転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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97.覗かれました

ほんのたまにだから、あたしが常に気を張る事も出来ず、爆弾が投下される事もあった。

 

「何の事だ?」

「いや…もういいや。というかナズナ、あたし今思い出したんだけど。えぇ、なんで今まで忘れていたのかしら、っていうくらいに」

 

扉の前に背を向けているだろうナズナが、何だと問いかけてくる。

 

「あたし、貴方から告白された時、言ったわよね? ちゃんと婚約者になるまでは、キスするのこれ一回で我慢しろって。今まで流されてたけど、貴方何回やった?」

「…………」

 

ナズナが急に無言になった。

あたしはジト目になりながら、髪を洗い始める。

 

「確かに流されたあたしも悪いわよ。でもね、我慢して頬とかにしてれば良かったのに、ずっと唇じゃない。嫌とかではないんだけど、なんでそんなに我慢できないのかしらと」

「…お前が魅力的だからだ」

 

ボソッと、ナズナが呟いた。

シャワーから流れる水音でも、聞こえるくらいに。

あたしが魅力的だと、彼は言った。

 

「………へ?」

「お前が魅力的すぎて、理性を抑えるので精一杯なんだ。抑えた上での、あれだ。抑えなくていいなら、もう襲っている。その…一緒に寝ている時も、少し興奮して寝付けない時があるくらいだ」

 

泡を洗い流している間、あたしは思う。

 

じゃあ、あの時なんでレヴィ達を送還させなかったんだ貴方は。

寝付けない?

興奮して?

だから、寝起きが悪い時があるのか。

納得…

 

「出来るわけないでしょうが!!」

「?!」

 

ナズナが驚いて肩を揺らした。

それでもこちらを振り向かないのは、偉いと褒めてやる。

 

「な、何がだ?」

「もう、今日からレヴィ達には還ってもらうか、テスタロッサ領の家にいてもらうか、どっちかにしてもらう! ナズナと一緒に寝ない!」

 

ガチャっと音がして、ナズナが慌てた様子で入ってきた。

 

「それは困る! シャルの温もりがないと俺は…」

「……っ! 出てけーっ!!!」

 

湯煙で見えなかったと信じたいが、シャワールームにナズナが入ってきた瞬間、あたしは水柱(スプレッド)を唱えて彼にぶつける。

水圧で吹き飛んだナズナを涙目で睨みつけながら、シャワールームの扉を力任せに閉めた。

 

◆◆◆

 

「すまなかった、シャル! だから部屋別々は勘弁してくれないだろうか!」

 

お風呂から上がり、アルテミシアさんの服をリメイクしたものを着たあたしは、土下座しているナズナを、ソファーに座りながら冷たく見下ろしていた。

経緯を聞いたアルテミシアさんは頭が痛そうに、クロエは爆笑して床を転がりまくっている。

 

ちなみに何故クロエが呼び捨てなのかは、彼がさん付けを嫌がったからである。

 

「ひーっひひひ!!! ちょ、それ、事故ぢゃ、ねぇ! 明らか、故意過ぎる!! ひひひひひっ!!!」

「…クロエ、痴話喧嘩ぐらいで笑うな。あと殿下、そういうのは帰ってからにしてくれないか。ここはお前達の私室じゃない」

「それはすまないと思ってはいるが、俺には喫緊の事態だ。流石にシャルに嫌われたら俺は生きていけない」

 

アルテミシアさんが、あたしの方を見る。

鬱陶しいから、早く決着をつけろと目で訴えてきた。

 

「……念書を書いてもらいます。お義父様の前で」

「…ベルファの? 内容は?」

 

チラ、とナズナの方を見るが、彼は一切顔を上げずに問いかけてくる。

 

「それは向こうに着いてから。アルテミシアさん、クロエ。あと報告する事はありますか?」

「いや、ない。ご苦労だった」

 

あたしは立ち上がり頭を下げた後、ナズナを伴って転移でテスタロッサの家に帰った。

 

「お嬢様、お帰りなさいませ。冬休みにはまだ早いと思いますが、どうなさいましたか?」

「ただいま、ターニャ。お義父様はいらっしゃる?」

 

ナズナが後ろにいる事に気付いたターニャが、彼に対しても頭を下げる。

 

「いらっしゃいませ、ナズナ殿下。お久しぶりでございます」

「久しいな、ターニャ。カヅキの時以来か。息災か」

 

はい、と答える彼女に、あたしは言う。

 

「ターニャ、紙とペン用意して」

「はい、只今。それと、旦那様は執務室で領主の仕事中でございます。そちらの方にお持ちします」

 

紙とペンと言っただけで、ターニャはあたしが何をしようとしているか、理解出来たようだ。

あたしは屋敷の長い廊下を歩き、お義父様の執務室の前へ辿り着く。

勿論、背後にはナズナがいる。

 

「お義父様、シャルロットです。只今帰りました。入っても宜しいでしょうか?」

「シャル? 良いですよ」

 

了承を得たので、あたしはドアノブを回し部屋の中へと入った。

落ち着いた調度品が並ぶお義父様の執務室、その奥の方に立派な机があり、お義父様はその机に向かうように座っている。

あたしの姿を見たお義父様は、その背後にいる彼にも目を向けた。

 

「おやおや、殿下を連れてくるなんて一体どうしたんですか? シャル。それに、冬休みまではまだ日があるでしょうに。私が恋しくなりましたか?」

「お義父様にお願いがあって参りました。ターニャ」

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