ナズナの機嫌も治り、仲直りをしたあたし達はロゼの元へと戻ってきた。
彼に状況を尋ねたら、そんな答えが返ってきてあたしは上空を見上げる。
「…うーわ…大虐殺」
「数は減らせているが、ワイバーンの死骸はどう処理するべきだ?」
レヴィが何を助言したのかは知らないが、竜種最強と言われているバハムートがワイバーンを喰い殺し、その口からブレスを吐き、無双していた。
バハムートが取りこぼしたワイバーンを、人型になったレヴィが蹴り殺しているような状況に、あたしは若干遠い目になる。
それくらい許して欲しい。
ワイバーンの死骸やら血液やらが森に落ちて、死臭が溢れ返っていた。
ナズナは、そこら中に散乱しているワイバーンの死骸に、頭が痛そうにしている。
それもそうだろう。
どうやって回収作業をすれば良いのか、皆目見当もつかないのだから。
だが、ぼーっとしている暇はないだろう。
塵が積もるように、ワイバーンの死骸は折り重なって行くばかりなのだ。
ここらで少し止めねばならない。
「レヴィー! ご苦労様ー! ちょっと一回、虐殺やめてくれないー?!」
「おぉ、我が主。戻ったか。我が夫よ、我が主が呼んでいる。少し席を外すぞ」
バハムートにそう言うと、レヴィは地上に降りてきた。
ん?
今なんて言ってた?
「レヴィ、今なんて言ったの?」
「ん? 我が主と」
「違う! その前! バハムートの事なんて言った?!」
キョトンとしているレヴィを問い詰める。
聞き間違いでなければ、我が夫と言ったはずだ。
レヴィ、結婚してたの?
「我が夫だが」
「レヴィさんって、結婚してたの?!」
ロゼも驚いて、レヴィに聞いてしまう。
何をそんなに驚いているんだ、と彼女は首を傾げていた。
「バハムートは創世の頃から、妾の番だが。奴は空、妾は海と棲み分けはされてあったが、お互いのいる場所は常に把握しておったさ」
「だから、バハムートを呼べって言ったのね」
久々に会いたくなったんだな、この子。
その気持ちはわかるんだけど、こんな血生臭い場所で良かったんだろうか。
「で? この惨状どうするんだ?」
ナズナが近くに落ちてきた、ワイバーンの死骸を指差す。
今も尚、バハムートは空中で暴れ回っているようだ。
「知らん。あとは主らの仕事であろう」
「うーん、風魔法で集めてみようか。で、圧縮してギルドに持ち帰って、あっちで解凍して鑑定してお金に変えるっていうのはどう?」
手振りを交えてナズナ達に説明してみる。
その案で良いと了承してもらったので、一回ロゼへバハムートを退避させてもらう。
「我が夫も人型にはなれると思うのだが。何故しない」
「面倒なんだろう。そうでなければ、すぐになっているはずだ。お前達、ちゃんと夫婦なのか?」
空中に待機しているバハムートへ、レヴィが不満の声を上げる。
それに間髪入れずナズナが疑問をぶつけたが、火に油を注いでしまったようだ。
「はぁ? 番だが? 何か文句でもあるのか貴様」
「疑問に思っただけだ。俺がバハムートの立ち位置なら、愛しい妻であるシャルの元にはすぐ駆けつけたいはずだ。それが無いということは、お前の勘違いか面倒だと思われているのではないかと…」
「殺されたいか貴様」
「まぁまぁ…」
ナズナの胸ぐらを掴み上げたレヴィを抑える。
ナズナも、人の琴線に触れるような言い方はしないで欲しい。
「…しても良いけど、誰がワイバーンの追撃を止めるっていうんだ、って言ってるよ」
召喚獣と会話ができるらしいロゼが、バハムートの言葉を伝えてくれる。
「我が夫…それならば妾が」
「本末転倒だからやめとけって言ってるよ、バハムート」
せめて、ワイバーンの追撃が無ければ、ゆっくりお話しできる時間も取れるんだろうけど。
「じゃあ、始めるよ?」
あたしは片手を掲げた。
「
周囲から風が流れ込み、集まり出す。
それらが渦を巻き、大きな一つの竜巻へと変貌して行く。
その風に乗って、ワイバーンの死骸が巻き上げられていくのを見て、あたしはもう片手を上げた。
「
重力魔法でワイバーンを一つに集め、圧縮して行く。
一つのキューブ状になったら、その状態ごと収納魔法へ格納していった。
「
森に降り注いだワイバーンの血痕を、大渦潮で洗い流す。
それを上空で水球にしてから、あたしはそれは人差し指を向けた。
「
水球の周りに巨大な火球を放ち、爆発を起こさせる。
その熱で水球は蒸発していった。
「んー…詠唱を組み合わせた方が、もっと大きい爆発になったかしら」
「いや、ここいら一体吹き飛ばしそうだからやめておけ」
ナズナが後ろから抱きしめてくる。
魔力を大量に使う魔法を連発したせいで、魔力欠乏で倒れると思ったようだ。
ワイバーンの方を見ると、もうこちらを攻撃する意思はないようで、巣の中から出てこなくなっている。
「我が夫。我が主を紹介するゆえ、降りてこい」