転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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64.ナズナのお姉様方です

嫌な予感が当たったあたしは、少しため息を吐いてから、扉をノックした。

 

「ナズナ殿下、シャルロットです。入っても宜しいですか?」

「…入れ」

 

ナズナの声が低くなっている。

とても機嫌が悪い事が伺えた。

ゆっくり扉を開けると、あたしに掴み掛かってくる手が2本。

次いで、鴇色と薄色の髪色が目に映った。

 

「貴女からも何とか言ってよ!」

「そうよ! 貴女、ナズナの専属護衛なんでしょ?!」

 

衝撃で少し驚いたけど、冷静に二人を見る。

 

ナズナの上の姉二人、ヴァネッサ様とルイーゼ様。

ヴァネッサ様は軍部にいるが、下級兵士だと聞いたことがある。

下級兵士と言えども王族。

戦場に出してもらえるはずがない。

そしてルイーゼ様は、国を憂いてよく陛下がいる会議に出席しているようだが、言い分がその議題にそぐわないものばかりで、会議に出席している21貴族の当主達は辟易している…と、ナズナとお義父様から聞かされたばかりだ。

 

「…お前ら、シャルに言った所で無駄だからな」

「わからないじゃない! テスタロッサ卿に話して軍部の強化をしてもらえるかもしれないじゃないの!」

 

ヴァネッサ様の言い分はわかる。

でも、それは国を強くしようという思想の事では無い。

自分の功績にして、更に上の地位につきたいだけの方便だ。

それがわかっているから、ナズナは取り合わない。

でなければ、彼だって話を聞く姿勢を見せているはずだから。

 

「義父は、武家の出ではありませんので。ご期待に添えられず、申し訳ありません。ヴァネッサ様」

 

このリューネの国でも、文家、武家と特色が分かれている。

あたしが養女として迎え入れてもらったテスタロッサの家は文家。

対して、ヴァネッサ様の母君であるカミラ様の生家であるベジャール家は武家の家にあたる。

勿論、ルイーゼ様の母君であるエレナ様の生家のヴェロニカ家もだ。

 

「なら、貴女が騎士団の団長達にお話を通して、軍部を強化してもらえるよう頼んでもらえないかしら?」

 

薄色の髪のルイーゼ様がそんな事を言う。

 

むしろ、貴女方のお母上から実家に話してもらった方が話が通りやすいんじゃないですかね。

 

そう言いそうになるのを我慢する。

言った所で、ヴァネッサ様は自分の功績にならないから嫌がるだろうし、ルイーゼ様はルイーゼ様で、何でそんな遠回りな事をしなければならないのかと、質問攻めに合うのは目に見えていた。

 

「…いやー…私、そんなに団長達とお話しした事ないのでー…」

 

顔を背けながら、そう言う。

事実なのだから仕方ない。

あたしが話した事があるといえば、第一騎士団の団長である、ダーカンさんだけだ。

 

そして王族のお二方はあたしより背が小さいので、頭頂部だけしか見えない。

 

あたしの背が高すぎるのが悪いのだが、これで二十歳過ぎてるんだよな。

どっかに嫁げば良いのに。

正直言って五月蝿い。

 

「お前らいい加減にしろ! 政務の邪魔だ、後宮に帰れ!!」

 

腹に据えかねていたのか、ナズナが大声を出す。

それに二人とも、驚いたようで固まっていた。

 

「殿下もこう仰っていますし、本日はお帰りなられた方がよろしいかと愚見いたします」

「そ、そうね。今日は帰りましょう。ほら、ルイーゼ。帰るわよ」

 

ニコリと微笑んで言うと、ヴァネッサ様がルイーゼ様の腕を掴んでそそくさと退室していく。

彼女らの足音が遠ざかっていき、聞こえなくなってからあたしはナズナに言った。

 

「流石に腹が立ったからって、怒鳴るのはどうかと思うわ」

「…あいつらがきたのは2時間くらい前だ。それからずっと、軍部がどうだ、予算がどうだと騒いでてな。頭が痛くなってきてたんだ、許せ」

 

あー…それは確かに頭が痛くなる。

あんな金切り声をずっと聞かされていればそうなるだろう。

 

あたしはナズナの傍に寄り、彼の頭を抱きしめた。

よしよし、と頭を撫でれば、腰に手を回され抱きしめられる。

 

「癒される…シャル…好きだ…」

「あたしも好きよ。まだ朝だけれど、お疲れ様ナズナ」

 

本当に疲れてたんだろうなぁ…。

なかなか離してくれない。

 

彼がこんな状態なんだけど、あたしは、はしたない事をつい考えてしまって、頭を振ってそれを打ち消した。

 

「シャル?」

「何でもない、何でもないの」

 

少し顔が赤くなってしまう。

それに気付いたナズナが、あたしから手を離した。

 

「シャル? どうした?」

「何でもないって言ってるじゃないの! ちょ、寄ってこないで!」

 

あたしもナズナから手を離して、彼から距離を取ろうと離れるのだが、それを追ってくるものだから焦ってしまう。

色んな資料が収められたガラス張りの本棚まで後退させられ、両手で囲われて退路がなくなってしまった。

 

「シャル?」

「な、なんで、近寄ってくるのよぉ…」

 

お前が逃げるからだろ、と言ってくるが、追ってこなければ逃げないのだ。

 

「シャル…」

「か、顔近づけな…」

 

低い声のナズナから目が離せず、彼の顔が近付いてきて目を閉じる。

唇に柔らかい感触と、温かい吐息が口の端から漏れた。

 

また、キスしちゃった…。

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