転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

84 / 276
84.練習します

「別に強制ではありませんし。ただ、殿下と噂になっているシャルロットさんが出ないとなれば、他のご令嬢達は思うでしょうね。殿下の次の婚約者はシャルロットさんだというのは、デマだったのだと。容姿は良くても、皆の前に出る事を嫌がるとは、次期王妃としてどうなのかと…」

「出ろ、シャル」

 

ライオット先輩が言い終わる前に、ナズナがそう言う。

 

煽られて怒るのは良いんだけど、だからって即決過ぎない?

そして煽られたのはあたしなんだけど、なんで貴方が怒っているのかしら?

 

「ナズナ、貴方ね…」

「これだけ言われたんだ、お前の実力を見せてやれ」

 

あたし、貴方の前で歌った事一度もないはずなんだけど。

 

しかし、ナズナが決めたものは覆す事が出来ないのは、今までの経験上から理解している。

あたしはため息を吐いて、チラシを見た。

どうやらその歌唱大会は明後日、文化祭の最終日にするらしい。

 

「何の準備もなく出ろなんて、そんな失礼な事言いませんよ」

「それはありがとうございます。お気遣い感謝いたしますわ、先輩」

 

歌唱が下手でも話題力があれば、イベントが成功するだろうと踏んでの打診だったのだろうけど。

その挑発、受けて立とうじゃないの。

 

◆◆◆

 

「ターニャ! ちょっと練習付き合ってくれない?!」

 

ライオット先輩に煽られた日の夜。

テスタロッサの家へ転移で帰り、ターニャの部屋をノックもなしに開ける。

彼女は少し驚いた後、嘆息した。

 

「…お嬢様。そのような行儀の悪い事、教えた覚えはございませんよ」

「ごめん! 叱責はあとで充分受けます。今はそれどころじゃないんだって!」

 

あたしは今日あった事をターニャに話す。

話を聞いているうち、彼女の眉がだんだんと吊り上がっていった。

顔も般若のようになってきている。

 

「その生徒の家、潰しましょうか」

「いや、その前に実力を見せつけてやりたいの。なんか、下手だって思われて…いや、あたし歌下手だった気がするな…」

 

段々、自分に自信がなくなっていく。

 

人様に聞かせられるようなものだった?

むしろ、歌唱の教育って受けさせてもらえてたっけ?

 

「いいえ。お嬢様は、美声の持ち主でしたとも」

「それはフィルターかかってただけじゃないかな…」

 

あたしのやる事なす事、ターニャは全肯定だった気がする。

カヅキは、ちゃんと判断してくれてはいたけど。

 

「ならば、ダンスホールに行って、一回歌ってみましょう。メイド達も召集して、判断してもらいます」

「…迷惑じゃない?」

 

とんでもございません、とターニャは言う。

 

「お嬢様の一大事ですもの。あぁ、あれにも聞いてもらいましょう。雛桔梗お借りしますね」

 

あたしのアンクレットを外し、ターニャはあたしの手を引いてダンスホールに連れて行く。

道中、一人のメイドに声をかけたら、屋敷中のメイド達が集まってしまった。

 

雛桔梗を展開させると、ターニャはキーボードを打ち始め、ディスプレイ画面を表示させる。

sound onlyという画面だけだったが、向こう側からカヅキの声が聞こえ始めた。

 

『師匠、時差考えてもらえません? こっち、明け方なんですけど』

「お嬢様の一大事です。貴女の判断を聞ければ、お嬢様も安心するでしょう」

 

相も変わらず、ターニャは横暴だな…カヅキに対してだけだけど。

 

「ごめん、カヅキ…大事になっちゃって…」

『いや、お前が謝る必要なくない? 師匠が横暴なのはいつもの事だし。何があった?』

 

ターニャに説明した事を、カヅキにもする。

彼女はターニャと同じ反応をしているようで、声が若干低くなった。

 

『そいつ、殺すか?』

「物騒!」

 

何で二人とも過激な発想しかできないのかなぁ?!

 

頭を抱えて蹲っていると、メイド達の声も聞こえてきた。

 

「うちのお嬢様に対してなんて無礼な」

「アズール商会って確かに有名どころですけど、テスタロッサに比べたらまだまだなのに」

「今度旦那様に進言して、アズール商会取り込んでもらったら良いんじゃないですかね」

 

うちのメイド達も過激派だった。

お義父様はそうじゃないと願いたい。

 

「と、とりあえず、実力で叩き伏せたいから、練習に付き合って欲しい…ってお願いしただけなのに…」

『よし、歌え』

 

カヅキがそう言うと、間髪入れずターニャがディスプレイを睨んだ。

 

「どの楽曲で歌っていただくか、まだ決めていないのです。貴女は本当にデリカシーがないというか、配慮がないというか」

『へーへー、すみませんね! こちとら寝起きなもんでして! 誰かさんに叩き起こされたせいで!!』

「息を吸うように喧嘩しないでよ、二人とも…」

 

本当に、喧嘩するほど仲が良いというか、なんというか…。

 

「では、練習曲として、こちらなどいかがでしょう」

 

ダンスホールに設置されているピアノの鍵盤蓋を開き、ターニャはピアノの前に座る。

そして、その指で鍵盤を叩き始めた。

 

有名なオペラ曲。

あたしも聞いた事があるようなやつを、彼女は弾き始めたのだ。

 

「……っ」

 

あたしは大きく息を吸い、旋律に乗せて歌い始める。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。