転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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66.またね

罰だから仕方ないのだけど、経緯を聞いたお義父様は爆笑して、ターニャに嗜められる。

 

「これが笑わずにいられます? うちの娘はお転婆だったんですねぇ。驚きの発見ですよ、まったく」

「面目次第もございません、お義父様…」

 

恥ずかしくて俯いてしまうと、いやいや、とお義父様から声がかかった。

 

「シャルの意外な一面が見れて、私は嬉しいんですよ。黙っていると儚げな印象なのに、芯が強くてお転婆で、礼儀を弁えている。表情も公式の場では取り繕えるのに、家ではコロコロ変わるのも愛らしい。いやー、うちの義娘は可愛いですねぇ。ねぇ、ターニャ。私と結婚して、シャルの義母になりません?」

「寝言は寝てから言っていただけませんか、旦那様」

 

お義父様からの誘いも、全く気にせずあしらうターニャへお義父様は言った。

 

「おや、その言い方だと、今晩私の寝室に来ていただけるんですか?」

「何でそんな取り方になるのですか。訴えますよ」

 

断られちゃいました、とお義父様は苦笑する。

そのやりとりを見ていたカヅキが小声で、

 

「あれ、マジで口説いてない? なんでターニャさん、ベルファさんとくっつかないの? 超優良物件じゃん」

「ターニャにも事情というものがあるんでしょうよ、知らないけど」

 

前に、お義父様に対して思っている事を聞いたけど、そっけない反応だった。

あれが彼女の本心…だとは思うんだけど。

 

「あたしも、ターニャがお義母様になってくれたら嬉しいのだけど」

 

と言ってみたが、彼女は軽くため息をついた以外、何も言葉を発さなかった。

 

ごめんなさい、話しかけてごめんなさい…。

 

◆◆◆

 

ターニャの機嫌は翌日には良くなったようで、昨日の話を蒸し返さないようにカヅキと意識共有する。

 

「そう言えば、貴女。いつまで滞在する?」

 

朝食の時、軽く尋ねた。

今日でカヅキが滞在して三日目になる。

別に早く帰れと言っているわけではないが、長期滞在するなら、食材もその分多く仕入れてもらわなければならないからだ。

 

「あぁ、今日の夕方には帰るよ。大体、お前目的で来たは良いが、驚かせてやろうと一ヶ月前から来てたんでな。そろそろ帰らないと、裕里がキレる」

「一ヶ月前って…貴女馬鹿なの?」

 

あたしがテスタロッサの家にいた時からって話じゃない。

馬鹿としか言いようがない。

 

「それ、ターニャさんにも言われた。あと、ベルファさんから養女にならないかって言われたけど断ったよ。あっちに家族残してきてるしな」

「移住してきたらいいのに」

 

何とは無しに言った言葉に、カヅキは首を横へ振った。

 

「あっちの世界が性に合ってんだ。こっちなんて、貴族とかお偉方との腹の探り合いだろ? んな面倒な事ごめんだな」

「でも将来、あたしが困ったら助けに来てくれる?」

 

首を傾げ、あたしは彼女に尋ねる。

勿論、断られる事前提の質問だった。

 

「…まぁ。お前は大事な友達だからな。請われれば、一度くらいは助けてやろう。私様は寛大だからな!」

「何、そのキャラ付け…」

 

冷めた目で見ると、カヅキはふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向く。

拗ねてしまったようだった。

 

「神様仏様カヅキ様、助けてくれますよね?」

「どーしよっかなー」

 

ぎゃいぎゃい言い合いながら、友達の急な別れを寂しいと思ってしまう。

 

カヅキはカヅキで、向こうの世界での生活があるのだから。

寂しいと思ってしまってはダメだと自分に言い聞かせる。

 

と、そんな気持ちをナズナに溢したら、

 

「そうか、なら見送りをしなくてはな」

 

書類を書く手を動かしながらそう言ってきた。

 

「そうか、見送り…」

「しないつもりだったのか?」

 

そんなわけないでしょ、と彼に言う。

 

「神出鬼没に現れたものだから、帰りも勝手に帰ってるものだと思ってしまってて」

 

家に帰ったらもういませんでした、なんて事態を想像していたのだ。

 

「そんなわけないだろう。少ししか話してはいないが、あれは律儀な奴だと思う。シャルの初恋の相手だったか? 妬けるな」

「もう、やめてよ。今は貴方が好きなんだって、何回言わせるつもり?」

 

彼は振り向き、背後に控えていたあたしの腕を掴んで、いきなり引っ張ってくる。

体勢を崩したあたしの耳元に唇を寄せ、

 

「何回でも言って欲しいな」

 

と、低い声で囁くように言ってきた。

 

「だから! そういうのやめなさいって言ってるでしょうが!!」

 

ナズナの腕を振り払い、耳を押さえて離れる。

 

本当にこの王子様は、油断も隙もあったものじゃない。

 

「俺も見送りに行こう。退勤する時に、連れて行ってくれ」

「…御意」

 

そして夕方。

退勤したあたしはナズナを連れてテスタロッサ家へ戻る。

そこには雛桔梗に似た何かを身に纏ったカヅキがいた。

 

「ナイスタイミング。んじゃ、帰るから」

「軽っ!!」

 

片手を上げてあたしにそう言う彼女へ、思わず突っ込んでしまう。

 

「要。あちらでお食べなさい。貴女の好物ばかり詰めてみました」

「お婆ちゃんみたいっすよ、師匠。ありがたく貰いますけど」

 

ターニャからお弁当をもらったカヅキは、収納魔法にそれをしまう。

 

「カヅキ。今度は真正面から城に来い。歓迎する」

「おう。次に会う時までに鍛えておけ、ナズナ。俺が本気出せるくらいにな」

 

お互いに拳をくっつけ、ニヤリと笑った。

ナズナが短期間で気を許すなんて、余程カヅキの事を気に入ったのだろう。

 

「ナツキ」

 

カヅキがあたしの名前を呼び、抱きしめてくれた。

 

「息災で。あぁは言ったが、本当に困ったら何回でも呼んでくれ。どこにいても駆けつけるから」

「うん…っ! 元気でね、カヅキ。大好きだよ…っ!!」

 

涙が零れる。

あたしの初恋の人は…友達は本当に優しい。

 

カヅキが纏った鎧から機械音が鳴り、あたしは離れる。

ブースターが入ったようで、カヅキの体が宙に浮き始めた。

 

「じゃあ、またな」

 

そう言って彼女は消える。

多分、自分の世界に転移していったのだろう。

 

「また、ね」

 

あたしは、涙ながらに彼女を見送る。

きっと、また会えると信じて。




2000文字越えたけど、悔いはない!
八月完!
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