転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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91.攫われたようだ

ふと、目を開けた。

一切の光も差さないような暗闇の中、俺は身じろぎをする。

 

「……?」

 

体への違和感に何回か身をよじると、どうやら拘束されているようだった。

こんな事は、今までに敵方に囚われた一回くらいしかなく、俺は自分を拘束する物に触れる。

 

「縄、ではないな…」

 

どうやら、魔力を束ねたものを俺の拘束に使っているらしい。

 

惜しい。

縄なら、隠していたナイフで切って解いたものを。

しかし、ここはどこだ?

それに、俺は今まで眠っていたようだが…。

 

ぼんやりと先程までの記憶を思い出し、俺は目を見開く。

 

そうだ。

シャルとロゼと共に、霊峰の調査に来ていた。

雛桔梗が見つけた洞穴に入り、奥へ進んで城を見つけ、シャルに攻撃を仕掛けてきた女と戦闘に入り…。

 

「っ! シャル!!」

 

そう、シャル。

俺が拘束された後、駆け寄ろうとした彼女はあの女に吹き飛ばされた。

起き上がり、彼女は無事だろうかと辺りを見渡すが、俺以外誰もいないようだ。

 

「っ、くそっ!」

 

どうやら足も縛られているようで、両足で地面を蹴り上げる。

反動で体勢を崩し、俺はまた倒れ込んだ。

 

「ふふ、何してるの? 遊んでいるの?」

 

暗闇の中から浮かび上がるように、女が現れる。

妖艶に微笑むが、俺には響かない。

 

「貴様、何者だ」

「何者でもいいじゃない。ねぇ、私といい事しない?」

 

俺を起こし、しなだれかかってくる女に、侮蔑の視線を向ける。

何度も見た事がある、俺が嫌いな種類の女の顔だ。

 

俺の顔か、地位目当てで近付く、くだらない女達。

価値観が変わったのは、シャルに出会ってからだ。

 

彼女は、俺を王族と知りながら萎縮する事もなく、むしろ対等だと接してくれた。

笑い顔も、怒り顔も、泣き顔も。

全てが愛おしいと、そう思ってしまった。

 

だから俺は、シャル以外の女はいらない。

俺以外の男がシャルを奪うというのなら、戦ってでも奪い返してやる。

 

シャルは俺の運命の女(ファム・ファタール)だ。

誰にも渡すものか。

もしもシャルが俺を破滅させる女だとしても、俺はそれを喜んで受け入れよう。

 

解除(キャンセレーション)

 

耐魔力の魔法を唱える。

縄でないのなら、解く手間などない。

俺は自分の両手足を拘束していた魔法を解除し、しなだれかかっていた女を殴りつけた。

 

「きゃっ!!」

 

俺に殴られた女は、そのままの勢いで吹っ飛んでいく。

身体強化も施したのだから、無事では済むまい。

 

「ちっ…殺してはいないか」

 

感触からして、あれは半分幻影だ。

本体がどこかにいるだろうが、それに攻撃を加えない限りは、あの女は何度でも蘇るだろう。

 

立ち上がり、伸びをする。

随分あの体勢だったようで、身体のあちこちが鳴った。

 

「シルフィード。飛んでシャルを連れてこい」

 

俺は使い魔を呼び出し、飛び立たせる。

しかし、シルフィードはどこにもいけないようで上空を旋回し始めた。

 

「無駄よぉ。ここは閉ざされた空間なのだから。それにしても、貴方酷いわね。見目がいいから、良い思いをさせてから食べてあげようと思ったのに」

 

吹き飛ばされて倒れている女の横から、同じ姿の女が現れる。

俺の予測は、正しかったらしい。

 

「良い思い? それはお前だけだろう。それに、貴様の様な女はシャルの足元にも及ばない。お前より、シャルの方が何十倍、いや、何百倍もいい女だ」

 

女はそう、と呟いて俺を見る。

途端、体が動かなくなった。

 

これは…魔眼か。

石になっている所は見受けられんから、ただ身体の拘束をするだけに留めているのか。

 

くっ、と俺は笑い、亡くなった兄上を思い出す。

 

兄上も魔眼持ちだったが、その魔眼が暴走して亡くなったと、親族であり、兄上を静養させる名目で連れ出したテレジアの当主。

レフ・スフェーン・テレジアが訃報を伝えてきた。

 

俺は未だに、魔眼の暴走で兄上が亡くなった、など信じてはいない。

亡くなったのは事実だろうが、テレジアにはいい噂がないからな。

 

「何を笑っているの? 貴方、自分の状況わかっている?」

「少し現実逃避をしていた。こんな状況を、俺の女が見たら怒り狂うだろうとな。後で俺もどんな叱責を受けるかわからん」

 

肩を竦めた女が俺に近付き、頬に手を添えながら口を開ける。

途端、眠気が俺を襲った。

 

こいつ、魔力を吸い出しているな…。

まずいな…意識を保たなければ。

 

口の端を噛み、血が滲むまで食いしばる。

 

「私、男の人の精気や魔力が好きなの。貴方が死んだ後は剥製にして飾ってあげるから、安心してね」

 

妖艶に微笑む女に、俺は嘲笑を返した。

 

「それは…全く安心出来ない提案だな。お前の手元で可愛がられるなど、反吐が出る」

「お喋りで可愛くないお口は塞いでしまおうかしら」

 

口付けを女が落とそうとしてきた瞬間、空間が揺らぐ。

続いて体に響くような衝撃が来た。

 

「な、何?!」

 

女が動揺を露わにするが、俺は安堵する。

そして、女をせせら笑った。

 

「お前の誤算は、シャルを殺しておかなかった事だな。俺の妃は、怒らせると何をするかわからんぞ」

 

一呼吸置いて、俺は宣言する。

 

「俺をシャルの目の前で攫った時点で、お前の死は確定している」




ナズナ視点でした。
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