レーザー銃の傭兵とダボールスナイパーな人形 作:ジャック・アヴェンダドール
スケアクロウを撃破し、ブラボーと合流する為に急いでいるジョセフ達は今、森の中を駆け抜けている。
「あとどれぐらいで着くんですかぁ?」
「もう少しで着く。我慢してろ」
89式が移動距離の長さにヘタレているのを一蹴して、移動を続ける。街を出るまでは散発的に敵と遭遇していたが、森に入るとそれも無くなった。少しすると前から強い光が照らされてくる。そこを抜けると、小さな飛行場があった。
「ここがランデブーポイントの……待て!」
ランデブーポイントとして設定していた場所に到着したジョセフ達4人は飛行場の建物の前に鉄血の人形が居るのを発見する。それらは建物の中を覗いているような素振りだった。
「ちっここにも来やがったか」
「向こうはまだ気づいてないようね」
64式自の言うように建物の中の方の意識が向いているようで、こちらには気づいていないようだった。それならばとピリアにアイコンタクトを取る。すると彼女は静かにパイボットを立てて、狙撃体勢に入った。左腕の出血はとうの昔に収まっていたようだ。
「外すなよ?」
「プレッシャー与えないで」
静かな銃声が一発鳴る。遠くに居て、尚且つ隊列的に一番後ろの者を正確に撃ち抜いた。そこから先はピリアの独壇場だった。一体一体丁寧に撃ち抜いて、振り向いた瞬間を撃ち抜いて残り3体の所で気付かれた。だがそこからは64式自と89式が撃ち始めて、ついには飛行場に居た敵は一掃されていた。終わった後、ピリアは目を閉じて頭を手で扇いでいるのにジョセフは気づいた。
「ふぅ……初めてやったから頭が熱いぃ……」
「基地の中まで我慢しろ」
ジョセフが肩を貸してピリアを担ぐと、89式が質問しようとしていた。
「それよりも今のはなんですか?」
「あぁ…私の特技みたいな物かな」
「特技?」
「大雑把にぃ言っちゃうとぉ、敵の弱点をぉ正確に狙うのとぉ素早く撃つのとをぉ両立させたモードぉ……」
ピリアは喋るのもやや億劫になっているようで、これ以上は口が開かなかった。それを見たジョセフは歩く速度を早める。早いとこ冷却をしなければ、彼女は戦えない。この部隊の貴重なマークスマンであると同時にジョセフのパートナーであるが故に彼女には復活して欲しかった。
建物の中に入ると、一階には誰も居ない。ピリアを窓から隠すように下ろしてから、ブラボーを探し出す。すると上から物音が聞こえる。64式自と89式にハンドサインで一階に待機させて、ジョセフは階段の方へ警戒しながら移動すると銃口を向けるのと同時に向けられた。
「もうここま…で?」
「……!待て、味方だ」
ジョセフに銃口を向けたのはM1911だった。幸いお互いに認識し易い格好をした者同士だった為、お互いに撃つことは無かった。
「それで状況は?」
「少し前から鉄血の人形が付近に現れ出し始めて、こちらの装備ではやや厳しかったんです。あ、救助対象の人達は今2階で寝かせています」
「大体把握した。物資の補給は出来そうか?」
「そちらに関しては問題ありませんよ。元々、軍かPMCの施設だったらしく、弾薬は十分残っていました。ですが……」
「何だ?」
言い淀むM1911を問いただすジョセフ、その顔には少し疲労の色が見え始めていた。
「ジョセフさんが使えそうなエネルギー補給機みたいなのはありませんでした」
「だろうな」
彼には正直想定はしていた事だ。元々一点物な為補給手段が減っている事は覚悟の上だった。それとアーキテクトから戦場でのレーザー銃用のエネルギーを確保する手段は聞いていた。
「外のリッパーを中に引き入れるか……」
「大丈夫ですの?」
「手早く行きたい。手伝って欲しい」
「分かりました!」
ジョセフは下に移動して、外に出ると入り口付近に倒れているリッパーを持つ。かなり重かったが、M1911の補助もあってなんとか中に入れる事が出来た。
「アーキテクト、聞こえるか?」
《どうしたの?ジョセフ》
「リッパーからエネルギーユニットを出したい。どうすればいい?」
《リッパーの場合は首筋の所にロック関係のキルスイッチが仕込まれているからそれを押して》
「そんな感じはしな……あーあった」
首筋に精巧に隠されていたボタンを押すと、プシュという音が鳴る。それと同時に、背中部分に隙間が出来た為開けてみると、黒くて機械的な物を張り巡らせていた。
「何処を取ればいい?」
《人間で言う所の胸骨から肋骨にかけての所、そこのカバーを外すとユニットがあるよ》
言われた通りに黒いカバーを外す。感触としては防弾アーマーに使われるプレートのような感じがした。中には、危険を示すマークが貼られたエネルギーユニットがあった。だがまだ供給自体はされているようで外すと爆発もあり得る状態だった。
《エネルギー関係のスイッチは赤いボタンがあるから、そこを押すと外せるようになるよ》
押すとカチッという音がした。それと同時にエネルギー供給が止まった。ゆっくりと取り出して机の上に置く。
《これで取り出し方はOKだね。あ、鉄血の下級人形は今の方法で大体いけるよ。ただ装甲兵は正確には正規軍の装備だから、やり方が変わるから注意してね》
「分かった。それでここからどうすればいい?」
《エネルギーが減っているマガジンを供給口……左側の所に差し込み口があるんだけど分かる?》
「……ここか」
《そこにそのまま差し込むと、マガジンへの供給が始まるよ》
マガジンを差し込むとカチッという音がする。どうやらこれで良いらしい。数秒後、またカチッという音がする。エネルギーの接続が切れたようだ。
《チャージは数秒で終わるよ。ただ持ち歩くにはちょっと重すぎるから、その辺は要改善ってとこかな》
「思ったより溜まるのが早いな」
《それ一個で3マグ分は補給出来るよ》
「余裕があったら、戦闘中でも出来るな」
《余裕があればね》
「ま、そんな隙は出来ないだろうがな。そいじゃ、通信切るぞ」
《またなんかあったら連絡してね》
「分かった」
マガジン3つ分を補給し終えたジョセフは、ピリアの様子を見る。まだ冷却が終わってないようで湯気みたいな物が彼女の身体から出ていた。それに先程のスケアクロウとの戦闘において受けた傷がまだ残っているのが目についた。
「包帯はあるか?」
「ありますわ、確かここに……はい!」
「ありがとう……よし、これでいいか」
M1911に包帯を貰い、ピリアの腕に巻く。手慣れた様子で応急処置を施していく。
「慣れているんですね?」
「良くあるからな」
「ん……んぅ……ジョセフ?」
ピリアが起きた、まだ湯気が出ている辺り、冷却自体は終わっていないようだが喋ることは出来るようだ。
「目が覚めたか?」
「まだ、身体が動かないけどね……」
「なんか冷やす物でもないか漁るから待ってろ」
まだ身体が熱く、動かすのは億劫なようだ。何か無いかジョセフは色々探り出す。
「私達は2階を探します。ジョセフさん達は一階を探してください」
「あいよ」
そうして、小さな飛行場の施設の中を探ってみると、誰かの個室だったであろう場所にて、ジョセフにとって見た事の無い言語で書かれた物が置かれていた。
「何だこいつは?」
「ジョセフ、何か見つけたの?」
「こんな物を見つけたんだが……読めるか?」
64式自に手渡すと彼女は驚いたのか、歓喜に打ち震えたのかどっちにもつかない様子で読んでいた。
「これ、日本語よ⁉︎ というよりも冷えピタって探している物じゃないの⁉︎」
「日本語?ってなんだ。ってかコレで本当に冷やせるのかよ」
「え、えぇ、効果は保証出来るわ。それよりも早いところ彼女に貼ってあげなさい?」
「あぁ分かったよ」
目的の物も見つかったので、ピリアの元に行って箱を開ける。すると小さなシートのような物があった。ジョセフにはそれの使い方を知らないので、どうすれば良いのか分からずにいると、89式が近くに寄ってきた。
「あれ?冷えピタなんて良くありましたねぇ」
「こいつの使い方知らねぇか?」
「それでしたら、これを剥がして首の頸動脈の所に貼ればいいですよ。他の場所も有りますけど、そこはここでやったら皆んなに撃ち抜かれますからね!」
「ん?あぁまぁ分かった」
冷えピタを頸動脈の部分2箇所に張り付けておく。ピリアの赤らんでいた顔が段々と赤みが消えて行く。
「あぁ…大分楽になってきたぁ…」
「結構効果あるんだな」
「冷えピタですから」
冷えピタに対する謎の信頼をしている89式、だが効果は絶大だったらしくピリアはいつもの様子を取り戻した。ジョセフはそれを穏やかにみていた。
「よし、暑いのも去ったし万事OKかな!」
「じゃあ救助対象者の搬出するか……」
準備が整ったので、救助ヘリで人質を輸送する事を考える。
「誰か!救援は呼んだか?」
「周囲に敵が居たので、まだ呼んでませんわ!」
「じゃあ今から呼ぶぞ!」
「はーい!」
遠くにいたM1911に声を掛けておくと、まだ要請はしていないらしいので、ジョセフがする事になった。彼は無線機のチャンネルを変えて、SB07のグリフィン基地に連絡を掛けた。
「こちらアルファ1、HQ聞こえるか?」
《こちらHQ、アルファ1どうぞ》
「人質の救助に成功、現在ランデブーポイントにて待機中。救助用のヘリを要請する」
《了解、そちらに救助ヘリを向かわせる。それと一つ確認事項がある》
「どうした」
《1時間前より、一切外部に出る気配の無かった旧市街地から鉄血兵が流れ出ているのをドローンが捕らえている。何かやったか?》
ジョセフはその無線を聞いて一つ思い当たる。スケアクロウとの戦闘で不気味に笑いながら言っていた、彼女を倒したのが間違いである事だと。もしかしたら何かトラップの類いでもあったのだろうかと考えながらその旨を伝える。
《スケアクロウを倒したのが不味かったな。指揮系統が乱れてそれまで旧市街地に留める命令だったのが無効化されたんだろう。君達にはもう一つ任務を与える。救助対象者をヘリに引き渡した後、周辺に散らばった鉄血を駆逐せよ》
「正気か?俺たちの総戦力を思い出せ」
《ハイエンド一機墜としているのに何を言っている》
「偶然上手く行っただけかもしれんぞ?なんにせよ殲滅作戦は…」
その時上から声が掛かる。M1911とは別の声だ。そちらに目を向けると、薄い緑色のツインテールの少女が呼びかけていた。持っている銃からUziだろうか。
「また鉄血の連中が来たわ!」
「クソ!聞いたな?早いところこっちにヘリを寄越せ!いいな!」
無理矢理、無線を切って銃を構える。同様に64式自、89式も施設の入り口で銃を構えている。ピリアは扉から少し離れた場所で待機している。ブラボーはM9が人質の監視に付いたのでUziとM1911が戦列に参加する。
「無茶はするなよ?」
「分かってるよ」
ピリアに声を掛けて、入り口の前に立つ。マガジンを再度確認する。フル充填されているのを確認したら軽い準備運動をする。
「脚に自信のある奴はいるか?」
「なら私が行けるわよー」
「なら俺と一緒に飛び出せ、俺が左、Uziが右だいいな?」
「分かったわ」
「では私はその援護をしますね」
軽いノリでUziが名乗り出た。それと同時にM1911が援護を申し出る。機動力に優れたSMGとHGの人形なら前線構築も容易だろう。それができたら次は戦線の維持、拡大だ。
「私達はどうすればいいかしら?」
「64式自と89式はM1911のスモークが遠くに貼られたら出ろ。それまではここで待機だ」
「私は各方面の援護って感じ?」
「そうだな、ピリアは敵が多い方への支援を頼む」
それぞれの役割を確認し合って、準備が進んでいく。
「弾が無くなりそうなら、一度中に戻って構わない。ただ離脱する際は一言言ってくれ」
「「「「「「了解!」」」」」」
「準備はいいな。Uzi、スタンバイしろ」
「言われなくてもやるわよ!」
「私も準備完了ですわ!」
飛行場防衛作戦が次々に組み上げられる。ここを突破されたら、鉄血の脅威に怯える日々になる。彼らの第二の闘いが今始まる。
「よし……始めるぞ!」
64式自によって扉は開けられ、2人が戦場に駆け出した。
STAGE2のプロローグのはずなのに4800文字超えるってなんぞや
冷えピタは大体首の頸動脈、脇の腋下動脈、股関節辺りの鼠径動脈に貼ると効果的らしいです。
脇の下はともかく股関節なんて外で貼ろうものなら社会的に死にますねハイ
それはさておき、次回は拠点防衛戦です