ひとしきり泣いた後、あたしは立ち上がった。
スキーウェアを脱ぎ捨て、とても冷たい声で言う。
「レヴィ、ルティ。起きよ」
二人が起き上がり、あたしの前に頭を垂れた。
彼らは何も言い訳などせず、あたしの沙汰を待っているようだ。
「この体たらく、何とする」
「面目次第も無く」
「申し訳ない、我が主」
あたしは今、とてつもなく怒っている。
彼らに対しても、自分に対してもだ。
「
「我が主が、動揺しているのに気付いて…」
そう言うレヴィの、顔面を掴む。
「私は、追撃しろと言ったか?」
「…いいえ。我が主は何も申しておりませぬ。この不手際、我らに雪がせていただきたく…」
ルティが冷や汗を垂らして言った。
あたしはレヴィを投げ捨てる。
あたしが本気で怒っていると、彼らは理解したようだ。
自分への不甲斐なさに押し潰されそうだ。
彼らに八つ当たりをしているのもわかっている。
しかし、もう嘆いている暇などない。
ナズナが、いなくなるかもしれない。
そんな恐怖があたしを突き動かす。
だから自然と、彼らに対して冷たい視線を投げかけてしまった。
あたしは二人に命を下す。
「レヴィはロゼを退避させ次第、戻ってここを徹底的に破壊しろ。何をしても構わん、私が許す。ルティは私に続け。ナズナの命が亡くなっていたら、わかっているだろうな」
「「はっ!!」」
レヴィはロゼを抱え、転移していく。
あたしはルティを引き連れ、城のホールへ足を踏み入れた。
雛桔梗を全展開させ、スラスターを全開にして飛ぶ。
壁や扉は力任せに、魔法を放ってぶち壊していった。
【我が主。ナズナ様の反応は上に】
「そこまで飛べ、雛桔梗。一刻の猶予もないと知れ」
御意、と雛桔梗が言い、あたしの魔力が半分持っていかれる。
今までとは段違いなスピードで、上層部分へと上がっていった。
「ルティ、付いてきてるな?」
「は。我が主」
ルティに話しかけると返事が返ってくる。
上層部から滲むように闇が這い、そこから魔物の群れが出現した。
「露払いをしろ」
「御意」
あたしの後方からとてつもないエネルギーが集まっていくのを感じる。
放たれる瞬間、あたしは横に避けた。
あたしの真横を、ルティのドラゴンブレスが通り過ぎていく。
「私ごと焼き殺すつもりか、貴様」
「我が主が避けられると、信頼していたまででございます」
そう言うルティに、あたしは舌打ちを返す。
さっきレヴィを投げ捨てたから、意趣返しのつもりなのだろう。
愛妻家を怒らせると、怖いという事か。
「雛桔梗、武装展開。全力で焼き払え。私が渡した魔力、まだ残っているな?」
【はい、我が主。ですが、飛行にかかる魔力も消費する事になります。実行しますか?】
その言葉へ、あたしはニタリと笑って返した。
たったそんな事を、今気にすると思ったのか。
「構わん。撃て」
【全武装展開。掃射します】
あたしの周りに銃火器が召喚され、周囲を破壊していく。
スラスターが止まり、自由落下が始まろうとしていた。
あたしはそれへ、重力魔法を使い止める。
「…見えた」
最上階と思しき場所に、黒色の結界らしきものが現れた。
雛桔梗も、ナズナはそこだと言う。
あたしは片手をそこへ向けた。
「我が前に扉は存在せず。我が歩みを止める事叶わず。我の行く道阻む事、死と同義と心得よ!!」
手の内に魔力が集まる。
あたしは、魔法を唱えた。
「
バリン、と結界に罅が入り、あたしはそこを勢いをつけて蹴破った。
土煙を上げながら中に入り込むと、ナズナにしなだれかかる女と、口の端から血を流している彼の姿。
「ナズナ…」
「派手な登場だな、シャル…。流石は、俺の妃だ」
喋る事すら辛そうな彼の姿に、血の気が引いた。
それでもあたしを心配させないよう、弱々しげながら微笑んでくれる。
あたしは女に殺意を向けた。
「いつまでしなだれかかっているつもりだ、女。私の夫だ。離れろ」
「ふふふ、こわぁい」
そういう女の足を、召喚した刀で叩き斬る。
ガクリと、立てなくなった女は崩れ落ちていった。
「質問してやる、ありがたく思え。ナズナをこんな状態にしたのは貴様か」
崩れ落ちた女の腹に足をかけ、刀を女の腕の少し上で止める。
「足が無くなっちゃったわ。歩けないじゃない」
「お前が答えていいのは、YESかNOかだ。それ以外の言葉を、許した覚えはない」
そう言い、あたしは女の腕を切り落とした。
「もう一度言う。ナズナをこんな状態にしたのは貴様か」
女はニヤニヤと笑うだけで答えようとしない。
その表情に、あたしの殺意は高まった。
「質問に答えないという事は、よほどその舌いらないと見えるな?」
「!?」
女の腹にかけていた足に全体重を載せ、歯が折れる勢いで口の中に手を突っ込む。
そして有無を言わさず舌を引きちぎった。
「………っ……っ………っ!!!」
「声無き声で叫んだところで、私に届くと思っているのか下郎」
これを書いている時のBGMは、ミスアンドロイドのシアターDでした