転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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62.朝です

「今の貴女は頑丈でしょうに。何を言っているのですか」

「頑丈でもですよ。逆に返しますが、非常識が服着て歩いているような人が何言ってんですか」

 

売り言葉に買い言葉。

昨日は仲良さげな雰囲気だったのに、起きたらこうなる、と。

 

あたしは少々呆れながらも、カヅキに質問する。

 

「本当に、なんであたしの部屋にいたの貴女は?」

「…本当にわからん。夢遊病か?」

「馬鹿な事言ってないで、さっさと着替えてらっしゃい。貴女の着替えは部屋に用意していますからね。それとも、宛てがわれた部屋がわからない…とは言いませんよね?」

 

あたしの質問に首を傾げるカヅキへ、ターニャが追い打ちをかけるように言う。

 

だから、なんでそんな言い方しか出来ないの貴女は…。

 

「はあー? 分かりますがぁ? 馬鹿にするのもいい加減にしろよ、クソババア!!」

「それほど元気なら、大丈夫そうですね。ほら、着替えに行きなさい。お嬢様の裸体でも拝みたいのですか、貴女は」

 

誰が見るか、ばーか!!

 

とカヅキは扉が壊れるんじゃないか、というくらいの音で出て行った。

 

「ターニャ…素直にごめんなさいって言えばいいのに」

「別に謝る必要性を感じた覚えはございません。下は生垣でしたので、あの子の受け身ならば怪我一つしないと信じたまでです。まさか、一階からこの場まで跳躍してくるとは思いもしませんでしたが…。ヒビ入ってますね、これ」

 

カヅキの攻撃を防御した腕。

左腕であるが、ターニャが袖を捲ると赤黒く変色していた。

 

「うわ、治そうか?」

「ご心配には及びません。こんな状態でも動けるよう、気取られぬよう訓練は受けてますので」

 

それ前世の話だよね?

今の話じゃないよね?

 

ヒビが入っているというのに、ターニャは手を鳴らし、他のメイドを呼び寄せる。

シオンに選んでもらった、紫色の花が刺繍されている白いワンピースに袖を通し、暑いからと髪はポニーテールにしてもらった。

 

そのまま食堂に行くと、ちょうど着替えたカヅキと遭遇する。

 

「さっきぶり。大丈夫そう?」

「何が」

 

さっきのターニャとのやり取りで、若干不機嫌になっているようだった。

あたしは苦笑いを浮かべるしかない。

 

「好き嫌いとかあったっけ」

「ない。あっても表情に出ないよう訓練されてるの、知ってるだろ?」

 

知ってはいる、知ってはいるが。

何でここまで似てるのに、この師弟は仲が悪いのか。

いや、カヅキの煽り耐性の低さが原因か、もしくはターニャの自覚なき口の悪さが原因か。

どちらともだな、と思考の果てに至る。

 

今日の朝食にお義父様はいないようで、メイドのリタに尋ねた。

 

「お義父様はどちらに?」

「昨夜から研究に没頭なさっておいでのようで、朝食は研究棟で取る、とお言葉をいただいております」

 

この場にターニャがいないのもそれが原因か。

 

朝食に、コーンポタージュのスープと焼きたてのパン、サラダとスクランブルエッグが並ぶ。

そのメニューを見た瞬間、カヅキがあたしを見た。

 

「気になさらなくて結構よ、カヅキ。アレルギー反応は出なくなってるから」

「…マジで言ってるのか?」

 

前世であたしは卵アレルギーだった。

それも重度の。

一口でも食べたら、蕁麻疹が体を覆い、呼吸困難になって意識が無くなるくらいだった。

それを考慮してか、あたしに出されるのは卵が抜かれた料理達で、コンタミネーションも許さないような調理の仕方だったと、長谷川から聞いた事がある。

 

でも今世では、毒耐性とでもいうのだろうか。

アレルギー症状が全く出なかった。

あの使えない神にしては、そこだけ仕事しているようだ。

 

おかげで卵料理が美味しい事!

 

一口食べてみるが、牛乳を入れてあるのかクリーミーで美味しい。

カヅキの方を見てニコリと笑うと、ヒヤヒヤしていた彼女の表情が安堵に変わる。

 

「おま…自殺行為だぞ、それ」

「だから、大丈夫なの。心配してくれてありがとう。でも、今世の体はよほど頑丈なようよ?」

 

前世でひ弱だったというわけではないが、そういうハンデがあった。

気軽に人が作ったものなんて食べれたものじゃなかったし、何なら篠原家の料理人達には苦労をかけさせた。

 

だからこそ、今は楽しい。

ご飯も美味しく食べれるし、何なら鑑定スキルで毒物の有無もわかるし。

 

転生して良かったとは、手放しでは喜べないけど。

それでもこの体質は嬉しい。

 

「てか、ベルファさん、何の研究してんの?」

 

言語と仕草が全く噛み合っていない彼女が、あたしに質問してきた。

 

「魔道具の研究ですって。何を作っているかはわからないけど、この世界に自販機とか冷蔵庫とか現代にあるものは、全てお父様が作ったものだそうよ。勿論、ターニャの入れ知恵でね」

 

助かってはいるけれど、凄いチグハグ差を感じてしまう。

中世ヨーロッパ風なのに、使うものは現代のものだなんて。

世界観がバグっているとしか思えない、と何度思った事か。

 

「ふーん。その研究棟、俺も入りたいんだけど」

「ターニャに許可もらえれば入れるかもね」

 

途端、カヅキは嫌そうな顔をする。

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