「一人で先行しない! 何かあったらどうするの! ここまだ登山道で、洞穴なんてあるわけないのよ?!」
先に洞穴に辿り着いたロゼへ、あたしはお説教を始めた。
「うわーん! ごめんなさーい!! でも猪突猛進のシャルに言われたくはないというか…」
最後の呟きに、あたしはロゼを睨む。
「お説教の最中に、言い訳しない!」
「ごめんなさーい!!」
ベソベソ泣くロゼにため息をついて、あたしはナズナを見た。
彼は洞穴の壁に触って、何か考え込んでいるようだった。
「ナズナ、何か気になる事でもあったの?」
「いや…確かに、シャルの言う通り、ここは登山道だったはずだ。俺も何回か、王族の興行で来た事がある。こんな洞穴はなかったはず、なんだが…」
壁を触りながら、ナズナは難しい顔をする。
「自然に出来た物のように感じる。そんなはずないんだが…」
「ナズナ、土属性持ってないでしょ。わかるの?」
問うと、わからんと返事が返ってきた。
あたしも周りを見てみるけど、自然に出来た洞穴のように感じる。
入り口から奥へ向かって風が吹いていることから、まだ先があるようだった。
「雛桔梗、奥がどうなってるかサーチしてもらえる?」
【はい、我が主。マップ表示します】
あたし達が話している間、洞穴の中を調べてくれていたらしい。
うちの相棒、優秀過ぎない?
「何これ」
雛桔梗は立体データで、この洞穴を表示してくれたのだが、まっすぐ行った先が空洞になっており、更に城っぽい何かが建っているのが見てわかる。
「城だな」
「お城だね」
二人も同意見なのだが、問題はそこじゃない。
「何でこんな洞穴に、城なんて建っているの?」
これがもし、自然に出来たものだったなら、観光の目玉になっていてもおかしくない。
だが、先程ナズナも言っていたが、こんな洞穴は本来存在しないのだ。
なら、答えは一つ。
「この吹雪の原因が、この先にいるという事か」
ナズナがあたしと同じ結論に至る。
あたしは彼に頷いた。
「あたしが先行するから、真ん中ナズナ、殿ロゼね」
「え。うん、わかった…」
自信なさげに返事するロゼに、あたしは若干不安を覚える。
「ロゼ、授業でも戦闘訓練あったでしょ? 何でそんなに自信なさげなの…」
「いや、僕の運動っぷりシャルなら知ってるでしょ…」
うん、同じクラスだから知ってる。
むしろナズナもわかっているから、頭痛そうにこめかみ押さえてるし。
「何も無いところでコケるし、力の加減間違えて魔法暴発するしで、僕実技苦手なんだよ…」
「わかってるなら頑張りなさいよ…」
おかげで、彼の実技の相手はずっとあたしだ。
ナズナにも任せたいけれど、魔法の暴発を抑えるのは、彼では無理だと判断した。
下手したら、ナズナが死ぬレベルの暴発加減で、先生も匙を投げたくらいなのだから。
投げるなと言いたいが、こればかりは仕方ないか。
「わかった。レヴィとルティ呼ぶから待って」
二人一緒に呼ばないと、レヴィがヘソを曲げてしまうので、呼ぶ時は二人一緒だと決めさせられた。
主に、ルティからの嘆願で。
あんまり寒い所にレヴィ呼びたくなかったんだけど、仕方ない。
「
魔法陣を展開し、二人を呼ぶ。
二つの魔法陣からそれぞれ転送されてきた。
「さーむっ!! 我が主、寒いんだが?!」
「だからちゃんと着ろと言っているであろう、我が妻。
出現した瞬間、レヴィがガタガタ震え出し、文句を言い始める。
そんな彼女へコートをちゃんと着せた後、ルティは自分のコートを差し出した。
「ごめん、レヴィ、ルティ。ロゼのサポートお願い」
「またか小童! この代償は高くつくぞ?!」
ロゼへ威嚇するレヴィに、ルティが軽く彼女の頭を叩く。
「痛いではないか! 我が夫!!」
「我が主の命だぞ。謹んで執行するべきだ。そうだろう、我が妻よ」
それはそうだが、とレヴィがしょんぼりしてしまった。
「はい、行くよー」
今日も今日とて、引率っぽいなーと思ってしまう。
レヴィとルティがいると尚更だった。
◆◆◆
暫く歩いていると、広い所に出る。
「うわ、何これ…」
目の前に現れた城を見て、最初に抱いた感想をまた口に出した。
氷で出来た城が、そこに鎮座している。
大きさは王城であるリヒト城よりは小さいながら、確かに城と呼べる代物だった。
「城だな」
「いや、見ればわかるのよ」
あたしの疑問に答えてくれただけなんだけど、思わずツッコんでしまう。
それにしてもここは異様だ。
「ロゼ、召喚獣を呼んで警戒体勢。レヴィは、周囲を警戒。あたしが先行で中の様子を見るから、ルティはナズナを警護して。ナズナは取り敢えず動かない事」
「なんでだ」
眉を寄せ、彼は不満そうに言う。
「貴方に何かあったら、あたしが生きていけないからよ」
「お前に何かあっても、俺は生きていけないんだが?」
そう返してこないでよ。
ちょっと口元がにやけてしまうじゃないの。
「僕、いない方がいいんじゃないかなー…」
「言うな、小童。主達はいつもあぁぞ」