「へー。小手調べだったけど、なかなかやるじゃん」
「お前もな」
二人とも、ニヤリと笑い合っている。
なんか、友情芽生えてない?
これが男の子ってものなんだろうか。
一人は転生して女の子になっているけど。
カヅキが片手を上げるが、先程の黒い帯状の何かも出ないし、他の魔法も出ていない。
一体何をしているんだと思った時、ナズナが飛び上がった。
そのまま地面に着地する事なく、空中に滞留する。
ナズナの持っている属性は、雷と重力。
人は基本一属性しか持てないらしいけど、ナズナは二属性を持って生まれた。
今は重力魔法を使って、空中に留まっているみたい。
ナズナがいた場所を見ると、影が発生していた。
少し動いている所を見るに、足を絡め取ろうとしていたんだろうと推測出来る。
「へぇ、良い勘してるじゃん。王子様」
「お前のそれ、影魔法だな。うちの国ではマイナーな魔法だが、よく使いこなせている。適正は、闇と影か?」
ご明察、とカヅキは言う。
そしてメイド服のポケットから、今度は分厚い眼鏡ではなく普通の眼鏡を取り出してかけた。
「俺は異世界で闇帝の位をもらっている。まぁ、ギルドのトップランカーだな。そこいらの雑魚には負ける気がしねぇ。つーことで、見下ろされんのは趣味じゃねぇんだ。落ちろ」
カヅキが親指を下に向ける。
魔法が発動する気配がし、ナズナの下方に大きな影が渦巻き始めた。
「
あたりの空気も、全てその渦に飲み込まれて行くようで、あたしの結界が少しひしゃげてくる。
中にいるナズナも、何か思案をしているようだった。
「ほらほら、早くしねーと死んじまうぜ、王子様」
「ちょ、カヅキ! 少し手加減しなさいってターニャに言われてたでしょ?! 何やってんの!」
叱責するが、カヅキはどこ吹く風のようにあたしへ言い放つ。
「こんなんで死ぬようなら、お前は守れねーよ。こいつ殺しちまったら、お前と師匠を俺の世界に連れ帰る。いい考えだと思うんだけどな」
「な…っ!」
ターニャの方を見ると、こめかみを押さえて頭が痛そうにしている。
若干、彼女は暴走しているようだった。
「そんな事したら本当に大っ嫌いになるからね?! わかってんの?!」
「うぇ…」
あたしの言葉に怯んだカヅキは、威力をだいぶ抑えたようで結界が元の強度に戻る。
その隙を見たナズナは、雷魔法を使ってカヅキの背後に周り、その背中を蹴った。
「ぐぇっ!」
「勝負あったな」
蹴られて地面に倒れたカヅキに、ナズナはニヤリと笑った。
「ちっ…男に二言はねぇ。俺の負けだ。ナイスファイトだったぜ、ナズナ」
「お前もな、カヅキ」
素直に負けを認めたカヅキは拳を突き出す。
それに拳を重ね、ナズナも素直に年相応に笑った。
一体あたしは何を見せられているんだろうか。
「さて、勝負あったようですので、お嬢様。テスタロッサ家へ帰りましょうか。もう非番だと思うのですが」
「いや、まだあたしとの組み手が終わってないんだけど」
帰宅を促すターニャに、あたしは言う。
カヅキと組み手するの、何年振りだと思ってるのかしら。
「家でやればよろしい。ナズナ殿下。お嬢様の帰宅、許可してくださいますね?」
「一王太子に圧をかけられるの、貴女ぐらいよターニャ…」
普通なら、平民ガーとか言って処罰されるでしょうに。
…ナズナの兄弟なら平気でしそうだわ。
特に、初日城へ帰ってきた時に絡んできたエンリケとか。
「まぁ、明日また会えるだろうしな。城の中で暗殺しようとする馬鹿もいるにはいるが、今まで負けたことはない。安心して行ってこい」
「行けるわけなくない?!」
それ聞かされて、はい帰りますって言う護衛役いないと思うんだけど?
「ナツキ。俺の作った護符、コイツに貼っ付けておいてやる。なんかあれば一回は守ってくれるし、俺のとこに通知も来るようになってる。ナツキが悲しむ顔なんざ見たかねぇし。師匠が決めた事は絶対覆せないからな」
カヅキがため息をつく。
流石一番弟子。
ターニャの事よくわかってるじゃない。
「おら、腹出せ王子様。貼り付けてやる」
「ナズナだ。せめて名前で呼べ、カヅキ」
へーへー、と言いながら、取り出した護符をナズナに貼り付けた。
肌に張り付いた瞬間、それが消えて見えなくなる。
「これで、他の連中からも気取られる心配はない」
「へー、高性能ね。あたしも覚えれば出来る?」
カヅキに聞くが、無理無理、と返されてしまった。
「こっちの材料じゃ作れねー奴だから、覚えた所で無駄なんですよ睨まないで頂けませんかねターニャさん!」
後半凄い早口で、カヅキはターニャに弁明している。
睨んでませんが、と彼女から返答があったけど、絶対嘘だってカヅキは怯えてた。
◆◆◆
王都から長距離転移でテスタロッサの家に戻ってきた直後、カヅキが庭で吐いてしまった。
聞けば、長距離転移の際にかかる魔力に酔ってしまうんだとか。
長距離移動する時どうしてるの、と聞くと
「いつもは自分の影使って移動してる…」
との返答だった。