転生したら魔法少女だった件   作:TYPE-HAMELN

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地位向上編
01話 現状を確認しよう


「知らない天井だ」

 

オレは目を覚ます。もう二度と眼を開くことはないと思っていた。なぜならば死んだからだ。

死んだはずだった。それでもオレは生きている。どうしてもそれが信じられなかった。

 

「脈がある。心臓の鼓動が聴こえる。手の感触がある。音が聴こえる。目が見える。匂いがする。味もする。これは嘘をついている時の味?」

 

オレは突然の奇行にビックリ仰天している美少女に尋ねる。

 

「君はひょっとして天使?」

 

その美少女はそれぐらいに美しかった。きっとここは天国なんだろう。

時代は進んだ。天国にだって天井くらいあるさ。妙に現代ちっくであってもこれが現実のはずがない。

オレは生きているとするなら間違っても病室でもないこんな場所にいるわけがないだろうし、

家族や友達、ましてや知り合いですらない初対面の、それも医者でも看護師にも見えない少女がこんな側で、しかも明らかにオレに見ているなんてありえない。

だからこれはきっと死に際に見る夢。もしかしたら奇跡的に生きていて、それでも植物状態になっていて起きることもできない状態だとか、そういうあれだろう。

 

むしろ、そうでもなければオレが困る。死んだと思ってたのに、眼を開いたら絶世の美女ならぬ絶世の美少女がいて、

死んでるからいいよね!とばかりに、現状確認のフリをして女の子の体を触れたりなめたりしてしまった。

未成年の少女にそんなことをしてしまったのだ。いくらなんでも許されないだろう。なんでそんなことをしてしまったのか、まあいいか。

そんな現実逃避も一瞬で、現状は刻一刻と移り変わっていく。それを体で思い知ることになろうとはこの時のオレは考えてもいなかった。

 

「いきなりナニをするんですか!それにミコは天使じゃありません!ちゃんと神宮寺神子っていう由緒ある名前があるんですよっ!」

 

彼女、いや神宮寺神子さんはそういって起こっていた。プンプン!という擬音がつきそうなその態度は見ていてとても愛嬌のあるものだ。

しかし、これはまずいな。怒っていはいても可愛らしいその姿に和んでいる場合ではない。

オレは冗談ではすまないようなことをしてしまった!現実逃避をしている場合ではない。何とかしてごまかさなくてはッ!

 

「いやー、神宮寺さん。これはすまないことをしてしまったね。何分、突然のことで私も混乱しているんだ。何か事情を知っているのであれば教えてはくれないかい?」

 

そういって、申し訳無さそうな、困ったような苦笑をしてみせる。

美少女と話しているとこっちまで美人さんになったような気分になる。それになんだか若返るような感じがする。

なんだか声の調子も良い。いつもより高い声が出ていた。なんだか自分の体じゃないみたいだ。

それも仕方がないだろう。あんな事故にあったんだ。認識に齟齬が発生していてもおかしくはない。

そう思うと自分の体に欠陥が生じているんだろうなというショックがオレを襲う。健康ではないということは、普通ではないということはなかなかに堪えるものだ。

 

そんな深い悲しみのオーラが漏れ出ていたのだろうか。美少女がこちらを気遣う声色で話し出す。

 

「混乱されているというのはわかりました。お気持ちはお察しします。それでは私から結論だけお伝えします。」

 

 

―――あなたは魔法少女になりました

 

オレはその言葉に首をかしげることしかできなかった。

 


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