何言ってるのよ、あたしナズナの専属護衛やってるんだから。ターニャ仕込みの体術とか剣術とか駆使してるけど、なかなか歯応えのある人達がいなくて。貴女が相手してくれたら助かるんだけど」

 

その言葉に、彼女はターニャを見る。

これは良いのか、と言いたげな顔だ。

 

「お嬢様がお決めになった事ですから。あと、私がお嬢様と再会したのは、お嬢様が宮塚を倒した功績によって、我が家に来た時です。その前には、お嬢様は親衛隊へ入隊なさっておいででした」

「…そーですかー」

 

あ。

諦めたな、あれ。

 

あたしが張った結界の中に、ナズナとカヅキが入って行く。

さっき魔力暴走起こしたばかりだから、大丈夫だろうかと少し心配になるが、まぁカヅキなら心配いらないかと結論を出す。

長谷川の一番弟子で、努力家で、実力を隠すような人だった。

彼が本気で戦えるのは、多分師匠である長谷川だけだったような気がする。

あと、父親である要もだったな。

たまに鍛錬の場に現れては、カヅキを投げ飛ばして去って行った。

コミュニケーション不足だから、構いに来てたのだろうけど。

不器用な一族だったなぁ。

 

「要で思い出したけど、あたしが死んだ後、篠原の家はどうなったの? ターニャ」

「真子様が跡を継がれましたよ。お嬢様の足元にも及びませんが、随分努力なさったようで。ご結婚もなされましたが、旦那様とは仮面夫婦でしたね。あの方は、未だカヅキの影を追っているようです」

 

何でそこまでカヅキにご執心だったのか、今でもわからない。

そのせいで、敵愾心を抱かれているのは理解出来ていたけれど。

 

「何で真子は、カヅキに執着していたのかしら」

「初恋だったそうです。お嬢様の後に付き従う、冷静沈着な彼を好ましく思ったようで。お嬢様と将来結婚すると聞かされた時の荒れ様は、とんでもなかったと側付きから聞かされましたとも。アレの本性を垣間見たら、流石の真子様でも幻滅したでしょうが」

 

いや、ワイルドで格好良いと言い出しかねないぞ、あの子の場合。

 

「さて、勝負方法は何がいい? 俺は何でもいいが」

「そうだな…相手を地面につかせた方が負け、というのはどうだ?」

 

結界内に入った二人が、勝負の方法を決め始める。

というか、今まで喋ってなかったけど、あたし達の話聞いてたな、あれは。

 

「乗った!」

 

カヅキの影から、黒い帯状の何かが噴出する。

それは質量を伴って、ナズナに迫った。

 

雷球(サンダーボルト)!」

 

雷属性の球体を作り出し、ナズナはそれらに当てる。

当たった瞬間、爆発して黒い帯状の何かは霧散した。

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