転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

85 / 276
85.褒められました

今まで不満を口にしていたメイド達が、黙って聞き入ってくれた。

この曲は、敵の王に囚われた女性が敵の王からの求愛に対し、愛する人への貞節を守るために過酷な運命に涙を流しましょう、と歌っている曲だ。

 

本来なら旋律はバイオリンなんだけど、ここにはピアノしかないから仕方ないわね。

 

歌い終わると、ダンスホールに木霊する程の拍手喝采が響き渡った。

 

「素晴らしいです、お嬢様!」

「なんて綺麗な歌声、涙が止まりません…!」

「私、感動で、倒れてしまいそうです…っ!!」

 

そんな大袈裟な。

 

メイド達からの称賛の声に、若干苦笑いを浮かべてしまう。

あたしは、ディスプレイの方を見た。

 

「どうだった…?」

『………』

 

カヅキから一切の返答がない。

 

や、やっぱり下手だったのかしら…?

金切り声過ぎて、耳障りだったかな…。

 

落ち込んでいると、カヅキが唐突に息を吐き

 

『…すまん、聴き入ってた…』

 

と返答が返ってくる。

 

「どうだったかな?」

『これ聞いて馬鹿にしてくる奴がいたら、私がぶっ飛ばす』

 

あれ、一人称が私になってる。

ついに女性としての自覚が出てきたのね。

あたしは嬉しい。

 

「その通りです、お嬢様。もっと自信を持ってくださいませ。お嬢様は文武両道、才色兼備なのですから」

「そんなに褒めても何も出ないから」

 

これだけ全肯定されてるのに、自分に自信が持てないのは、やっぱり親の愛情がなかったせいかな、なんて心の片隅で考えてしまう。

 

あの人達は、あたしの事を部品の一部としてしか見てなかったものね。

だからこそ、長谷川があたしを甘やかしてくれていたのだけれど。

 

「本当の事ですが?」

『本当の事過ぎて、辺りが草原になるぞナツキ』

「何を言ってるかわからないわ…」

 

この練習は、夜半を過ぎるくらいまで続けられたのだけど。

授業がないからって、明日寝坊しそうだわこれ。

 

◆◆◆

 

案の定、次に起きたのはお昼過ぎだった。

しかも練習し過ぎて少しばかり喉が痛い。

 

回復魔法(ヒール)

 

少ししゃがれた声で、喉に向けて回復魔法を使う。

これで多少は痛みも引くだろう。

横を向けばナズナはもう居らず、リビングから物音がする事から何かしているのがわかる。

 

「何してんだろ」

 

扉を開け様子を伺うと、テーブルの上に載せ切れない程の食べ物の山が出来ており、その前にはナズナとルティ、レヴィがおり、一個一個吟味しているようだった。

 

「何やってるの、三人とも」

「起きたか、我が主!」

 

レヴィがあたしに抱きつこうとしたのを、ルティが腕を掴んで止める。

 

「何をする、我が夫」

「せめて手を拭いてからにしろ、我が妻」

 

ふきんでレヴィの手を拭いてあげるルティ。

拭いてもらった後、レヴィはあたしに抱きついてきた。

 

「我が主が好きそうな物を、皆で買ってきたのだ。朝食もまだであろう? たんと食べると良い!」

「いや、量多くない? 四人で食べ切れる量じゃないよね? 残ったらどうするの? てか、ナズナ。何で止めなかったのよ。というか、これいくらかけた?」

 

ナズナに話を振ると、彼は苦笑を返してくる。

どうやら、レヴィの暴走を見てるのが楽しかったようだ。

 

何考えてんの、こいつ。

馬鹿王子。

 

まぁ、買ってしまったのは仕方ない。

食べられるだけ食べて、保存魔法でも創り出して保存しておくか、と考えていたが、ナズナの反対側。

テーブルの向こう側に、アイスグリーンの髪色をした少女が座っているのが見える。

服も、シースルーの上着に、白いワンピースを着て虚げにこちらを見ていた。

 

「ねぇ、レヴィ。あの子は?」

「ん? あぁ、我が主が一口食べていらないと判断すれば彼奴にやれば良い。喜んで食うぞ」

 

いや、誰か聞いてるんだけど。

ルティの方を見れば、苦笑いを浮かべている。

 

「いや、どちら様?」

「レヴィの同僚で、ベルゼビュートというらしい。暴食の悪魔だという話だが」

 

そう紹介されたベルゼビュートは、あたしを見て薄く微笑む。

儚い少女という印象を抱かせる微笑みだった。

 

「ねぇ、お腹すいた」

 

彼女はレヴィを見て、そう一言言う。

 

「まだ待て、ステイだ。我が主、何を食す?」

 

確かに、昨日は屋台を見て回っただけで、何も買わずに帰ってきてしまった。

それもこれも、ライオット先輩が煽ってきたせいではあるのだが。

 

「んー…じゃあ、これ」

 

長いお肉の塊? が串に刺さっているものを選んで手に取る。

一体何なんだ、これは。

 

「これなんてお料理?」

「フランクフルトというらしい。羊の腸に肉を詰めたものだそうだ」

 

これがフランクフルト。

カヅキからの話にあったやつね。

確かそのまま齧り付くのがマナーだった気がする。

はしたないからと、カヅキが買ってきてくれたのは、一口で食べられるいちご飴とか、綿あめとか、焼きそばとかだった。

 

あたしは意を決して、フランクフルトに齧り付く。

 

「! 美味しい…!」

 

口周りが汚れてしまうのが難点だけど、それが気にならないくらい美味しい。

 

「ナズナは食べないの?」

 

口元をナプキンで拭いながら尋ねる。

彼は首を横に張った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。