笑顔なのに、全く目が笑ってなくて怖いんですけど。
本当にごめんなさい…。
◆◆◆
親衛隊の隊舎の更衣室に転移し、ボロボロのドレスから隊服に着替えて戻ってくると、城のひび割れなどをカヅキが一瞬で直してしまっていた所だった。
「こんなの、時戻しすればいいだけだろ。あと、中の状況も時を戻しておいたから、騒ぎにはなってないはずだぜ」
無事だった椅子へ座り、用意されたお茶を優雅に飲んで、何でもない事のように言う彼女に、あたしは複雑な心境へ陥ってしまう。
確かに、カヅキは別の所から来たのだから、あたしより強いのはわかるんだけど。
それでも世界最強って感じでお願いしたはずなんだよな、あの神に。
やっぱり、仕事が出来ないんだな。
何であんなの雇ってんのよ、他の神は。
「カヅキといったな。俺と手合わせしてもらえないだろうか」
ナズナのその言葉に、あたしはティーカップを落としてしまう。
すんでの所でターニャが受け止めてくれていなければ、破片があたしの頬を切っていたところだった。
「…ナツキ、こいつ自殺願望あるの? 馬鹿なの?」
「馬鹿とは口が悪いですよ、要。仮にもお嬢様の婚約者となる方です。敬えとは言いませんが、少しは口を慎みなさい」
ティーカップをあたしの前まで戻し、ターニャは自分の分のお茶を飲む。
その際、カヅキの口の悪さに苦言を呈した。
「えー? 師匠、名前で呼んでくれないんですかー?」
「名前で呼んでもいいですが、その際悶絶するのは
ニヤニヤとターニャを
産んで育ててくれたお母様はいるけど、ターニャは第二の母のような存在だ。
あたしもカヅキも、生涯頭が上がらないのだろう。
「で、手合わせしてくれないのか?」
「してもいいけど、お前死ぬよ? それでも良いわけ?」
「死なないように手加減なさい。お嬢様に嫌われますよ」
ジトーっと、ターニャを横目でカヅキは見る。
一々五月蝿いなぁ、とでも思っている事だろう。
「わーったよ。ナツキ、障壁張れや。ちょっとやそっとじゃ砕けないやつ」
「その後、あたしとも組み手してくれる? 貴女とやるの、久々だし」
ウキウキで尋ねると、辟易した顔をされてしまった。
何でそんな顔するのよ。
「お嬢様は、守られてなんぼだと思いますがね」
「何言ってるのよ、あたしナズナの専属護衛やってるんだから。ターニャ仕込みの体術とか剣術とか駆使してるけど、なかなか歯応えのある人達がいなくて。貴女が相手してくれたら助かるんだけど」
その言葉に、彼女はターニャを見る。
これは良いのか、と言いたげな顔だ。
「お嬢様がお決めになった事ですから。あと、私がお嬢様と再会したのは、お嬢様が宮塚を倒した功績によって、我が家に来た時です。その前には、お嬢様は親衛隊へ入隊なさっておいででした」
「…そーですかー」
あ。
諦めたな、あれ。
あたしが張った結界の中に、ナズナとカヅキが入って行く。
さっき魔力暴走起こしたばかりだから、大丈夫だろうかと少し心配になるが、まぁカヅキなら心配いらないかと結論を出す。
長谷川の一番弟子で、努力家で、実力を隠すような人だった。
彼が本気で戦えるのは、多分師匠である長谷川だけだったような気がする。
あと、父親である要もだったな。
たまに鍛錬の場に現れては、カヅキを投げ飛ばして去って行った。
コミュニケーション不足だから、構いに来てたのだろうけど。
不器用な一族だったなぁ。
「要で思い出したけど、あたしが死んだ後、篠原の家はどうなったの? ターニャ」
「真子様が跡を継がれましたよ。お嬢様の足元にも及びませんが、随分努力なさったようで。ご結婚もなされましたが、旦那様とは仮面夫婦でしたね。あの方は、未だカヅキの影を追っているようです」
何でそこまでカヅキにご執心だったのか、今でもわからない。
そのせいで、敵愾心を抱かれているのは理解出来ていたけれど。
「何で真子は、カヅキに執着していたのかしら」
「初恋だったそうです。お嬢様の後に付き従う、冷静沈着な彼を好ましく思ったようで。お嬢様と将来結婚すると聞かされた時の荒れ様は、とんでもなかったと側付きから聞かされましたとも。アレの本性を垣間見たら、流石の真子様でも幻滅したでしょうが」
いや、ワイルドで格好良いと言い出しかねないぞ、あの子の場合。
「さて、勝負方法は何がいい? 俺は何でもいいが」
「そうだな…相手を地面につかせた方が負け、というのはどうだ?」
結界内に入った二人が、勝負の方法を決め始める。
というか、今まで喋ってなかったけど、あたし達の話聞いてたな、あれは。
「乗った!」
カヅキの影から、黒い帯状の何かが噴出する。
それは質量を伴って、ナズナに迫った。
「
雷属性の球体を作り出し、ナズナはそれらに当てる。
当たった瞬間、爆発して黒い帯状の何かは霧散した。