転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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65.本気で喧嘩しちゃいました

長い時間、唇を合わせている中、そんな思考に至る。

というか、長すぎ。

 

「ん、ナズ、も…!」

 

抗議の声をあげると、後頭部を掴まれさらに深いキスをされる。

何か分からない刺激と共に、呼吸が荒くなってきた。

怖くなって彼の腕を掴むと同時に、立っていられなくなって、あたしは座り込んでしまう。

その際唇が離れて、あたしは彼を見上げた。

 

「……悪い、シャル。自制が効かなくなった」

「あ、謝るくらいなら、最初からしないでもらえる?!」

 

あたしの目線に合わせて、膝をつき謝ってくる彼に怒鳴る。

心臓の鼓動が早くて、潰れてしまいそうだ。

 

「シャル、顔真っ赤だぞ」

「誰のせいだと…っ! んっ…」

 

触れるだけのキスをされ、ナズナは悪戯が成功したような笑顔を見せる。

 

「俺だな」

「…馬鹿」

 

その後本当に立てなくなってしまって、ナズナにお姫様抱っこされながら、退勤の時間までそのままの状態で、政務をこなされてしまった。

 

書類を持ってきた文官さん達の目線が凄く痛かった…。

 

◆◆◆

 

「っていう事があってね」

「俺は何聞かされてんだ、これ」

 

帰ってきてから、カヅキと組み手をしながら城であったことを話す。

それを聞いた彼女の感想がこれだ。

 

「ナズナも酷いと思わない?」

「お前の力なら抵抗できただろ。抵抗しないって事は、お前も嫌がってないって事じゃんか。まぁ、相手がナズナじゃなかったらぶち殺してる所だが」

 

ナズナじゃなかったら、あたしだって本気で抵抗している。

彼だから許したわけで。

 

「ゲロ甘すぎ。聞かされる俺の身にもなってくんない?」

「貴女だって、恋人とこういう事くらいするでしょ?」

 

そう聞き返すと、彼女は顔を真っ赤に染める。

 

「してねーわ!!」

「うわっ! 力強っ!!」

 

回し蹴りをして来たので腕で防御するが、先ほどより重さが増していた。

何とか踏ん張り、飛ばされる事は回避したが、防御した腕が痺れてしまう。

 

「ナズナみたいに破廉恥じゃねーよ! 裕里は!!」

「ナズナだって破廉恥じゃないわよ! 愛情表現が行き過ぎただけだもん!!」

 

ドカッ!!

バキッ!!

 

と、通常では考えられないくらいの音をさせながら、あたしとカヅキは本気の取っ組み合いを始めてしまった。

衝撃波が生まれ、屋敷の窓が割れ始める。

それでもあたし達は気付かないくらい、頭に血が昇ってしまったようで、さらに威力が増していった。

 

「はっ! やるじゃねぇか、ナツキ!」

「貴女もね! 今まで本気で相手してなかったわね?! 無礼じゃないの!」

 

お互い怒鳴り合う。

だがそれも、頭に衝撃が走るまでだった。

 

「いっ…!」

「痛っ!! え、何?!」

 

二人共蹲り、頭を押さえる。

あたしは何が起きたか分からず、驚いて動けなくなってしまった。

 

「師匠! 何するんですか!」

「それはこちらの台詞です。何をやっているのですか。それにお嬢様も。この惨状お分かりですか?」

 

顔を上げると、ニッコリ笑っているターニャが目に入る。

彼女が言った惨状というものがわからず、あたしは周りを見渡した。

花壇はえぐれ、屋敷の窓は破損し、植えられていた木はなぎ倒されている。

この状況から察するに、やったのはあたしとカヅキだろう。

 

「「すみませんでした」」

 

仁王立ちしているターニャに、二人して土下座する。

 

「この惨状の回帰、勿論して頂けますね? 出来ますよね、お嬢様? カヅキ?」

「「はい、喜んで!!」」

 

カヅキは回帰魔法を屋敷に施し、あたしはあたしで、敷地内の惨状を創造魔法で作った時魔法で戻して行く。

 

「あんなターニャ、久々に見たよぅ…怖いよぅ…」

 

泣きそうになりながら、魔法を行使して行くあたしに、カヅキは言った。

 

「俺、いっつもあれだったんだけど。だから言ったろ。お前には甘いって」

「うぇ…ごめんなさいぃぃぃ…」

 

もはや何に対して謝っているのかわからないが、もう二度とカヅキと本気で組み手しないと誓う。

 

怪我人がいなかったかターニャに聞いたが、自分で探しては? との答えが返ってきたので、トボトボ屋敷の中を歩いて怪我人を探した。

 

本気で怒っているらしい。

あんなターニャ見たの、小学生の時以来だ…。

 

「お嬢様、大丈夫でございましたか?」

 

廊下の向こうから、ティアが走ってくる。

胸の大きさがあたしと同じくらいで、走る度に揺れて邪魔そうだ。

 

「ごめんティア…あれ、あたしとカヅキが原因でね…怪我人いたら治すから、誰か怪我してない? ごめんねぇ…」

「お嬢様、泣かないでください! 怪我人は幸いにも出てませんから。メイド長にすっごい叱られたんですね。私も怒られた事があるからわかります」

 

ティアがヨシヨシと、頭を撫でてくれる。

優しいなぁ、ティアは。

ターニャがいたら甘やかすなと言われそうだけど。

 

「お嬢様は、ご自分の何処が悪かったのか理解出来ているから、多分これ以上は怒られませんよ」

「そうかなぁ…そうだったら良いなぁ…」

 

その日の夕飯はお義父様に出されたものと違い、結構質素な物を出された。

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