「っ! 我が名は、ローゼヴィッヒ・ロードナイト・ヴァリエール! シャルロット・テスタロッサへ其方を譲渡する者なり!」
あたしの合図がわかったのか、ロゼが詠唱を変えて唱えてくれたおかげで、バハムートの譲渡は無事終了した。
詠唱が終わると同時に、ズンッ、と重力がかかる。
レヴィに加えて、バハムートへの魔力供給の負担が来たんだろう。
あたしは魔法陣を消して、地に手をついた。
「シャル!」
「っ、大丈夫。レヴィ、もう、安心して良いよ」
あたしが座り込んだのを見たナズナが、心配して駆け寄ってくる。
彼の手を借りて立ち上がり、あたしはレヴィに微笑んだ。
「…っ! 我が主!!」
レヴィも察したのかあたしに駆け寄り、抱きしめてくる。
「すまぬ、すまぬ、我が主。恩に着る…っ!」
「うん。これで、いつでも一緒にいられるね。良かったね、レヴィ」
バハムートがこちらを見ているので、ニコリと笑っておいた。
彼はこちらへ歩いてくると、あたしの前に跪いた。
「御礼申し上げる、我が主。主の命続く限り、御身をお守りすると誓おう。我が妻共々、宜しく頼む」
「えぇ。名前はそのままの方がいい? それとも、レヴィのように変えて名付けても良いのかしら?」
彼は多少微笑み、主の好きなようにと言ってくれる。
「なら、ルティとしましょう。確か、貴方の別の名前、ルティーヤーというのでしょう?」
「人間どもが名付けた名前なので、吾は何と呼ばれても構いませぬ。ルティ、拝命いたしましょうぞ」
あたしから離れ、レヴィはルティに抱きついた。
「ルティ、良い名だな我が夫!」
「リヴィア。いや、今はレヴィだったか。我が主の御前だ。落ち着け」
レヴィの名前、リヴィアっていうのか。
そっちで名前つけてもよかったかもなぁ。
「綺麗なお名前ね。貴方が名付けたの?」
「は…その通りで」
「ルティの事は、ムートと妾は呼んだおったぞ!」
レヴィが類を見ないテンションの上がりようで、本当に嬉しいんだとわかる。
「さて。そろそろ帰ろう」
ナズナのその言葉に、あたしとロゼは頷いた。
◆◆◆
「お疲れ様でしたー」
ブレスレットへ魔力を流すと、ギルドの転位門へ戻ってくる。
そこへ、クロエが手を振りながら現れた。
「クロエ、ここって魔物の買取とかしてる?」
「してますよー、どんくらい獲ったんですか?」
その質問に、あたしは肩を竦める。
「わかんないくらい」
「…ちょーっと、解体屋呼んできますね」
Zランクのあたしの話振りから、拙いと感じ取ったんだろう。
そそくさと奥の方へ行ったクロエは、解体屋だと思われる人達を数人連れてきたと思うと、用があったんだったと言ってマスターの部屋の方向へ走っていった。
「報告とかしなくていいのかしら」
「なら、吾が主の代わりにしてこよう。我が妻、ついて来い」
ルティが人型の状態で、同じく人型のレヴィの手を引いて、マスターの部屋へ向かう。
会うの数千年ぶりって言ってたから、ルティも嬉しいんだろうなぁ。
良かったなぁ。
「で、嬢ちゃん。ワイバーンをどれくらい獲ったんだ?」
「結構多いんですけど、ここで出していいんですか?」
こっちに来てくれ、と言われてついて行くと、ギルドの横に併設された作業場みたいな所に倒される。
「広ーい」
「ここは大型魔物の解体場所でよ。何体でも行けるぜ」
ロゼが辺りを見渡してそう感想を言うと、そこの責任者らしき人が胸を張って説明してくれた。
「じゃ、出しますね」
あたしはキューブ状になったワイバーンを数個出し、
「
と呟く。
キューブ状になったワイバーンが続々とその姿を元に戻し、作業場が満杯なってしまった。
「おお、豊作じゃねぇか。まぁ、見るも無惨だが」
「使い魔達が頑張ってくれまして…」
ははは、と笑っておく。
本当の事だから仕方ない。
「査定は時間がかかるだろう。何なら金はギルドカードに振り込んどくぜ」
「カードで支払い出来るんですか?」
そんな現代じゃあるまいし、クレジットカードの類など、この世界では出来ないだろう。
出来ない、よね?
「出来るぜ。数年前に、銀行、ってもんができてよ。そこに金を入れたり、引き出せたりするらしいんだ。しかも、身分証のギルドカードがありゃ、何の書類も書かずに、口座ってやつが作れるらしい。いやぁ、便利になったなぁ」
「それ、どこ発案なんですか殿下…?」
ロゼも流石にそこの知識はあったのか、怪訝そうな顔をしてナズナに尋ねる。
彼はあたしの方を見て、苦笑した。
「テスタロッサ卿とバルザック卿の共同経営だな。発案はテスタロッサ卿だと聞いてはいるが」
ターニャー!
また貴女なの?!
聞いた所で、はい私です、としか答えないのは目に見えてはいるんだけど。
あたしは頭が痛くなって、押さえる。
「我が主、戻った」
レヴィとルティが手を繋いで戻ってきた。
仲睦まじくて結構。
「大丈夫か? 我が主」
「大丈夫。うちの経営状況どうなってるか、一回帰って確認したくなっただけ…」