転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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73.嫉妬されました

ロゼの近くに行き、彼を抱きしめる。

驚いた彼は、あたしとナズナを交互に見て固まっていた。

 

「大丈夫。何かあったらあたしが助けるから。ロゼは、気を楽にして戦えばいい」

「…うん。ありがとう、シャルロットさん…でも、あの、殿下が凄い睨んでるから、離れた方がいいと思う…」

 

ナズナが睨むのは百も承知だ。

だから嫉妬するなと言っていたのに。

 

「シャルで良いわ、ロゼ。あたし達、友達でしょう?」

「う、うん。シャル。あの、殿下が怖いから離れてぇ…」

 

若干泣きべそをかき始めた彼から離れる。

後ろを振り返れば、腕を組み、眼光が鋭くなったナズナと目が合った。

 

王太子なのに、表情を繕えなくなっている。

貴方、そんなに嫉妬深かったのね。

知らなかったわ。

 

まぁ、そんな眼光で睨まれてもあたしにはどこ吹く風なのだが。

 

「ナズナ、顔が怖くなってるわよ。ロゼが怯えてしまうわ」

「誰のせいだと思っている」

 

舌打ちでもしそうな雰囲気だが、今はワイバーン討伐に集中しないと。

 

「ギュオアアアアアアァアア!!!」

 

森を進んでいると、岩肌が露出している場所に辿り着く。

その上から咆哮が聞こえ見上げると、緑の鱗に覆われた翼を持つトカゲがいた。

 

「あれが、ワイバーン?」

「そうだな」

 

まだナズナがムッとしている。

これ、機嫌取らないと危ない事になりそうな予感がした。

勿論、命の危険に直結する類のだ。

 

「ロゼ、ワイバーンに対抗できる召喚獣って出せる? 高火力でも構わないのだけど」

「や、やってみる…シャル、何処行くの?」

 

ナズナの腕を引っ張り、ロゼから離れようとする。

そんなあたしに、彼は尋ねてきた。

 

「ちょっと、ね。サポートであたしの使い魔も出しておくから、少し一人で頑張ってくれる?」

「わ、わかった。早く、戻ってきてね…?」

 

レヴィを呼び出し、事情を話してロゼのサポートをお願いする。

彼女は多少呆れた目でナズナを見ていたが、溜息を一つ吐いて、行ってこいと背中を押してくれた。

 

「ナズナ、こっち」

 

ロゼから見えない位置にナズナを引っ張り込み、抱きつく。

 

「怒ってる?」

「別に」

 

声が凄く不機嫌なのに、別にという返事はおかしいだろう。

 

うーん…嫌われたかなぁ。

あしらわれてないからまだ大丈夫だなんて、そう思えないんだよなぁ。

ナズナの元婚約者の事もある。

彼は、体面を取り繕える人だ。

今すごく不機嫌だけど、今後他人に見せるような顔を向けられたら。

 

あ、泣きそう。

 

「ナズナ、あたしの事、嫌いなっちゃった、よね…」

 

涙声を必死に抑え、彼から離れた。

俯いているのは、せめて泣き顔を見られないためだ。

 

「ごめん。ロゼの事、励まそうと思って、あんな行動したけど…所構わず抱きつくのは、はしたない行動だったよね。本当にごめん」

 

謝ってはみるが、ナズナからの返答がない。

これ、完璧嫌われたな。

 

「ごめん。婚約の事は、無しにしてもらっていいから。貴方の喪が明ける前で良かった。貴方に傷が付かなくて…」

「…あぁ、くそ! 何でそういう思考になる!」

 

顔を無理やり上げられ、強引にキスをされる。

息継ぎが上手くいかなくて、彼の服を握り締めた。

 

「…違う。シャルが悪いんじゃない。狭量な俺が悪いんだ。お前が男と触れ合うだけで、相手を殺してやりたくなる。ダメなんだ、お前を誰にも取られたくない。シャル…愛しているんだ。誰よりも、何者よりも」

「ナズナ…」

 

唇を離され、彼はそう独白する。

後頭部に手を添えられ、キツく抱きしめられた。

あたしは彼の背中に手を回し、抱きしめ返す。

 

「あたしの事、嫌いにならない…?」

「なるものか。お前の行動は、私欲に走ったものではない。常に相手を気にかけ、相手を想った行動をする。その行動は尊敬に値するが、少し、俺の事も頭の片隅に置いて欲しい」

 

妬けたのだぞ、と彼は耳元でそう言ってきた。

ナズナの低音な声に、少し身震いする。

 

「シャル?」

「貴方の声、好き…。だから、耳元で囁かれると、その…」

 

自分の頬が少し赤らんでいる気がした。

シャル、と彼はあたしの名前を呼んで首元に顔を埋めてくる。

ツキンとした痛みがあり、噛まれているのだろうかと錯覚してしまう。

数分そうしていた彼は、あたしから離れた。

 

「薄くなるたび、付け直すからそのつもりでな」

「…? 何、したの?」

 

トン、とナズナの指が、先程まで痛みを感じていた場所へ指を置く。

 

「キスマーク。鏡で見るたび、俺を思い出せ」

「…貴方、女慣れしすぎてないかしら。他に愛人でもいるの?」

 

そんなものいるわけないだろ、と彼が呆れたように言った。

男性向けの知識をつけさせる本に、そんな事が書いてあったらしい。

 

このキスマークも、消そうと思えば消せる。

だけど、ナズナが常に傍へ居てくれるような気がして、消そうと思えなかった。

 

◆◆◆

 

「ロゼ、お待たせ。戦況はどう?」

「シャル、お帰り。取り敢えず、レヴィさんに言われたようにバハムート召喚してみたんだけど、どうかな」

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