「嘘つけ! ヴェスタ、あんた…いいや、それよりここどこ?! あたし死んだの?!」
ヴェスタに詰め寄ると、彼の後ろから黒い羽根が生えた女性が出てきた。
黒い服を纏い、黒い日傘を持ち、表情は日傘に隠れて見えない。
音もなく現れた所を見るに、こいつもヴェスタと同類だろう。
「キーキーキーキー、五月蝿いなぁ。死んでるわけないでしょ。君には君の運命を全うしてもらわないと、あたしが困るんだよ。今は幽体離脱してるだけ。ねぇ、ヴェスタ。何であたしが作る子はこんな短気な子が多いのかしら」
「最高神に似たんじゃない?」
最高神?
ヴェスタより上の神がいるっていうの?
あたしが警戒を露わにしていると、最高神はフッとあたしの行動を鼻で笑った。
傘を持ち上げ、あたしに顔を見せる。
とても幼い少女のようで、しかし言動は年のいった女性のようで、年齢不詳感がすごい。
「別に、すぐ返してあげるよ。あたしは寛容な神だからね。でも、人間って生き物はとてもとても、見てて面白いと思うよ。関わりたいとは思わないし、あたしの手の平で踊っててくれた方が可愛げがあって好きだわ。なっちゃん、君もだよ。あたしの手の平で、ずっと踊っててね。死ぬまで、いいえ、死んでからもずっと」
クルクルとその場で回り出したかと思ったら、そんな事を言う。
しかし、その言葉に寒気すら覚えた。
「な、なんなの、貴女…」
「最高神だって言ってんじゃん。
クスクス、と笑う最高神の笑顔に、悍ましささえ感じる。
怖いという感情があたしを支配した。
「あーあー。ナツキちゃん怖がってんじゃん。最高神、男神に怒られるよ」
「別に、カヅキちゃんいじってるわけじゃないから許してくれるでしょ、これくらい」
カヅキの名前を出され、あたしは最高神を睨みつける。
それを見た最高神は、おー怖、と一言だけ呟いた。
「さて、名付けだね。君の名前はマリアライト。シャルロット・マリアライト・テスタロッサだよ。石の言葉は、自立、癒し、魂の向上、問題解決、達成だね。さて、あたしの愛し子。また逢おうじゃないか」
「二度と、ごめんだわ…」
意識が遠のいていく。
目を閉じる瞬間、嫌われちゃったなーテヘヘ、と最高神が言っているのが聞こえ、こいつも今度会ったらはっ倒す、と決めた。
次に目を開けると、心配そうに見つめるナズナとエレオノールさんの顔が見える。
「シャル、大丈夫か? 俺がわかるか?」
「シャルロットさん、声が聞こえますか?」
あたしは一つ頷いて、体が何かに支えられている事に気付く。
あぁ、ナズナが支えてくれてるんだ。
ありがとう…。
でも、なんかだるいんだよなぁ。
何これ。
「シャルロットさん、何かお名前貰えましたか?」
だるいながら、あたしはまた頷いて言葉を紡ぐ。
「マリアライト、と、最高神が…」
「最高神様ともお会いになったのですか? まぁ! ナズナ殿下、真の聖女はシャルロットさんかもしれませんわ!」
何でそんな大はしゃぎしてるんだ、この人は。
だるいのと眠気が凄くて、あたしはナズナに寝る、と一言言った後、教会の外で待っているレヴィとルティにナズナの護衛をお願いし、意識を手放した。
◆◆◆
結果的に、あたしはまた三日程寝込む羽目になり、こんな状態になっているのはお前だけだと、ナズナに驚かれた。
あたしだって、寝込みたくて寝込んでるわけじゃないんだけど。
で、久しぶりに登校したら、ロゼからすごく心配されてしまった。
「大丈夫だった、シャル? 寝込んだって聞いて心配してたんだよ」
「大丈夫よ、ロゼ。それより聞いてもいい? 貴方、最高神ってのに会った?」
コッソリ聞くと、うん、とロゼは頷く。
「黒い服着て、羽が生えてる人だよね? それがどうかした?」
「あれ、すごく性格悪いと思わない?」
ロゼは、うーん、と悩んだ後、首を横に振った。
「僕には優しかったよ。苦しかったね、辛かったね、ごめんねって。頭撫でてくれたよ」
「なんであたしと態度違うかなー? 神は全部何かしら欠陥抱えてるのかしらー?」
小声で怒ると、ロゼは苦笑する。
「シャルが素直でいい子だから、
「それは貴方の事でしょ、ロゼ」
呆れて返すと、ロゼは苦笑しながらだがナズナ殿下がこっち見てるよと教えてくれた。
振り向くと、確かにナズナがこちらをジッと見ている。
もうそろそろ戻らないと、また機嫌を損ねそうだ。
「またね、ロゼ」
「うん、またねシャル」
手を振って、あたしはナズナの隣に座る。
「何話してた」
「最高神の話。あの女、次会ったらぶっ飛ばしてやる」
ナズナは少し目を見張った後、苦笑した。
「神に対してそんな事を言うのは、お前くらいだ。だが、最高神は多分二人組だろう」
「なんでそう思うの?」
あたしが首を傾げると、彼は推測だが、と前置きする。
「ヴェスタ神は、男神に怒られるぞと言ったんだろう? そして最高神は女神だとも。最高神を怒れる神など、同じ立場の者くらいしか出来ないだろう。ならば、半身と見るか、もしくは同じ立場の神か、だな」
なるほどと思いつつ、やっぱり次会ったらぶっ飛ばすと、心に誓った。