「そう言えば、貴女乗り物も弱かったですね。お嬢様に気取られないようにしていたのは立派でしたよ」
「なんか、転生して優しくなりました…?」
カヅキの吐瀉物を片付けた後、ターニャは彼女の背を撫でながら水を飲ませている。
あたしはそれをただ見ているだけだった。
「いつも優しかったでしょう? 貴女が気付いていなかっただけよ」
「それは、お前に対してだけ…うぇ…」
今度はターニャが持ってきた袋にまた吐いている。
すごい苦手だったのか…言ってくれれば良かったのに。
「昔から見栄っ張りなんですよ。絶対にお嬢様には弱い所を見せたくないと意地になってて。無理も無茶もするから、見てて心配になってましたよ」
「本当にターニャは、カヅキの事良くわかってるのね。妬けてしまうわ」
そう言うと、ターニャは振り返り微笑を浮かべた。
「この子は、私の一番弟子であり、自慢の息子ですもの。今は娘ですが」
「そういうの、あんまり…恥ずかしいんで…」
吐き終わったのか、カヅキが呟く。
「さて。私はこの子を着替えさせてきます。お嬢様は先に、旦那様の所へ帰宅のご挨拶に行ってください」
「わかったわ」
ヨロヨロと、ターニャに支えられながらカヅキは屋敷に入って行く。
あたしはそれを見送った後、お義父様の研究施設へ向かった。
「お義父様、失礼致します。シャルロット、帰宅しました」
ノックの必要性がない、自動ドアが開き、あたしは中にいるであろう養父に帰宅の挨拶をする。
「お帰りなさい、シャル。ナズナ君は良いのですか?」
「あー…まぁ、ターニャが決めた事なので。ナズナも納得してくれてましたし…」
若干目を泳がせながら言うと、お義父様はターニャらしいですねぇ、と笑っていた。
「あ。あと、友人が滞在するかもしれないのですが、宜しいですか?」
「部屋は腐らせる程ありますからねぇ。別に住んでもらっても構いませんよ」
はっはっは、とお義父様は笑う。
冗談なのか本気なのか、よくわからない笑顔だ。
「料理長には、お客様がいらっしゃった事を伝えてきます」
「ターニャがもうしているでしょう。内線電話があちこちにありますからね。シャルは着替えてきなさい。後で一緒に夕食をいただきましょう」
はい、と返事を返して、あたしは研究室を辞した。
屋敷に取って返し、扉を潜る。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「「「「お帰りなさいませ」」」」
屋敷のエントランスに、メイド達が並んでお出迎えしてくれた。
「ただいま、リアラ、リリス、ヨランダ、ロンドリーネ、フィリア、マリー、メル。貴女達、お客様がいらっしゃってるの。ターニャから聞いてるかしら」
「はい、お嬢様。ナナリーとノーマがお部屋の準備をしています」
「セネル達も、料理長と一緒に頑張ってますよ」
この屋敷のみんなは本当に優秀だ。
それもこれも、ターニャの教育がいいおかげだ。
「宜しい。着替えたいのだけど、誰かドレスを選んでもらえないかしら」
「はいはーい! 私が選びまーす!」
この屋敷最年少のメイド、アニスが手を挙げる。
元気があって良い子だ。
多少ドジをやらかす時があるけど。
「アニスだけでは不安なので、私もお供します」
「ジュディー姉ちゃん、私だけで充分だってば!」
妖艶さが溢れ出ているジュディーが、アニスの肩に手を置き微笑む。
「だーめ。それに、お嬢様の身長と貴女の身長、差がありすぎるわよぅ。お嬢様のドレスを選ぶだけ、なんて許されると思う?」
「う…」
アニスが押し黙ってしまう。
そこへ、双子のリリスとリリアが前に出た。
「お嬢様のお着替え、私達も手伝います」
「お嬢様のヘアメイク、私達がやります」
頼もしいのだけど、お夕飯の時間大丈夫かしら…?
◆◆◆
薄いピンク色の、造花が散りばめられたドレスに袖を通す。
真珠があしらわれた髪飾りをつけて、髪も軽く編み込んでもらった。
「お綺麗です、お嬢様」
髪を編み込んでくれたリリスが、あたしの姿を褒めてくれる。
「ありがとうリリス。この髪飾りも素敵ね、リリア。選んでくれてありがとう。アニス、ジュディー、二人も着替え手伝ってくれてありがとう」
「「「お褒めいただき、光栄の限りです。お嬢様」」」
あたしについて来てくれたメイド達が、恭しく傅く。
「お嬢様、お夕飯の準備が整いましたので食堂までお越しくださいますよう」
執事長のローエンが、あたしを呼びにきた。
「わかりました。お義父様には?」
「他の執事が呼びに行っております。お客様の方も、ご準備が出来たようでございます」
あたしは一つ頷いて、食堂へ赴く。
食堂につくと白いワンピースを身につけたカヅキが、大人しく座っていた。
後ろにはターニャが控えている。
「可愛い…」
前髪はピンで止められ、スクエア型の眼鏡をしていた。
「ありがとよ」
「要、言葉遣いを直しなさい」
ターニャに嗜められ、へいへい、とカヅキは返事をする。
相変わらずだな、と思っていた時、お義父様が食堂に入ってきた。
ちょっとメイドの名前を探して書くのも大変になってきたので、ゲームのキャラ名から取りました
はい、安易ですみません…