あたしの後に入ってきたターニャが、あたしに紙とペンを渡してくる。
あたしは魔法を使い、紙にペンを走らせた。
出来上がった文書をナズナとお義父様の元へと渡す。
「ふむ…」
お義父様はそれを見て、少し眉を寄せた。
そしてあたしへと尋ねてくる。
「この条件、ナズナ君には厳しすぎませんか?」
「何がでしょう? 守っていただけるなら、殿下に何一つ不利益などございませんとも。破られた場合のみ、適用されるのですから」
ニコリと笑うあたしに、うちの娘は手厳しいですねぇ、とお義父様は苦笑いをした。
背後にいるナズナは、文書を読んだ後あたしの方を見る。
「シャル、良いのか?」
「破ったらどうなるかの念書ですもの。良いも悪いもないわ」
念書の内容は以下の通り。
1、喪が明けた暁には、シャルロット・マリアライト・テスタロッサを婚約者とする事
2、過剰なスキンシップは禁止とする、ただしシャルロットが許可した場合は除く
3、度が過ぎた行動は禁止する
シャルロットがダメだと言ったら従う事
4、無事婚姻まで成立したら上記は破棄して良い
これらが守られない場合、ナズナはシャルロットを諦め、手放す事。
シャルロットは専属護衛と親衛隊を辞め、領地の経営に専念する事。
シャルロットが誰と婚姻してもナズナ以下王族は口を出さない事。
これが二人に渡した文書の内容だ。
どこが手厳しいというのだろう。
ナズナはそれに署名し、お義父様に渡した。
お義父様も自分が持っていた方に署名し、それをナズナへと渡す。
2枚があたしの元に戻ってきたので、一枚をあたしが、もう一枚をナズナに返した。
「破ったらこうなるからね。取り敢えず、あたしの貴方への評価は、今マイナスに行ってるから。これ一個でも破ったらどうなるかお分かりよね、殿下」
「わかっている。すまなかった」
ナズナがあたしに謝罪してくる。
腰を90度に曲げて。
その姿を見て、お義父様は驚いたようだった。
「王族に腰を折らせるとは…シャルも罪な女ですねぇ」
「だって、お義父様。裸見られたんですもの。これくらいしてもバチは当たりませんわ」
あたしの言葉に、ターニャとお義父様の眼光が光る。
「ナズナ君、ちょっと私とお話ししましょうか?」
「旦那様。私も殿下にお話がございますので、3人で話しましょう。リアラ、リリス。お嬢様をお部屋へ」
お義父様の執務室から二人に連れ出され、手を引かれながら部屋に連れて行かれた。
今頃ナズナは二人からお説教されている事だろう。
◆◆◆
学校の方には、アルテミシアさんの方から連絡がいっているようで、一週間くらい休んでいいと彼女から言われていた。
まさか1日で解決するとは思ってはいなかっただろうが、この機会にゆっくりさせてもらおう。
一週間のうちに期末試験があり、来週は終業式がある。
それまでここでのんびりするつもりだった。
ナズナ?
城に返しますけど、何か?
夕飯の時間になり、呼ばれて食堂に行ったが3人の姿はなく。
まだ話し合いというお説教が続いている事を察した。
夕飯も食べ終わり、お風呂にも入れてもらい、部屋でゆっくりしていると、扉がノックされる。
はい、とノックした主に返事をしたら、
「あの、シャル…その…」
と元気がないナズナの声が聞こえてきた。
「何か用?」
「いや、その…」
あの念書があるせいで、強気にいけなくなったのだろう。
少し反省してほしいのだが、それを理解しているのだろうか。
「何?」
扉に近付き、如何を問う。
ナズナは暫く無言だったが、スリ…と扉を少し擦る音が聞こえ、
「…いや。声を聞きに来ただけだ。すまない。お前がいてくれるだけで、俺は充分だ。だが、これだけは言わせてくれ。愛してる、シャルロット。もう夜も更けてきた。最近寒くなってきたからな、風邪をひかないように気を付けろ。じゃあ、また一週間後に。おやすみ」
そう言い、彼は扉から離れた気配がした。
あぁ、本当にあたしは甘い。
あんな事を言われたら、少しは許してしまうじゃないか。
「…ナズナ」
扉を開け、彼が去って行こうとする後ろ姿を見る。
ナズナは振り向きこそしなかったが、立ち止まっていた。
「…項目2。あたしが許可したら、いいってやつ。抱きしめるくらいなら、許す…」
言い終わると、彼は踵を返してあたしを抱きしめてくる。
「…シャル。シャルロット、ありがとう…」
「別に、ここまでなら構わない。それに…ごめん、少し寂しくなってしまったの…」
あたしもナズナを抱きしめ返し、彼の体温を感じて幸せな感情を感じてしまった。
「あぁ。俺も寂しい。シャルと離れたくない」
「過度なスキンシップじゃなければ良いのに…貴方加減ってものを知らないから…」
上目遣いで睨む。
それを見た彼は、困ったように笑った。
「お前が愛おしいんだ。他の女で練習ってわけにはいかないだろう?」
「そんな事したらはっ倒すわよ」
しないさ、と彼はあたしの頬に触れる。
「…キスは、どこまで許される?」
イチャイチャさせるのたのしー